TBSアナウンサー田村真子「刺激が好きな性格じゃない…」初めての仕事におびえ続ける毎日【明日の朝はどんな朝?】

TBS『ラヴィット!』でおなじみの田村真子アナウンサーが日々の悩みや心の動きを徒然なるままに語るエッセイ連載。大好評だった「『ラヴィット!』日誌」からおよそ2年、田村アナが『Quick Japan』に帰ってきました。入社7年目、中堅会社員として大奮闘する田村アナの日常をお届けします!
今回のテーマは、田村さんが毎日の仕事の中で感じている「苦手なこと」。アナウンサーならではの原稿読みの技術の悩みから、ドキドキハラハラの時間管理まで……。そんな経験を積んで、この春に入社8年目を迎えた田村さんが気づいたこととは?
本連載はQJ&QJWebで毎月連載中! 次回は『Quick Japan』vol.178(6月中旬発売)に掲載します。

仕事をしていく上で、みなさんは自分は「これが苦手」と感じるものはありますでしょうか。
プレゼンが苦手、資料作成が苦手、最近ですと電話応答が苦手という人が多いという記事を何年か前にネットで見ました。社会人として働き始めると誰しも何かしらの壁にぶち当たります。すべてが最初から得意なわけではないし、働き続けてきて「そういえば私これが苦手だ」と今さらながら気づいたり。
私にも苦手なことがいくつかあります。
新人時代は、明るい声を出すことが本当に苦手でした。地声が落ち着いていることもあるし、声を張るとなおさら声が太くなるのです。でも若いころというのはなにかと明るくフレッシュな声が求められます。ラジオCMを読む際にも原稿内容に合わせて元気な声が求められます。本当にこれに対応するのが大変だったのですが、場数を踏んで繰り返し、『ラヴィット!』で毎日笑っていることも功を奏したのかだいぶ苦手意識がなくなりました。
あとは早口になってしまうこと。おそらく普段の話し方もゆっくりよりは早いタイプの人間なのですが、生放送となるとなおさら、自分の言葉で話すのは恥ずかしくて、自分の話に尺を取るのも申し訳なくて、早く通り過ぎようとしてしまうのです。
だからラジオもどちらかというと苦手です(笑)。もちろん仕事で話すときはゆっくり落ち着いてを心がけるようにはしていますが。

カタカナ、横書き、カンペ…意外な落とし穴
あと、毎日生放送を担当するようになって気づいたことは、カタカナを読むことが苦手なのです。
離れたところにある、カタカナが羅列されているカンペが本当に苦手で、いっそのこと英語のままのほうが読みやすいのではないかと思うくらい。ニュースを読むときももちろん、外国の長い地名や人の名前など数々の難関は乗り越えてきたのですが……。手元にある紙に比べると、カンペはどこまで文字を読んだのかがわかりにくいというか、よりいっそう難しく感じるのです。
あともうひとつ、これはアナウンサーあるあるかもしれませんが、横書きの文章が読みにくい。
イベントの司会などで、手カンペを読みながらお客さんに向かってしゃべるときは特に!
手カンペは字のサイズも小さいので、目線を上げたあとに文章をどこまで読んだのかわからなくなってしまいます……。そのリスクがありながらも、やはりお客さんのほうを見て話さなければならないのでもうハラハラ。
というのも、私たちは基本的に研修中はニュース原稿を読む練習をしています。そして画面デビューしてからも基本的には原稿を読む仕事が多く、私もずーっと原稿を読んできました。これらの原稿はすべて“縦書き”なのです。対して、バラエティやイベントの台本は横書き。
訓練のように研修を受けて縦読みが染みついたからなのか、やはり縦書きが恋しい……。
以前、どこかの番組で「関西はバラエティのカンペも縦書き」だと見たことがあったような気が? ぜひとも関西の収録にも参加してみたい。

努力ではどうにもならないこともある!
このようにアナウンサー歴7年になる私も未だに苦手なことがたくさんあります。
もちろん経験を積んで、最初のころのガチガチな仕事ぶりからはだいぶ成長したと思いますが、それでもなお、毎朝難しいなと感じながら仕事をしています。
バラエティの振る舞いだってけっして得意ではなくて、アナウンサーは演者の顔をした制作サイドの人間でもあるので、番組側が求める役割、アクトをしなければいけないこともたびたびあります。
番組が盛り上がるように、おもしろくなるようにと考えを巡らせながらカメラの前に立っていますが「あ、あれ間違えたな」と落ち込むことだってある。
経験を積んだり、練習をしたからとってうまくいかないこともやはりあるんですよね。もちろん不得意を普通にすることはできますが、不得意を得意にすることは正直難しいのかも。
私もまだまだ若造なので、これは人生の先輩方に伺いたいところです。
声の出し方など技術的な部分は練習や実際にやっているうちにコツをつかんだりして克服できるものなのですが、技術以外のことってなんかもう「やるしかないからとりあえずがんばってみる」でいいのではないかと思います。もちろん努力することもすごく大事! でも7年ほど社会人をやっていると「努力ではどうにも乗り越えられないな」という場面にも遭遇します。
思えば私なんて、初めての番組やイベントなどの仕事を受けるたびに1週間くらい前から不安で落ち着かなくなります。「初めて」が苦手なんですね(笑)。苦手なこと、多いなぁ私。
イベントの時間管理はいつもヒヤヒヤ

最近の具体的な仕事の話をしてみると、『ラヴィット!』も参加した『TBS AKASAKA COLLECTION』というイベント。お客さんを入れてのイベントで、さまざまな番組や舞台からのゲストのみなさんが入れ替わり立ち替わり登場しトークをするのですが……。途中の決まった時間に『王様のブランチ』の生中継が入るため「◯時◯分35秒〜45秒でVTRを振ってください!」というかなりヒヤヒヤするタイムスケジュール。
普段の生放送番組とは違いCMなどの立て直す時間もないまま、尺調整をしながらみなさんとのトークを回さなければならないという仕事でした。その話を聞いたときから「うまくできるのだろうか」という不安しかなく、「準備はするにしても、時間管理はもうそのときの集中力でしかない!」と覚悟を決めるしかない前日。
結局、本番は必死に頭を使いその時間管理には成功! その後、イベントの1部(『ラヴィット!』企画は2部)を見ていた『ラヴィット!』スタッフから「必死なのが伝わってきたよ」と言われるほど必死さが滲み出ていたらしく……。「もう少し余裕に見せられる振る舞いができたらなぁ」「会場ももっと盛り上げられる方法があったのでは?」と内省しました。
でもあのときの私には、あれが精いっぱいだったよなーと思ったりもして(笑)。次にまたこの経験を活かせばいいや、という結論に至りました。2部でも、イベント開始10秒前にいるはずだったワクティ(弊社コーポレートキャラ)がいつの間にか帰宅しているなどのハプニングもあり、やはりハラハラな展開。「何が起こるかわからないからこそこの仕事は楽しい!」みたいな刺激的な性格でない私は、これからも初めての仕事におびえ続けるのでしょう……(笑)。
できる限りの準備や努力はとても大切ですが、実際に仕事をしていると、失敗してみて「あそこはこうすべきだったなー」「もっとこうできたなー」とあとになってわかること本当に多くあります。
もちろん最初からうまくできるのがベストだし、そういった優秀な人もいますよね。
でも世の中、優秀な人、大谷翔平選手みたいな人ばかりではないので、苦手意識を持って「できない」ことに憂鬱になるよりは「がんばってみる」。そして上手にできなければ、トライ&エラーの気持ちでそこから学べばいいのだ、とこの年次になると思います。
自分に厳しすぎると自分を追い詰めちゃいますし、ほかの人に対しても厳しくなってしまう気がします。「人にはそれぞれ得手不得手があるよな」と気づいてそんな自分を受け入れてこそ、社会人としてうまくやっていけるようになるのではないか。そう思い始めた今日このごろです。

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