四季凪アキラ「自分の「初帯」を捧げるのにふさわしい方だと思った」ホラー作家・梨との初対談で帯文執筆の思いを語る
1月26日に単著第3作目となる『自由慄』(太田出版)を刊行したホラー作家・梨。本作は多くの好評をいただき、重版が決定している。そんな梨作品を愛読していると度々公言されていたことをきっかけに今作で帯文を寄せることになったのが、にじさんじVTuberの四季凪アキラだ。
2月20日に発売された『GIRLS CONTINUE』Vol.12では、そんなふたりがお互いを知ったきっかけからホラーの魅力まで、思う存分語り合った。ホラー作家とVTuber。一見、接点のなさそうなふたりの意外な共通点とは……?
『自由慄』の重版決定を記念して、ここではその一部を特別に公開する。
四季凪アキラ(しきなぎあきら)
12月12日生まれ。代々続く諜報員一家に生まれた腕利きの元・諜報員。今は組織を抜けて蜂の巣の駆除から刺客の排除など、悩める人々の依頼をなんでも請け負う事務所「Room 4S」を経営する「請負人」で、「にじさんじ」所属兼、「VOLTACTION」のメンバー。2023年末に登録者数30万人を達成。現在は配信を中心に、動画投稿、歌ってみたなどにも注力している。実は最近、コストコの会員になった。
梨(なし)
主にインターネットを中心に活動するホラー作家。日常に潜む怪異などを取り入れた作風を特徴とする。「SCP財団」所属、Webメディア『オモコロ』にもホラー短編を投稿。主な作品に、『かわいそ笑』(イースト・プレス=刊)、『6』(玄光社=刊)、原案『コワい話は≠くだけで。』(KADOKAWA=刊)など。
目次
面識はない、でも出会っていたふたりの邂逅
──おふたりはこれまで、面識はあったんでしょうか。
四季凪アキラ(以下、四季凪) 初めましてですね。
梨 そうですね。
──梨さんが演出を手がけられた超学生さんのライブ『2ndワンマンライブ「入学式」』【※1】などでお会いになったことがあったのかなと思っていました。
梨 私には、ライブに「関係者席」っていう席があるという概念がなくて(笑)。普通にチケットを取って行ったんですよ。だから四季凪さんがどこにいらしたかもわからなくて。一般席の後ろのほうでずっとペンラを振っていました(笑)。
四季凪 なるほど、そうだったんですね。自分は縁があって関係者席にいたんですけれど。すれ違ったということで。
梨 同じ空気は吸っていたくらいで(笑)。あと四季凪さんの祝い花を見て「すげえ~!」って思っていました。
四季凪 梨さんの演出すごかったです。本当に。
梨 ありがとうございます。「音楽ライブの演出をやってください」っていうお仕事が超学生さんからくるとは! っていう。ありがたかったですけれど、「なぜ私にきたのかよくわからなかった仕事」、2023年ダントツの1位です(笑)。
四季凪 あはははは! そうなんですか。でも、ありがたいことに活動者のなかでも超学生さんと結構親しい位置にいる人間としては、もうすごく合っていたなと思いますけどね。「入学式」っていうタイトルでしたが、全体的にホラーテイストで。演出が「うわあ、すげえ凝ってる!」って思ったんですよ。あとで演出が梨さんだったって聞いて、そこで一気に「納得!」みたいな(笑)。めちゃめちゃ良かったです。
もうライブからしばらく経っているので話して大丈夫だと思いますが、入場時に手の甲に押された再入場用のハンコが、「洗脳するためのハンコ注射」っていう伏線になっていて。「わあ、テクい!」と思いましたし、すごく面白かったです。
梨 「手の甲にスタンプを押しましょう」というのは超学生さんの案なんです。なので私は悪くないっていうことで(笑)。
四季凪 そうだったんですね。でもめちゃめちゃ良かったです、本当に!
ホラー作家とVTuber、お互いを知ったきっかけ
──面識はなかったということですけど、四季凪さんは配信でも梨さんの作品が好きだとお話しされていましたよね。梨さんからも四季凪さんの「歌ってみた動画」とかを観ているっていうお話をちょくちょくお聞きしていて。ぜひ、お互いを知るきっかけとなった作品やエピソードなどを教えていただけますか?
四季凪 おっしゃっていただいた通り、本当に配信とかでちょくちょく話させていただいています。自分はホラーゲームは苦手なんですが、ホラー映画やホラー小説っていうのかな、小説って言うと堅苦しいんですけれど……いわゆる「洒落怖」(註:「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」オカルト板のスレッド「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」)の略称)みたいなものが元々好きだったんです。
その文脈で、「SCP財団」っていうSF系の創作サイトがあるんですけれど、そこで梨さんが当時まだ今ほど有名じゃなかった頃、「和テイストな民間ホラー」と言いますか、ちょっとこれまでになかったホラー作品をぶっこんできて。SCP界がすごく湧いたことがあったんですよ。多分、私が梨さんを一番最初に知ったのはそこで。すごく面白い作品を書く人がいるんだなと思っていたのですが、梨さんをちゃんと「梨さん」として認識するようになったのは、多分『瘤談』かな。
梨 本当に古参ですね! すごいなぁ。
──梨さんはいかがですか?
梨 私はあんまり古参アピはできなくて恐縮なんですけれど……。
四季凪 全然!
梨 私は元々VTuberさん、にじさんじさんもそうですし、いろいろ拝見するのが個人的に好きだったんです。あとは自分がホラー系の界隈にいるということもあって、ホラーゲームをやったあとに実況を巡回するっていうのを結構やっていたりしました。それで1年ちょいくらい前ですかね、チラズアートさんのホラーゲーム『地獄銭湯』【※2】の実況があったじゃないですか。
四季凪 はいはい、ありましたね。懐かしい。
梨 「銭湯」の実況をいろいろ巡回しているときに、まだ四季凪さんを四季凪さんとは認識していなかったんですけれど、「身体からとんでもない音を出している人がいるな」と拝見して(笑)。(註:四季凪アキラのホラーゲーム実況で聞ける個性的な絶叫のこと)
四季凪 あははははは!
梨 というところから、概要欄にあるプロフィールを拝見して、「歌みた(註:「歌ってみた動画」の略)やってるんだ」【※3】みたいにいろいろと観ていった結果、今に至るという。そういった感じなので、導入はホラーなんですよね。趣向としては共鳴するところもあって。私もたまにBL(ボーイズラブ)の話をしたりしますし、ボカロ曲の歌みたの選曲から、世代の近さを感じたりとか。そういうところで、「好きなやつがいっぱいある」みたいな感じでのめり込んでいきました。
四季凪 ありがとうございます。意外と観ていただいていたんですね。
「初帯」を捧げて
──帯文もご執筆いただきまして、ありがとうございました!
四季凪 そうなんですよね、まずこの対談をやらせていただくきっかけというか大元として、『自由慄』【※4】の帯を書かせていただくっていう機会を恵んでいただいたわけなのですが。最初に帯のお話をいただいたときに、「私なんだ」っていうのがまず一番最初にあって(笑)。さっき話させていただいたように私個人としては本当に梨さんの作品を以前から拝見させていただいていたので、「ぜひにぜひに!」というかたちでやらせていただいたんですが。
梨 ありがとうございます。
四季凪 感想でいうと、まず、「すごいものを読んだな」と言いますか。「梨さん節全開だな」って。最近だと『その怪文書を読みましたか』(太田出版=刊)とか、テレビ東京さんの『このテープもってないですか?』とか、梨さんの作品はいろいろ拝見させていただいているんですけど、「自由律俳句とホラー」という組み合わせが正直、最初は想像がつかなかったんです。でもこれがやっぱり梨さんのうまいところで、個人的に梨さんの作品が好きな理由のひとつでもあるんですが……想像を掻き立てるのがすごくうまいなと思って。
ある程度、章立てこそされていますけれど、今回、基本的には自由律俳句じゃないですか。本当に超短文。単語短文がずらららって並んでいて。でもその1個1個の短い文章のなかに不気味さというか、「え?」っていう目を疑うような、「どうしてこうなるの」っていうものがあって。あとはネタバレにならない範囲で話すと、読んでいく上でだんだんと見えてくるバックボーンとかが、やっぱりめちゃくちゃ上手いなと思いましたね、本当に。
梨 私としては、ホラー文脈で私を知った方が、『自由慄』を読んでどう感じるんだろうって思うところがあったんです。四季凪さんはSCPとかを知ってらして、ホラー記事とかをたくさん読んでいらっしゃるっていうことがここまでのお話を聞いていてものすごくわかったんですけど、今、感想をうかがって、めっちゃ「良かった……」と思いました(笑)。
四季凪 率直に面白かったです。面白かったしちゃんと怖かったし、すごくすごく楽しんで読ませていただきました。帯を書く上でも、「これは中身に負けない帯を書かないとな」っていう気持ちもありましたね。帯を書かせていただくっていう経験が初めてだったんですけど、「初めてでホラーか」とかも思いながら(笑)。「すごいところに来ちゃったな。でも梨さんだし、ぜひ書かせてもらおう」って。
梨 ありがたいです。
四季凪 本当に自分の「初帯」を捧げるのにふさわしい方だと思ったので。今回こうやって帯を書かせていただいて、うちのファンの子たちも梨さんの作品を読むと思うんですが、ちゃんと怖いから心配だなっていうのもちょっと思いました。「結構怖いけどな、これ」「大丈夫かな、みんなこれ耐えられるかな」って思いながら、書かせていただきました(笑)。
──そこは四季凪さんに「怖いけど読めよ」って指揮していただいて。
四季凪 読んでもらいましょう、そこは。うちの視聴者たちも結構ホラーゲームとかそういうものが好きな子もきっと多いですからね。でも本当に、面白かったです。
梨 ありがとうございます。
梨、四季凪アキラを書く
──さて、ここまでお話していただいて、お互いのことを結構知っていただけたかなというところで、次の話題に移りたいと思います。「四季凪アキラさん×梨さんのコラボでホラー作品を作ってみよう!」という企画で。
梨 いいですね。
四季凪 いいんですか? 本当に!?
──私の勝手なイメージではありますが、四季凪さんは心霊はあまり得意じゃないようなイメージがあって。人怖系はゲームとかをやられていても、立ち向かっていく姿を格好いいなと思って見ていたりするんですけれど。梨さんは人怖と心霊の間をいくような作品を追求されている作家さんでもあるので、そんなおふたりが一緒にホラーを創ったら、どんな面白いものが出来上がるんだろうと。お題としては、「VTuber」をテーマとして今おふたりに話し合っていただいて、それを元に後日梨さんにご執筆いただくという。
四季凪 だいぶ梨さんの負担が大きそうですけど、嬉しいですね。ご無理なさらないでください。
梨 全然、大丈夫ですよ。
──ここからは実際におふたりでどんな作品にしたいか、アイデア出しをしていただければなと思います。
梨 そうですね。まずひとつ共通認識を持ちたいなと思うので質問なんですけれど、四季凪さんって私が実況とかを観る限りでは、ホラーへの耐性はあるけれど、ジャンプスケア(註:ホラー映画などで用いられる、主に突然の大きな音などで観客を驚かせる手法)に弱いっていうイメージがあって。
四季凪 そうですね(笑)。自分が人怖系が得意な理由としていつも言っているのが、「究極、殴れば勝てる」っていう(笑)。自分がお化けとかそういうものが苦手な理由は、やっぱり未知のものへの恐怖だと思ってて。意味がわからない、わけがわからないから怖いっていうのが自分のなかでは強いのかなと思います。
梨 私もあまりジャンプスケアをやらないので、方向性としては「不気味」とか「不穏」とかで攻めたいですよね。
四季凪 本当にそれはぜひ(笑)。
※この続きは2024年2月20日(火)発売の『GIRLS CONTINUE』Vol.12にてお楽しみください。
梨作書き下ろしSS掲載!『GIRLS CONTINUE』Vol.12
2024年2月20日(火)発売の『GIRLS CONTINUE』Vol.12は、結成5周年のChroNoiRを大特集。本誌では、本記事で転載した四季凪アキラ×梨によるインタビューのフルバージョンと、梨による四季凪アキラコラボ書き下ろしSSを収録。第2特集は梅津瑞樹。
表紙は、イラストレーター・ウミ乃による描き下ろし。
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四季凪アキラYouTubeチャンネル
四季凪アキラYouTubeチャンネルでは、今回の対談で紹介した歌ってみた動画やゲーム配信、BL関係の企画のほか、動画ラジオ企画「オールナギトニッポン・V」や朝雑談、恋愛相談企画など幅広いジャンルの配信が行われている。
四季凪アキラ公式YouTubeチャンネルはこちら
四季凪アキラ公式X(旧Twitter)はこちら
重版決定!ホラー作家・梨最新作『自由慄』大好評発売中!
梨×株式会社闇『その怪文書を読みましたか』
梨『自由慄』(ともに太田出版=刊/発売中)
昨年12月に発売された『その怪文書を読みましたか』は、チケットが即入手困難となった伝説の展覧会を書籍化した考察型ビジュアルブック。3月には博多展の開催も決定、ますます見逃せない一冊となっている。
最新単著『自由慄』は、1000を超える短文の中から厳選された299の短文と掌編で構成。ホラー初心者も気軽に「怖がれる」上、考察要素も詰まった一作。
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