生まれ変わった『クレイジージャーニー』。「見つからない」という“リアル“をそのまま描く(てれびのスキマ)

てれびのスキマ

テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。

『クレイジージャーニー』

番組初登場の「土壌学者」藤井一至。ラピュタの名ゼリフ「土から離れては生きられないのよ」に感銘を受けて「土」に興味を持ったという藤井。土は「ファイナルフロンティア」と呼ばれ、地球最後の謎なのだという。「作れないのは命と土くらい」と言われており、土の研究が世界の食糧問題を解決するかもしれないのだと。まったく知らない話連発でおもしろいが、その話しっぷりに「クイズばっかり」「登場からやり直しますか?」とキツめのツッコミを入れる小池栄子もおもしろい。

藤井は、1978年に研究所の先輩(故人)が日本各地に埋めた土の材料となる岩石の粉末や火山灰などをナイロンストッキングに詰めた「ミネラルバッグ」を探しているそう。100年かかる研究がこれを見つければ飛躍的に短縮できる可能性がある。その長野県木曽郡の山奥での探索旅に番組は同行。だが、地図が大ざっぱな上、40年以上経ち、山の状況も変わっている。しかも移動だけで時間がかかるため探す時間は数時間のみになってしまい、探索は困難を極める。さらに目印らしき木が倒れてしまっており、どう見てもひとりの手作業では無理。結局見つからず、もうひとつの奄美大島での探索も失敗に終わる。

「リアルですね、見つかんないっていう」と言う設楽。「生まれ変わった『クレイジージャーニー』(笑)」と。

やっぱり『クレイジージャーニー』の魅力は「成功」だけではないと再確認する回だった。あくまでも誰もやらないようなことに情熱を注ぐ「クレイジー」なジャーニー自身に焦点を当てるのが魅力。時間がないのに土をキレイに見せることにこだわったり、ずっと判読できなかった文字をディレクターが「『峠』じゃないですか?」と言うと「峠じゃないですよ……峠だ!」と絵に書いたような二度見のようなリアクションをしたり、どこかとぼけた感じのキャラもいかにも“クレイジージャーニー”な魅力に満ちていた。

『くりぃむナンタラ』

前回、トム・ブラウンが「合体」させないように指令を受け殴り合いのケンカに発展してしまった問題企画「型を破りたい相方たち」の第2弾。たとえばミルクボーイ内海が「コーンフレーク」と言わなかったら相方の駒場がどのように対応するのかを検証するものだが、仕掛け人も難しいドッキリ。

南條が「いにしえ語を使わない」という挑戦をしたすゑひろがりずは、早々に三島が「何これ?」「えー?」「誰じゃ? 誰じゃ?」と役を降りてしまう。これには上田も「相方の様子がおかしいぞってそりゃなるでしょう。でもそれをどう受けて、じゃあ、いつもと違う漫才でお客さんを盛り上げようとする精神を我々は見たいのに『黒幕は誰や!』みたいな裏話を言っちゃう。ただただ引きました」と酷評。三島は「そういうことか。俺、変わっちまったなあ……」と天を仰ぐが、こうなってしまうのが普通だろう。三島の表情が目に見えて移り変わっていくのがおもしろかった。

逆に圧巻だったのは、おいでやすこが。こがけんが「歌を間違わない」というもの。普通に「世界で一つだけの花」を歌うと、小田は「ええやん! ホンマに盛り上がるやつ歌ってどうすんねん!」ととっさにツッコむ。それでカラオケが盛り上がらないのは「メンバー悪いわ!」と。「さくらんぼ」もそのまま歌うと観客からは拍手が。「『さくらんぼ』で盛り上がってない場所、見たことないわ!」「リサイタルと思っとんのか、コラ!」とけっして「こがけんが間違っている」などと役を降りることは言わず、ちゃんと漫才としてツッコみつづけているのがスゴい。あらゆるバラエティでムチャ振り的なツッコミを求められつづけた成果かもしれない。

「ハゲネタを戒める」というミッションを受けたトレンディエンジェルたかしは「ルッキズムはダメですよ」などと戒めようとするも、斎藤はそれをかいくぐるようにハゲボケを繰り出す。予定調和ではないそのやりとりに有田は「本物の漫才だ」と爆笑。しかし上田の採点は「企画趣旨と違う」と最低点。「斎藤さんは500点満点。たかしがなんにも戒めてない(笑)」。

久々に、本当に久々に、これぞ「くりぃむシリーズ」という芸人性を剥き出しにする観応えのある回だった。

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  • 【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)

    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2021年のテレビ鑑賞記録。

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