写真を撮ることにこだわりを持つアーティストやお笑い芸人による連載「QJWebカメラ部」。
加賀翔(かが屋)、前田こころ&平井美葉(BEYOOOOONDS)、セントチヒロ・チッチ(BiSH)、長野凌大(原因は自分にある。)、林田洋平(ザ・マミィ)が日替わりで担当し、それぞれが日常生活で見つけた「感情が動いた瞬間」を撮影する。
金曜日はザ・マミィ林田洋平が担当する。『キングオブコント2021』では、準優勝に輝いたザ・マミィの頭脳、林田。そんな彼は、自身のインスタグラムで発信するエモーショナルな写真も話題となっている。林田が、日常の中で、ついシャッターを切りたくなるのはどんな瞬間なのか。
上着の打ち上げ
この写真に写っている男性たちは、私と同じ上着を買ってきた男性たちだ。
左の男性はいつもお世話になっている作家のポテンシャル聡氏(通称・ポテし氏)で、右の男性はいつもお世話になっている先輩芸人のラブレターズ塚本直毅氏(通称・塚本氏)だ。
服を選ぶ基準というとデザインだとか値段だとかいろいろあるとは思うが、けっこう大事なのは「人と被っていないか」ということだと思う。
しかし、彼らはそういう自然の摂理に反して、故意に「同じ上着」を購入してきた。
おもしろい。おもしろいし、なんかたくましい。
すべての始まりはポテし氏が私の上着を見て言った「その上着いいね。俺も買おうかな」という発言だった。「その上着いいね。」まではよく聞く言葉であるが、そのあとに「俺も買おうかな」と来るパターンは知らなかったから度肝を抜かれた。
後日、ポテし氏が塚本氏に「俺、この林田君が着てる上着と同じ上着買おうと思ってるんだよね」と言う機会があった。すると塚本氏が「えー俺も買おうかな」と言って、まさか1が2になるとはと度肝を抜かれた。
初めはそういう冗談かなと思っていたが、彼らの目を見るとそうでないとすぐにわかった。間違いなく同じ上着を買おうとしている。そこから、ふたりが私の上着を実際に着てみたりするなどし、サイズも着心地も問題ないと言うことを入念に確認しだしたあたりから、私もなんだか楽しくなってきて『上着』というライングループを作り、上着の細かい情報を共有するようになった。
先に同じ上着を買ったのは塚本氏で、結局、僕とまったく同じデザインの上着は売り切れていたのだが、それとほぼ同じデザインにフードがついたものは残っていたそうで、それを購入したようだった。
すべて『上着』に報告が来る。
次にポテし氏が同じくフードつきの同じ上着を購入してきた。店員さんに「これ昨日も売れたんです。160センチ台の男性が買って行かれました」と言われたそうで、それは完全に塚本氏のことだった。
この上着はぽんぽん売れるもんじゃないんだ。もしかしたらこの街でこの上着を持っているのは私たち3人だけなのかも。謎の高揚感に胸が高まる。それはまるで心が上着を着た感じで、ウール100%のポカポカ感。
そして私たちはすぐに集まった。「上着の打ち上げ」と銘打って、すぐにみんなで集まった。おいしい料理とおいしいお酒、同じ上着。最高の宴だった。夢や上着について大いに語り合った私たちは途中熱くなって上着を脱いだ。あとに来たお客さんが壁に掛かっている3つの同じ上着に気づき口をあんぐりさせていたのを見てなんだか誇らしい気持ちになった。あの気持ちはなんだろう。
夜はすぐに深まり帰り道。駅前で立ち止まり、互いに互いの写真を撮って笑い合った。
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