『M-1』決勝進出で払拭された、甲子園に行けなかったコンプレックス<エバース佐々木「ここで1球チェンジアップ」>

エバース佐々木

正統派スタイルながら、独特な切り口を持った漫才で注目を集めるエバース。そのネタ作りを担当する佐々木隆史は、野球一筋の学生時代を過ごしてきた。現在は漫才一本で強豪たちと戦う佐々木が、あのころの自分と重ねながら日々を綴る連載「ここで1球チェンジアップ」

12月4日に行われた『M-1グランプリ2024』準決勝を突破し、芸歴8年目で初の決勝進出を決めたエバース。いよいよ決勝まで数日に迫った今の心境と、変わらない相方・町田和樹の様子を綴る。

人生が報われた日

どうもエバース佐々木です。

本当はコラムの原稿が月末締め切りなんですが、「『M-1』の準決勝が終わったら速攻で書くので待ってください」と頼み込んで今、筆を取らせていただいています。

そのかいもあってかはわかりませんが『M-1グランプリ2024』の決勝に進出することができました。

『ツギクル芸人グランプリ』、『ABCお笑いグランプリ』、『NHK新人お笑い大賞』、『マイナビ Laughter Night』、そして『M-1グランプリ』。1年で5個目の賞レース決勝です。

自分で言うことじゃないですが、めっちゃすごいです。ほかであんまり見たことないことしてます。

だからといって余裕しゃくしゃくの『M-1』決勝かといったら全然そんなこともなく、1年間戦い続けてボロボロの船で浸水しながらも、沈没する前になんとかギリギリ向こう岸までたどり着けた。そんな感じですね。

決勝進出者発表で名前を呼ばれたときはうれしさより、「自分は『M-1』決勝に行ける人生だったんだ」っていう安堵のほうが大きかったです。

小中高と野球部で、地元では一番野球がうまかった僕は、もちろん甲子園とか行って地元のヒーローになるんだろうと思いながら野球を続けていました。高校3年の最後の夏にあっけなく負けたとき、「自分は甲子園に行けない人生の人間だったんだ。全然主人公じゃなかったんだな」って帰りのバスに揺られながらそう思ったことを今でも鮮明に憶えています。

でも、今回『M-1』で決勝に行けたことで、高校時代からずっと心の奥にあったコンプレックスのようなものが少しだけ払拭されたような気がします。

事前インタビューでは、「絶対優勝します!」とか言ってますが、実際優勝できるかどうかとかは二の次で、とにかくこの9年間で一番いい漫才をしたいです。

今年の決勝の9組はめちゃくちゃレベル高いと思います。芸人からの評価も高いし、ずっとライブシーンでおもしろいって言われてきた人たちばかりなので、このメンバーと本気で戦える舞台が用意されているっていうことが、ただただありがてぇなって感じです。

決勝でやりたいネタは何本かあって、正直、まだどれにするか決めかねてます。ただどのネタをやってもそれなりに戦える自信もあります。

相方の町田に「ネタ何やる?」って聞いたら「いや知らねぇよ」って言われました。

インタビューで「圧倒的な『M-1』チャンピオンになる」とかほざいてたわりに、なんのネタをやるか決めるのは僕に全任せで、一切自分は責任を負おうしない。いつもどおりの卑怯者で安心しました。

高校を留年して、1個下と授業を受けるのが恥ずかしくて逃げ出した根性なしには、ネタを決める覚悟もないだろうから僕が決めます! どうなろうが文句言わないでください!

ということでみなさん『M-1』決勝応援よろしくお願いします。

また来月お会いしましょう。さようなら。

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佐々木隆史(エバース)

(ささき・たかふみ)1992年11月6日生まれ、宮城県出身。お笑いコンビ・エバースのボケ担当。レギュラー番組『エバースのモンキー125cc』(stand.fm)、『エバースの野茂ラヂ雄』(Artistspoken)。

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