写真を撮ることにこだわりを持つアーティストや俳優・声優による連載「QJWebカメラ部」。
土曜日はアーティスト、モデルとして活動する森田美勇人が担当。2021年11月に自身の思想をカタチにするプロジェクト「FLATLAND」をスタート、さらに2022年3月には自らのフィルムカメラで撮り下ろした写真をヨウジヤマモト社のフィルターを通してグラフィックアートで表現したコレクション「Ground Y x Myuto Morita Collection」を発表するなどアートにも造詣が深い彼が日常の中で、ついシャッターを切りたくなるのはどんな瞬間なのか。
今年の失敗
第71回。
ようやく涼しくもどこか寂しい風が通る秋がやってきた。
夜には鈴虫が生配信をお届けしている。
突然の寒暖差に多少頭を痛めたが、猛暑の日々から抜け出せると思えばなんてことない。
今年は日焼け対策を念入りにした夏だった。
コンクリートジャングルの東京は四方八方から紫外線を差し込んでくるため、あらゆるパターンを想定しながらさまざまな箇所に日焼け止めを塗り込み、灼熱の都会へ挑戦。
が、今年も見事に敗北。
完全な黒星、または黒肌の結果となった。
敗因は夏の終わりを醸した秋風。
9月に入ってから朝方の空気が一気に冷え始め、ようやく心地よい陽だまりを感じて苦手な日焼け止めを徐々にフェードアウトしたある日。
突然の33度が襲った。
自転車を漕いで街に出た瞬間にすべてを悟ったが、時はすでに遅し。
なんで今日に限って猛暑なのか。
夏の終わりに差しかかるまで、なんとか白肌を保ってきたのに。
全方位からの紫外線が身体を焼き尽くしてるのを感じ、無意味に避けるように身体をくねらせる奇行ライダーと化したが、それも断念。
とっさに木陰に潜り込んだ。
今までコツコツと守ってきた肌が焼き払われてしまった絶望と後悔で少しの間そこから動けずぼーっと空を見上げていた。
こんなことになるなら夏初日からアクティブに生きて自然に焼ければよかったんだ。
なぜ俺はあんなムダな時間を。。。
一瞬『SLAM DUNK』の三井寿状態にさいなまれたが、見上げた空と枝のくねりが今日の自分を表してるようで泣く泣くシャッターを切った。
絶望の中に見えたきれいな一枚。
今年の失敗をここで昇華させていただきます。
NAOYA(ONE N’ ONLY)、中山莉子(私立恵比寿中学)、セントチヒロ・チッチ、東啓介、森田美勇人、南條愛乃が日替わりで担当し、それぞれが日常生活で見つけた「感情が動いた瞬間」を撮影する。
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