TBS『ラヴィット!』でおなじみの田村真子アナウンサーが日々の悩みや心の動きを徒然なるままに語るエッセイ連載、スタートです! 大好評だった「『ラヴィット!』日誌」からおよそ2年、田村アナが『Quick Japan』に帰ってきました。入社7年目、中堅会社員として大奮闘する田村アナの日常をお届けします!
今回は田村アナの初めてのイタリア旅行の様子を綴ってくれました。出発前から「スーツケースごと強奪されたらどうしよう」と不安でいっぱいの田村アナ、果たして無事にイタリアを満喫できたのでしょうか?
本連載はQJ&QJWebで毎月連載中!次回はQJWebで2月中旬に配信します。
言葉がわからないのも心地いい
昨年の10月に夏休みをいただき、人生初めてのヨーロッパ、イタリアに行ってきました。
なぜイタリアにしたのか。実はずっとバチカン市国に行ってみたかったのと、友人夫妻が今イタリアに住んでいるので「行くならば今しかない!」となり、夏ぐらいに航空券を取ったのです。
ヨーロッパに行くのも初めてですが、今回は人生初のトランジットということで、夏休みまでの2ヶ月くらいは「ちゃんと乗り継げるだろうか」「ロストバゲージしたらどうしよう」と気が気ではありませんでした。コロナ禍が明けて昨年の長期休みも海外に行ったのですが、社会人になってからは行ったことのある慣れた場所ばかりだったので今回のお休みはドッキドキ。イタリアにさえ着けば友人夫妻がいてくれるし安心なのですが「歩いててスリに合うかも」「スーツケースごと強奪されたらどうしよう」と不安の広がる夏を過ごしました(笑)。
知らない土地に行くとなると緊張するのは当たり前。私も英語がペラペラなわけでもないですし、不安な点は毎回いろいろあります。
しかし一昨年の年末休みに、数年ぶりの海外でシンガポールに行ったのですが、そのとき言葉が通じないことに不便さだけでなく、少しの心地良さを感じたのです。
シンガポールの公用語は英語ですが、いろんな母語を持つ人たちが集まった国なので「シングリッシュ」とも呼ばれる独特の英語が飛び交います。発音もクセがあり、義務教育のアメリカ式英語でしか学んでこなかった私の耳では聞き取れない単語も多々あったり。でも普段は使わない言語が飛び交う空間にいるのって楽しい!と、このとき初めて思ったのです。社会人一年目の時はそんなこと思わなかったのになぁ。きっと社会人としていろいろな経験を積んだことで、自分がパワーアップしたからそう感じるようになったのでしょう。
案の定、今回のイタリア旅行でも行きのカタール航空のCAさんの英語が聞き取れず……。でもまぁ、なんとかなりました(笑)。イタリアでもレストランの店員さんが英語をしゃべってくれたのですが「え、それイタリア語?? あれ、英語か」みたいな感じで……。もっと流暢な英語脳になれば誰の英語でも聞き取れるようになるのかぁ、と勉強の必要性を感じておりました。
紀元前の建築物に思いを馳せる
でも初めてのヨーロッパは目に入るものすべてが新鮮で感動! アジアはもちろんアメリカともまた違う街の景色! 古いおしゃれな建物が多くてすべてがいちいち映える、最高の現実逃避空間です。
そして初めて、こんなに時差ボケに苦しみました。今までの国では「眠いなー」ぐらいだったのですが、イタリアはサマータイムもあってマイナス7時間ということで、ディナーの時間がちょうど日本の真夜中。胃が寝ていたようで、三日間ぐらい友人が予約してくれた絶品夜ごはんをベストコンディションで楽しめなかったのは残念でした。
でもその時差を感じながら、「こんなに日本とまったく環境の違う遠い街で生活している人がいるんだなぁ世界は広いなー」としみじみと“THE・初めて“な感想を持ちました。
だって何百年も前の建物が現役で使われていたり、ヴェネチアはまさに画家カナレットが描いた300年前と変わらぬ景色。さらにローマに行けば街のいたる所に紀元前の建造物があったりするんですから。途中からは古いものが残りすぎていて(まぁ石造りだし地震がないからなんですが)、立派な遺跡がゴロゴロありすぎて「これほんとにそんな古いの? 実はそんなことないんじゃない?」という無駄な疑念を持ち始めるほどです。
私はもともと古い物にロマンを感じるタイプなので世界最古の木造建築とされる法隆寺を見てその悠久の時の流れに感動するわけですが、紀元前のレベルになると一周回ってよくわからなくなるみたい。おもしろいですね。20代終盤ともなると、日常生活でここまで新鮮な経験をすることってなくなってきますからね…
行ったことのない国や地域に行ってみるってすごく幸せなことだなと思いました。インドのように人生観が変わるとまではいきませんが「世界はこんなに広くて、いろんな人たちや文化があるんだ」とたった一週間の旅でも実感できるんだから。でも大学時代の旅行ではこんなこと感じなったのになぁ。やっぱり私が大人になったからでしょうか(笑)。
なにもしない時間も最高の休息
そういえば飛行機での過ごし方も変わりました。大学生の頃は10時間を超えるフライトなんて、寝ても寝ても着かないんだけど!と友達と一緒でも絶望。暇すぎてやることがなくなるんですよね。基本的にはネットも見られないし、映画を何本も観続けられるタイプじゃない私にとってはなにもできない時間。
でも今回はこの「なにもできない時間」が最高の休息、いつまででもぼーっとできる時間なんです。もちろんこの連載原稿を書いたり、タブレットで本を読んだり、過ごし方も大人になりましたね。
今年の夏にkindleの読書用の端末を買ったのですが、これが便利で便利で、薄くて持ち運びやすく普通のタブレットのようにブルーライトが出ないので目にも優しく疲れない。なかなか普段は隙間時間でしか読書に集中することができなかったので、うれしかったです。本に飽きたら次は提出期限の迫る原稿をiPadとキーボードを使って仕上げるのみ。時差に体を慣らすため寝なくてはいけないのが大変でしたが、飽き飽きすることなく過ごせました。
ネットも繋がなければ地上とはもう別の時が流れている空間、長い長い移動時間をこんなポジティブに捉えられるとは。日頃の生放送のテンポに追われているからでしょうか(笑)
早朝勤務の空港スタッフさんに共感……
私はのんびりとフライト時間を過ごしているわけですが、国際線に乗るたびいつも思うのが、CAさんたちの働きぶりのすごさです。機内って寒いし乾燥するし、気圧も違って浮腫むし、環境としてはかなりハード。そんななかで動き回ってサービスをするって、とても体力のいる仕事だと思います。
長時間で時差ボケもあるのに常に美しい笑顔。私なんかは機内ではすっぴんで保湿しまくって過ごしますが、CAさんは仕事中ですからフルメイクだし、その働きぶりを見て私も「仕事をがんばろう」と勇気をもらえるほど、皆さんタフ!
これは地上で働くグランドスタッフの方たちも同じで、海外旅行って深夜便とか早朝便を使うことが多いじゃないですか。朝5時とかでもチェックインカウンターで我々を迎えてくれてチャキチャキと仕事をこなすスタッフさんを見ていると「ありがとう、あなたのおかげで旅行を楽しめます」って思うわけです。何年か前に今より早い朝番組をやっていたこともあり早朝勤務のしんどさがわかる分、心の底からそう思います。
休みを取る時は日常から離れるに限りますね。普段は見られないもの、接することのない人たちからパワーをもらって「また来週から私もがんばろう!」と元気になれる。
でもヨーロッパに行ってみて思ったのは「1カ月あったらなぁ」ということです(笑)。
まず遠いので航空券が高い、一回飛行機で行くならすぐに帰ってきてしまうのはもったいないんですよね。ならばあっちは電車で簡単に国境を越えられますし、また日本から来るよりも何カ国か一気に見たほうがお得だよなぁと。ヨーロッパは2カ月とか周遊する方もいますしね。
私もまた他の国も周ってみたいと思っているのですが、やはりヨーロッパは道が石畳だったり美術館なども古い石造りなので、階段の一段の高さが我々日本人にとっては高すぎて結構足腰が大変で……。私の体力がないせいですが「こんなとこで息切れするつもりじゃなかったのに!?」みたいなことが多かったです。「旅なんて時間ができた老後でいいや」と思っていた考えが変わりました(笑)。少しでも体力があるうちにまた旅をしたいです!
とはいえこの仕事をしていると長期で休みは取りづらく、たとえ番組担当が変わるタイミングであっても1カ月以上のお休みは取れないだろうなーと(笑)
だから足腰が元気なうちに長期の旅にでることも夢ですが、そのいつかのためにずっと元気で若くいることを目標に生きていこうと思います!
追伸。今回の旅ではイタリアの保安検査場で乗り継ぎ便のチケットを落としました。聞きに戻ったら検査場のお兄さんが拾ってくれていたので無事帰れました。