テレビに憧れた世代で組んでよかった
──今年4月からレギュラー番組が一気に増えましたが、各番組で意識的に変えてることはありますか?
リリー 相方は変えてると思いますね。求められたことやろうとか、工夫なり努力なりは絶対してると思うんですけど、僕はそんなにしてないです。もちろん、朝と深夜が違うぐらいはわかりますけど、細かいことは考えてないです。
──ちょうど1年前の取材では、おふたりから「テレビを憧れの場所にしてる」とお聞きしました。この1年間で状況も変わったかと思いますが、今もそのお気持ちは変わらず?
リリー 最近めっちゃ思うのは、僕たちってたぶんテレビに憧れた最後の世代じゃないですか。5年ぐらい芸歴離れて組んだら 「俺はテレビ出たい」「俺はネットのほうに力入れたい」とか、そこの意識がだいぶ違うと思うんですよ。だから、テレビに憧れた世代で組んでよかったなと思います。そうじゃなかったら、絶対足並みバラバラになると思うんすけど。時代ごとにメインストリームって変わるから、そこも対応しつつなんですけど、やっぱり一回テレビでもっともっと上に行きたいですね。
──「もっともっと」と言うと、まだまだ冠を増やしたい?
リリー そりゃあ増やしたいです。目標は、全局ゴールデンですよ。
──今すでにさまざまなテイストの番組にご出演されていますが、ほかにどんなことをやってみたいですか?
リリー 『ラヴィット!』(TBS)でいうと(麒麟)川島(明)さん、『ノブナカなんなん?』(テレビ朝日)でいうとノブさんみたいな、看板でやる番組ってまだそんな経験ないから、そこの経験を積みたいですね。今は何をしてもスーパー兄さんたちが助けてくれるんで。今だったら『見取り図じゃん』(テレビ朝日)でいい経験させてもらってます。
──新しい野望は生まれましたか?
リリー たとえば、今はオンラインサロンとかもあるじゃないですか。そういうのは新しいファンの方とかに喜んでもらえるのかな?って最近思いますね。やるって決まってるわけではないんですけど、そっち側の勉強もそろそろ始めたほうがいいなって思ってます。盛者必衰というか、諸行無常というか、変わっていくじゃないですか。そっちにもついていかんとやばいやろうなとは、うっすら思ってます。で、絶対モリシも思ってると思います。
──リリーさん個人の見解ではなく、おふたりの総意なんですね。
リリー そこはふたりでしゃべったりします。打ち合わせっていうわけじゃないですけど、ポロッと「こんな感じなのかな」とか。マネージャーとかとも定期的にメシ会したり。テレビで天下は取りたいけど、(人気者の定義が)ブロガーからYouTuberになったりするわけじゃないですか。で、あんまり詳しくないですけど、たぶんYouTuberからまた何かに変わるでしょ? だから、そこもちょっと頭に入れていかんといけないなと。
──ちなみに、「テレビで天下取りたい」というのは、大体どれぐらいの年代でと目標を決めているんですか?
リリー それは早いほうが……いや、一概には言えんか。でもやっぱ、ダウンタウンさんとかとんねるずさんとか、レジェンドたちは20代とかで取ってるわけじゃないですか。だから早いほうが憧れますけど、さっきの話に通ずるのは、たぶんそこだけにフルベットしてもダメな時代だから、それがムズいですよね。ほんまにモリシとよく言ってるのも、“天下”という概念が常に変わりつつあるから難しいなっていう。だから、バランスを見ながらね。
『M-1』を意識しなかった一年、のびのび劇場に立てた
──ネタ作りは両者とのことですが、どうやって作っているんですか?
リリー こういうのやりたいっていうときもあれば、時間が迫って作らないといけないとかもありますし、その時々で毎回違うかもしれないですね。
──『カスカップル』もそうですし、盛山さんのキャラが立ったネタも多いですよね。
リリー 『カスカップル』は、劇場で何十秒とかのショートネタコーナーで生まれたんですよ。最初は、汚ねえ女……いや、失礼だな。汚めの女性のキャラを僕がやるって言ったら、モリシが逆のほうがやりやすいってなって、それであのかたちになりました。
──最初は逆だったんですね? 今、ネタ作りの時間は取れていますか?
リリー なかなか取れないんで、ほかを減らしてでも、ちょっとだけそれ用のシフトにしてもらおうかなって感じですね。いろんな考え方ありますけど、やっぱ僕らはネタを作ってる人のほうがカッコいいと思ってるんで。
──今、リリーさんの中で比率はどれぐらいですか?
リリー それは僕らの決めることではないというか。たとえば、テレビを90%やりたいって言ってても、その仕事が来なくなったら終わりじゃないですか。だから、状況状況で常にちょっとずつ変わっていってる感じかもしれないですね。将来のためにテレビ頑張ったほうがいいと思ったら頑張りますし。相方も、そのときによって変わってると思います。
──『M-1グランプリ』について伺わせてください。以前「将来のために『M-1』優勝というレッテルが欲しい」と盛山さんが仰っていましたが、出場について明言するご予定はまだないですか?
リリー そうですね……。というか、ほんまにまだ決まってないんです。「出ない」って言って「出るんかい」も嫌だし、「出る」って言って「逃げた」って言われるのも嫌ですし、あとあと「嘘つき」って言われたくないんで。ネタができたら出てもいいなと思うんすけど……でもね? 負けるのに出るのも満足できず。
──勝てるネタができたら?
リリー そうっすね。“勝てるネタ”というか、“見てほしいネタ”ができたら。
──「できたら」ということは、今あるネタでは出ない?
リリー たぶんそうでしょうね。もちろん何も決まってないんでわかんないですけど、出るなら新しいネタで行きたいし。
──あと1か月半ぐらいでエントリーが始まりますね。(取材は6月中旬)
リリー 早いっすね……。でも、今年はいい意味でも悪い意味でも一番『M-1』のことをそんな意識せずやってきたかもしれないですね。言い方難しいんですけど、やっぱり毎年かなりツラさもあるんですよ。だから、そういう意味ではのびのび劇場に立てたなって思います。
──のびのびと。盛山さんのメンタル面も、去年とは違いますか?
リリー 去年よりはだいぶいいと思いますね。相方もですけど、去年は僕も……しんどかったですね。
──先ほども仰っていた『M-1』に対しての意識もあり?
リリー それプラス、去年はマネージャーも現場にいなくて、全部ふたりで初めての現場に行って、毎日初めて会う人ばっかりで、心が休まるときがないというか。今は東京にも家がありますし、マネージャーも来てくれるし、面識ある人も増えて「この前はありがとうございました」っていう関係性が増えたんで。
──去年の1年間はふたりだけで行動する機会が多くて、さらに絆が深まりましたか?
リリー そうかもしれないですね。絆という言い方ちょっとわかんないですけど、あれをふたりで乗り越えたっていうのは一個ありますね。
──今年が『M-1』ラストイヤーですが、来年以降『キングオブコント』など、別の賞レースへの出場は考えたりするんでしょうか?
リリー 『キングオブコント』は6、7年前に出たこともあるんですけど、ショートコントの連発で出たんです。でも、まわりは本気でやってる中で、僕らだけ手上げて「ショートコント、○○」「続きまして~」とかやってるの、申し訳ねえだろって。やっぱり準々決勝で落ちましたからね。
──なかなか珍しいスタイルで準々決勝まで。16年目以降の見取り図さんの動きが気になります。
リリー 『M-1』が終わったらそっちに向かうんかな? まあでも、コントはしたくてもできないですね。演技もできないですし、たぶんそういう脳みそじゃないと思う。