伊集院光が語る“鳥肌モノ”のエピソード。大江健三郎・峰竜太の痺れる話(久保みねヒャダ こじらせナイト)


テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。

『久保みねヒャダ こじらせナイト』(4月29日放送)

久々に無観客配信ライブとして行われた今回は、「久保みねヒャダ ぽかぽかナイト」と題して『ぽかぽか』のセットで収録。

細かいところまでこだわって作られたセットを見学したり、番組で大いに盛り上がった麻雀牌手積みチャレンジに挑戦したりしたあと、ゲストとして『ぽかぽか』月曜レギュラーでもある伊集院光を迎えた。

伊集院は、『いいとも』のときは自分が必要以上に力が入ってしまっていたが、『ぽかぽか』では「『いいとも』にこれぐらいで立ち向かいたかった」と、いい具合に力が抜けていて楽しいと話す。

そして話題は「生放送」をキーワードに、司会者としての峰竜太のスゴさに。滞りなく進んでいた生放送で、CMまであと15秒というところで、峰は伊集院に短い言葉では返せない質問をしてきたそう。

当然、話の途中でCMに行ってしまう。すると、あとから峰は伊集院に「ごめんねー、ああいう破綻しているところが何回かないと、観ている側が飽きちゃうから。生放送だと思わないから」と言ったそう。

能町も伊集院も言っていたが、「素人目には何がスゴいかわからない人がスゴい」ということがわかる、痺れる話。

さらにもうひとつ痺れる話。大江健三郎の死後、SNSでも話題になった、大江が伊集院のラジオ番組『日曜日の秘密基地』にゲスト出演したときのこと。伊集院も「痛烈に覚えている」という。

“武器”がほとんどないまま挑んだトークで、中盤に、親戚でもある伊丹十三が『マルタイの女』を撮ったとき、本人から「感想を聞かせてくれ」と言われた話題になる。

その話が出たときに「俺、チョイ役だけど出てる」と頭の中では思っているが口を挟まず聞いていた伊集院。話は、一番印象的だったシーンのことに。

それは明らかに自分が出ているシーン。だが、ゲストの話を先に取るわけにもいかないから黙って聴いていると、最後に「その役者が伊集院光というんです」と締め括られた。「この人のおしゃべりの組み立て方がスゴい」と言う伊集院。

「この話で不思議なのは、僕がどう対応するのかを、大江健三郎先生がどこまで思ってしゃべっていたのか」「『僕も出てましたよ』と口を挟まれる可能性もあった」「最後の最後まで黙っているのを見越した、話の組み立て方」だったと。

しかも、それが「僕が伊丹十三と交わした最後の会話になりました」というのだから、鳥肌モノ。そして、そのスゴさを的確に言語化している伊集院もスゴかった。

やはり伊集院はこの3人と相性が抜群。また定期的に呼んでほしい。

『アメトーーク!』(4月27日放送)

「チャンス大城芸人」。

集結したのは、同期で、彼を持ちギャグから「オッヒョッヒョ」と呼ぶ千原兄弟、フジモン、3年後輩のケンコバ、大川興業時代「ナンのことやねーん」で爆笑を取っていた時期を知るみなみかわ、地下ならぬ「マントル芸人」時代を知るモグライダー(ともしげはバイト仲間でもある)。

せいじは「チャンスのことを嫌いな芸人、存在しない」と言う。

まず『ザ・ノンフィクション』風のVTRで紹介。その中で『エンタの神様』に『炊飯器暴走族』のネタでオーディションを受けたら、プロデューサーから「君の目的はなんや」と言われたというエピソードが可笑しかった。

その後、「ビックリ人生録」と題して、その数奇な人生を振り返るのだが、「健康診断で内臓逆位症がわかった」というおなじみの鉄板話がいずれも濃密でお腹いっぱいになる。

「寝室に野良犬を放つ」「2メートルの大男」「同級生の家で幽霊」「埋められる」「この人に話しかけないでください」「新宿西口で……」「地下芸人」と全部気になるタイトルだけど、その逸話が長く、時間の関係で全部紹介できず。

実は芸達者で、『ハチの大群に襲われるウィーン少年合唱団』など数多くの一発芸も紹介。中でも『世にも奇妙な物語』のコーラスのものまねが、目のつけどころも含めて絶品だった。

彼がなぜ芸人たちから愛されるか。その秘密は、人柄はもとより、そのエピソードの強さも含め、芸人としての問答無用の強さなのだろうなというのがよくわかる特集だった。

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  • 【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)

    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2021年のテレビ鑑賞記録。

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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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