キングオブコント「母と母」ケツに火をつけて全力で応援|奥森皐月は傍若無人 #4



インパクトと中毒性:「まりおねっつ」片桐仁&ちゅうえい

まずは片桐さんとちゅうえいさんの「まりおねっつ」。

ちゅうえいさんはギャグと漫才の印象が強くコントをされているイメージがなかったが、いい意味で通常運転のちゅうえいさんが舞台にいた。ゾンビ設定のコントかと思いきや、ひとつのギャグを半永久的に観るネタ。 しかもライトな下ネタのギャグ。最初から最後まで一貫してほかのギャグをやらない潔さがカッコよく見えた。

ちゅうえいさんのギャグは頭から離れなくなるフレーズで、インパクトがあり中毒性の高いネタ。展開の多いコントや伏線のあるネタが増えている今の風潮に逆行するお笑いで、賞レースの予選で観たら絶対に強い印象を与えられると思った。やついさんにネタの感想を聞かれたときに「2分が長く感じた」と言ってしまったことは反省している。いい意味で、とは言ったものの悪口感が否めない。翌日も頭に残っていたのはこのネタだった。

レジェンドふたりの夢のコンビ:「こなおとし」片桐仁&ユウキロック

次に、片桐さんとユウキロックさんによる「こなおとし」。

ハリガネロックとラーメンズという『爆笑オンエアバトル』(NHK)のレジェンドふたりの夢のコンビである。現在は養成所の講師としても活動しているユウキロックさんは、長年の経験から培った傾向と対策を用いてネタ作りも担当された。2分ネタといえど新ネタを10本も披露する片桐さんの負担を少しでも減らそうと、あえて音源を使うネタにしたという。片桐さんは2分間ほぼセリフを発しないのに、ずっと笑って観られるネタになっていて素敵だった。

ネタはもちろんおもしろかったのだが、ネタ後のトークまで目が離せない。今回のオーディションに熱い想いを持っているユウキロックさんは、とにかく0回戦を突破して片桐さんとコントがしたい。しかしライバルが大勢いる状況はまるでバチェラーのようだ、片桐さんから薔薇を渡されたい、とたとえを交えながらテンポよく話されていた。その強い気持ちが片想いをして日に日に思い募る乙女のようで、思わず応援したくなってしまった。


演技力の高さと引き込まれる展開:「母と母」片桐仁&青木さやか

片桐さんと青木さやかさんによる「母と母」は特に印象的だった。

17歳の私は、青木さんがお笑い芸人としてブレイクしていた時期のことを正直よく知らない。そのため、片桐さんと披露するコントは見当もつかなかった。ただ、ネタを観るとその演技力の高さと魅力が余すところなく発揮されていて引き込まれた。大人の男女を題材にしたセクシーな雰囲気から、ラーメンズのコントを彷彿とさせるキャラクターのおもしろさ。たった2分ちょっとの短い時間とは思えない展開と魅了されるふたりのパフォーマンスに感動すら覚えた。

出番前の楽屋で青木さんが「緊張する」と話される姿を見ていたので、それを微塵も感じさせない舞台上の演技がすごみを倍増させていたのかもしれない。純粋に「ネタもっと観たい!」という感想を抱いた。長い尺でも観たいし、ほかのネタも観てみたい。最も興味が湧いたユニットだった。

ぶっ飛んだ相性のよさ:「じん◯」片桐仁&高木ひとみ◯(ぽんぽこ)

私が一番注目していたのが、片桐さんと高木ひとみ◯(ぽんぽこ)による「じん◯」だ。

この企画がスタートした1週目に『ケツビ!』のゲストに来た芸人さんで、ラジオでのかけ合いを聴いているだけでも涙が出るほど笑った。一度聞いたら忘れられない特徴的な声と、かわいらしいしゃべり方に心を掴まれる。衣装も目立つし、表情の豊かさも魅力的だし、何より片桐さんが高木さんに振り回される構図がとてもおもしろい。

披露されたネタは、『チャイルド・プレイ』のチャッキーに扮した高木さんと、映画監督の片桐さんという設定。ツッコミに回っている片桐さんと高木さんのキャラクターとの相性がバッチリだと感じた。ただ、このユニットがKOCの1回戦に出場する日は、かなり会場が荒れるだろうとも思った。ぶっ飛び過ぎている。

47歳と48歳のコンビ“KOCへの挑戦”

『エレ片のケツビ!』メンバーと青木さやか
『エレ片のケツビ!』メンバーと青木さやか/(C)TBS

全10組のネタが披露されたのち、1週間のリスナー投票が行われた。1位から3位までを書き、それらの集計結果と片桐さんの気持ちでKOCヘ挑戦するひと組が決まるシステム。私ももちろん投票したが、かなり悩んだ。どのコンビが勝ち上がってもおかしくないほどそれぞれによさがあったと思う。

これにより、青木さやかさんとのユニット「母と母」が投票1位になり、片桐さんとKOCヘ出場することが決定した。2位のじん◯が811ポイント、1位の母と母が906ポイントという結果。ネタのおもしろさで選ばれている感じが信頼できる、ラジオリスナーのいいところだとしみじみ思った。

片桐さんと青木さんのKOC出場は、多くのネットニュースでも取り上げられ、『エレ片のケツビ!』が掲げるテーマ「Buzz Share Wave」を巻き起こした。7月16日の1回戦も突破し、良いスタートを切っている。このまま決勝に向かって進んで、さらにBuzzってShareされてWaveを起こしていってほしい。

47歳と48歳のおふたりの新たな挑戦はとにかく応援したくなる。私からするとまさに「母」の世代なので、身近さとたくましさを強く感じた。番組をこの先も聴きつづけるためにも、今こそリスナーも一緒にケツに火をつけて全力で応援していきたいところだ。

連載「奥森皐月は傍若無人」は、毎月1回の更新予定です。

『キングオブコント2021』1回戦は2021年7月17日(土)まで開催。決勝の模様はこの秋にTBSで生放送予定。


この記事の画像(全8枚)


関連記事

この記事が掲載されているカテゴリ

奥森皐月

Written by

奥森皐月

(おくもり・さつき)女優・タレント。2004年生まれ、東京都出身。3歳で芸能界入りし、現在は『にほんごであそぼ』『すイエんサー』(共にEテレ)にレギュラー出演中。『りぼん』(集英社)の「りぼんガール」としても活動している。『おはスタ』(テレビ東京)に「おはガール」としても出演していた。多彩な趣味の中..

関連記事

「好きな番組は、大きな声で好きだと言わないといけない」奥森皐月が“マヂクリゾンビ”になるまで|奥森皐月は傍若無人 #3

KOC妄想サムネ

『キングオブコント2021』に出場してほしい即席ユニット予想&妄想が止まらないので描いてしまった、ぜひ出場してください

奥森皐月

空気階段のケンカも苦労もブレイクも、すべてが私にとっては“蜜の味”|奥森皐月は傍若無人 #2

クイック・ジャパン/QJWeb/QJサポーターズ

クイック・ジャパンを一緒に盛り上げるメンバーを募集しています!

【板橋ハウスが旅して案内する北九州市①】

【板橋ハウスが旅して案内する北九州市①】自然と都会、古くて新しい!?キーワードは“アーバンアウトドア”と“レトロモダン”

【板橋ハウスが旅して案内する北九州市2】

【板橋ハウスが旅して案内する北九州市②】魅力あふれる歴史、自然、グルメに、夜景スポットも!「北九州市は“ちょうどいい都会”」

遅れてきた23年目のブレイク芸人、タイムマシーン3号の活動を支える“チル”の時間とは?

遅れてきた23年目のブレイク芸人、タイムマシーン3号の活動を支える“チル”の時間とは?

資本金は“アタッシュケースの500万円”、コロナ損失は1000万円。「YouTubeは生業」と語るロックバンド・ノンラビの生存哲学

未来の『M-1』王者もレジェンドも、本気ネタを披露する“笑いの祭典”。『春のラフフェス』全7公演を事前解説

CONTRIBUTOR

QJWeb今月の執筆陣

酔いどれ燻し銀コラムが話題

お笑い芸人

薄幸(納言)

「金借り」哲学を説くピン芸人

お笑い芸人

岡野陽一

“ラジオ変態”の女子高生

タレント・女優

奥森皐月

ドイツ公共テレビプロデューサー

翻訳・通訳・よろず物書き業

マライ・メントライン

毎日更新「きのうのテレビ」

テレビっ子ライター

てれびのスキマ

7ORDER/FLATLAND

アーティスト・モデル

森⽥美勇⼈

ケモノバカ一代

ライター・書評家

豊崎由美

VTuber記事を連載中

道民ライター

たまごまご

ホフディランのボーカルであり、カレーマニア

ミュージシャン

小宮山雄飛

俳優の魅力に迫る「告白的男優論」

ライター、ノベライザー、映画批評家

相田冬二

お笑い・音楽・ドラマの「感想」連載

ブロガー

かんそう

若手コント職人

お笑い芸人

加賀 翔(かが屋)

『キングオブコント2021』ファイナリスト

お笑い芸人

林田洋平(ザ・マミィ)

2023年に解散予定

"楽器を持たないパンクバンド"

セントチヒロ・チッチ(BiSH)

ドラマやバラエティでも活躍する“げんじぶ”メンバー

ボーカルダンスグループ

長野凌大(原因は自分にある。)

「お笑いクイズランド」連載中

お笑い芸人

仲嶺 巧(三日月マンハッタン)

“永遠に中学生”エビ中メンバー

アイドル

中山莉子(私立恵比寿中学)
ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん(ランジャタイ国崎和也)
竹中夏海
でか美ちゃん
藤津亮太

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。