“病気の総合デパート”だった愛猫との13年間と、ペットシッターの資格を取得するまで/長嶋トモヒコ(ダーリンハニー)【この子と暮らして〜Life With Animal〜】

2024.10.7

動物に愛情を傾ける著名人が、「動物と人間の共生」をテーマに、“この子”との出会いや生活を通じて新たに感じたことや考えたことを紹介する「この子と暮らして〜Life With Animal〜」。本連載は、『Quick Japan』編集部が保護猫・保護犬などの動物愛護について一人ひとりが考えていくことの重要性を発信するメディア『HARBOR MAGAZINE』との連動企画となっている。

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今回は、お笑いコンビ・ダーリンハニーの長嶋トモヒコが登場。コロナ禍の期間にペットシッター士の資格を取得し、現在はペットグッズの販売を行っている長嶋が、そのきっかけとなったスコティッシュフォールドの「ロココ」との暮らしを紹介する。

猫こそがすべて

過去も今も猫と同居しています。気づけば実家にも猫がいつの間にかいて、実家を出てもやっぱり猫がいる。別にどこからともなくフラっとやってきて奇妙な同居生活が始まるようなレディースコミックみたいな流れではなくて、わざわざこちらから猫を探して家に迎え入れて一緒に住んでもらっているわけです。

一緒に住んでもらっている。まさにこの表現が正しいと思う。人間なんてただの奴隷だ。猫こそが絶対神であり、猫こそがすべて。ご飯を食べてもらい、ねこじゃらしで遊んでもらっている。昼寝を眺めさせていただき、取り込んだ洗濯物を新しい寝床として献上奉り候。もはや尊きすぎて言葉の使い方すらわからなくなるほどです。

僕にとってそんな存在の猫ですが、歴代でも最も印象に残っている猫がいます。それは一昨年に虹の橋を渡った、スコティッシュフォールドの「ロココ」です。

この子ほど気位が高く、スノッブで病気の総合デパートで愛くるしい猫は出会ったことがありません。人間だったら親の顔が見たいくらいの跳ねっ返りのお転婆ムスメでした。

ロココを迎える前のある日、晩酌をしながら某国営放送の放送後にエンドレスで流れている「世界のかわいい動物たち」なるシュールなサイケデリック映像を観ているときに目に止まったスコティッシュフォールドという猫種に心奪われました(以下、スコとします)。当時はまだその猫種は市民権を得ていなく、日本での飼育数も少なかったと思います。

すぐさま検索をしてみたら、スコを扱っているブリーダーが急遽店じまいをすることになり、今いる猫を里親に出したいというのを目にしました。数日のうちに家族からの承諾を得て、ブリーダーに我が家で迎え入れるお願いをしました。その日のうちに話はまとまり、こちらとしても急遽猫が来ることになりました。

いきなり訪れた“3日の山場”

来たる当日に向けて、猫の生活用具を取りそろえながら、未だよく知らなかったスコについて同時に調べてみました。すると、先天的に骨の形成不全が見られることが稀にあり、その猫種の負の特徴でもあるらしい。さて、どうなることか、いやまさか、大丈夫でしょう!

ウチのコになってからの最初の数カ月は、ただただかわいいだけの猫に見える丸い毛玉でしたが、ちょうど一歳になるころに異変が現れ始めました。左うしろろ足を少し引きずり、前足の手首も少しふくらんできて、明らかに痛そうでした。そうです、スコの個体差とタイミングはそれぞれですが、例の先天性の疾患が出てきた証拠でした。

病院に連れて行こうとしていた矢先、それだけではありませんでした。ある夜、突然昏睡状態になり、まったく歩けなくなり、全身が超脱力状態のぷらんぷらんになってしまいました。「あれ? 死んでないよね?」とパニックを通り越して逆に静かな海の凪のような心持ちのまま冷静に病院へ。

いつもの猫病院では原因がハッキリとしないことから「動物高度医療センター」への案内状を書いてもらいそちらで診てもらうことに。そして動物医療の最後の砦というべき同医院での結論は、ほぼ原因不明ではあるもののウイルスの感染が疑わしいこと、ここ3日が山場だということ、抗生物質を投与しますがこれに賭けるしかないという地獄の宣告でした。

さっきまでは冷静に凪の心境でしたが、さすがに絶望感に包まれて涙しました。ブリーダー都合で急ぎ里親に出されて、なんかよくわからない動物狂いの芸人に引き取られ、幼年期から青年期に差しかかるタイミングであちこちが発症して身体がとてもつらくて痛い。急に意識がなくなって何もできない。かわいく生きてるだけのこんなピュアな毛玉になんて酷な試練を与えるのか、こいつが何をしたよ?と悔しくてたまらなかったことを覚えています。

いつ虹の橋を渡っても仕方ないと覚悟を決めていた数日後に、ロココは寝床から転がり落ちて身体のほとんどを引きずりながら、水のボウルへと向かい、水をガブ飲みし出しました。目の色も何か生きる意志めいたものを感じ、大声で「がんばれ! ロココ!」と泣きながら応援しました。そこから数日のうちに少しずつ起き上がれるようになり、ご飯も少しづつ食べられるようになり、ヨタヨタするけど歩けるまでになりました。抗生物質が奇跡的にヒットした結果でした。

「生きること」を教えてくれたロココ

ここまで長々と書いてまだ「ロココ1歳」の話です。彼女の13年の生涯は予防と対策の連続でした。

骨の形成不全を遅らせるためにサプリメントと食事療養のケア、太らせると関節に負担がかかるからダイエットに気をつけ、猫に多い尿管結石ストルバイトの予防。といってもロココは一度大きな開腹手術で摘出しています。最後の最後には大きい悪性腫瘍が体内にできて亡くなりました。ほんとに病気の総合デパートでした。

その都度、一緒にがんばって乗り越えて、一歩進んでは一歩下がったり二歩下がったりして、泣き笑いで生きてきました。ロココ最後の日は寝たきりだったのになぜか元気で家の前の隅田川までカートで散歩したら毛並みの悪い顔でニコニコしてた。全部がスーパーかわいい猫でした。

苦労しながら思考して、生きること生かせることを学ばせてくれたロココ。そのときの経験からコロナ禍において「何か動物のためになることをしたい」という動機で、ペットシッター士の免許を取得するに至りました。

それに伴い、勉強として犬と人間の生活をよりよくするためのヘルシーな犬猫グッズの販売のお手伝いをさせてもらったりしています。

こんな感じです。やや愛情過多に動物に依存しまくっています。ロココはじめ、いま一緒に住んでもらっている2匹の猫、ロージーとアルとこの先もドタバタに精いっぱいサヴァイブしてやろうと思っています。

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長嶋トモヒコ(ダーリンハニー)

(ナガシマ・トモヒコ)1977年生まれ、神奈川県出身。太田プロダクション所属。相方の吉川正洋とコントデュオ・ダーリンハニーを結成。イギリス文化・音楽に造詣が深い。また、趣味の革ジャン集めや純喫茶巡りなどで『アメトーーク!』にも出演。そのほかにも歴史、美術館巡り、歌舞伎観覧、モーターサイクルと多岐にわ..

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