『ひだまりスケッチ』『日常』『ゆゆ式』……平成生まれオタク芸人&ライターが若者にオススメしたい「名作アニメ」とは?【FAN×太田祥暉のQJアニメ研究部#1】 

撮影・構成=FAN太田祥暉


サブスク配信サービス全盛の昨今。今からアニメにハマろうと思っても、「観るべき名作アニメ」と呼ばれるアニメが多すぎてどの作品から観たらいいのかわからない……

そんな悩みを抱える読者のために、『バキ童チャンネル』スタッフとしてもおなじみのアニメ好き芸人・FANと、『僕の心のヤバイやつ』『山田くんとLv999の恋をする』などのガイドブックを手がけるアニメライター・太田祥暉の平成生まれオタクふたりが「観るべき名作アニメって、何がすごいの?」という素朴な疑問を丁寧に解説!

初回は1992年生まれのFANさんのアニメ遍歴を振り返りながら、2000年代の名作アニメをおさらいします。福岡の進学校から東京大学に進学し、TOKYO MXのアニメとともに青春を過ごしたFANさん。ショタ好きに目覚めるきっかけとなった『少年メイド』の魅力から、『ひだまりスケッチ』『日常』『ゆゆ式』など“日常系アニメ”の楽しみ方まで、やや偏ったオタク遍歴をプレイバック。

「これからアニメにハマりたい!」「アニメの知識をもっと学びたい」という皆様と一緒に、優しく楽しくアニメの歴史を学ぶ【QJアニメ研究部】スタートです!

動画はQJ公式YouTubeで公開中!

太田 こんにちはアニメライターの太田と申します。この動画は総合カルチャーメディア『Quick Japan』の企画として、さまざまな傑作アニメを僕とアニメ好きの芸人・FANさんのふたりで紐解いていく企画です。

FAN はいはい、始まりましたね。

太田 とはいえまずは僕らがどんなアニメを観てきたんじゃい、ということで。初回はアニメ遍歴をお伝えできればな、と。

FAN 今回はわたくしFANがどんなアニメを観てきて、どう育って今に至るか、という話をさせていただければと思います。

太田 よろしくお願いします!

FAN 僕は92年生まれでして、高校・予備校までは地元の福岡にいました。

太田 福岡だとテレビ東京系列も映りますもんね。

FAN そうですね。九州の他県よりはまだチャンネル数もある、みたいな感じではあったんですけど、もちろん福岡では観られないアニメとかもあったりはして。ただ幼少期は本当に一般的な子供というか、普通に『ポケットモンスター』を観て『カードキャプターさくら』を観て……。

太田 子供のころって、男子は「女の子が主人公のアニメは観ない」みたいな空気じゃないですか?

FAN たしかにまわりの友達は観てなかったですね。でも僕はけっこう『カードキャプターさくら』は通ってて。あと『キョロちゃん』ですね。

太田 これは打ち合わせで聞いたんですけど、恥ずかしながら『キョロちゃん』がアニメになって知らなかったんですよ。

FAN これはけっこう、隠れた名作なので……。あのチョコボールでおなじみのキャラの『キョロちゃん』のアニメがあるんですけど、これがおもしろかったんですよ。社会風刺も効いてて、あんなにかわいいデザインなのに意外と話が入り組んでたり、おもしろいボケとかもあったりして。大人になってから観返したんですけど、やっぱりおもしろかったですね。

大学のときに「観返したいな」って思ったんですけど、DVDも限定生産だったのでめちゃくちゃプレミアがついてたりして……。オークションでも15万円とかでした。でも、今やサブスクのおかげで観られるようになったので、もし視聴者の方で『キョロちゃん』をこの熱量で観てる人がいたら……。

太田 コメント欄にぜひ書き込んでほしいですね。

深夜アニメに目覚めたきっかけ『乙女はお姉さまに恋してる』

FAN 子供のころは「テレビつけたらやってたから観る」ぐらいで、アニメが好きで観てた認識ではないんですけど。小学校高学年ぐらいからいわゆる「オタク文化」に触れ出すっていう感じでした。ラノベとかもまわりが読むようになったりして僕も読むようになって……っていう流れですね。

それで僕は中学受験をして、福岡の久留米大学附設っていう九州だと一番上ぐらいの進学校に入ったんですよ。けっこう、進学校ってオタクが多いんです。

太田 それはどういう因果なんですかね?

FAN なんでだろう。勉強が好きな人とアニメが好きな人ってけっこう近いんですかね……? それでまわりの影響もあって自然とアニメとインターネットにハマっていって。僕は今芸人をやってて、当時からお笑いも好きだったんでそういうコミュニティにもいたんですけど、その中で同い年の人が「アニメ感想ブログ」をやり出したんですよ。

太田 はいはい、ありますよね。

FAN 彼は中学生ながらかなり文章が面白かったので、それで深夜アニメってものを知ったんですよ。深夜にもアニメってやってるんだって初めて知って。その中で気になって初めて観たのが『乙女はお姉さまに恋してる(おとめはボクにこいしてる=通称:おとボク)』

太田 よりによって。

FAN これは、入口としては非常に歪んでますよね。

太田 僕らくらいの世代だと、普通は入口として『涼宮ハルヒ』シリーズとか『らき☆すた』とかありそうですけど。

FAN 実は当時は『ハルヒ』観てなくて。『乙女はお姉さまに恋してる』っていうゲーム原作の深夜アニメなんですけど、主人公が女装して女子校に入るという話で。これが僕に多大な影響を与えて……ほかのチャンネルだと「ショタが好き」とか「男の子好き」とか言ってるんですけど、もう絶対にこのアニメが深く根づいてます。

太田 もし最初に『おとボク』を観ていなければ、もうちょっと変わっていたかもしれない。

FAN 「女装して女子校に入るみたいなことがあるなんて!」みたいな、現実だとあり得ないんですけど、その中でも普通に恋愛的な部分もあったりして。女の子もかわいいし主人公もかわいい、みたいなアニメを観て「うわ、深夜アニメってこんな世界があるんだ!」って。そこからいろんなアニメをどんどん観ていくきっかけになりました。

太田 でも、そこからのラインナップを観るとそんなに狂った要素があるアニメは多くはない。

FAN ちゃんと「深夜アニメって全部が『おとボク』ではないんだ」って気づいた(笑)。

「アニメの世界くらいゆっくりさせて……」日常系アニメとの出会い

FAN あともうひとつ、本当に今の自分を形作った『ひだまりスケッチ』という作品があります。これは『おとボク』とは別の衝撃というか、いわゆる“日常系”の作品が増え始めた時期で。たぶん『ひだまりスケッチ』がその最初ぐらいの作品だと思うんですけども。バトルシーンとか激しいストーリー展開があるわけでもなく、恋愛のやりとりとかでもなく、本当にもう女の子たちがただ楽しく暮らしているだけの作品があるんだ、と。それこそ進学校なんで、たとえばテストの成績が何位とか、貼り出されるんですよ。

太田 そういうのに一喜一憂して。

FAN 「アニメの世界ぐらいゆっくりさせてくれよ」って思ってて、本当に『ひだまりスケッチ』が好きになりまして。ここから深夜アニメをしっかり認識するようになったし、声優さんも「この作品にも同じ人が出てる」とかも気になるようになってたとえば『ひだまりスケッチ』で主人公・ゆの役をやっていた阿澄佳奈さんが気になって「ほかにどんなのやってるんだろう?」って調べるようになりました。そこからほかのアニメも観る、みたいな経験もあって。

あとはラジオですね。『ひだまりスケッチ』って『ひだまりラジオ』っていうネットラジオをやってて。アニメの派生コンテンツとかを観るようになって、アニメ全体を好きになるっていうのは『ひだまりスケッチ』がきっかけですね。

太田 『ひだまりスケッチ』ってシャフトが制作じゃないですか。トガった映像が。

FAN 特に1期はね。目覚まし時計が実写だったりとか……。でも『ひだまりラジオ』が面白すぎました。

太田 本当にあれは、いまだにたまに新作があったりしますけど。

FAN あれだけはずっと続いてて、なんなら放送がやってないのにメールフォームがずっと空いててメールが届き続けてるって聞きます。こんな世界があるんだって。「声優さんがしゃべるラジオって面白い」みたいなところも含めて、アニメオタク文化全体を楽しめるようになったっていう感じですね。

全編はQJ公式YouTubeで公開中!

第2回の動画は近日公開予定。アニメライターとして活躍中の太田祥暉がアニメ遍歴や同人活動の個人史を語ります!

FAN
(ふぁん)芸人・構成作家。お笑いコンビ「8月22日の彼女」として活動するほか、人気YouTubeチャンネル『バキ童チャンネル』に制作・構成作家として関わり、自身もたびたび出演する。アニメなどのオタク文化や、ショタ・BLへの造詣が深いことでも知られる。
X:@FanLightwind /YouTube(8月22日の彼女)https://youtube.com/@822kanojo

太田祥暉
(おおた・さき)編集者・ライター。2018年から商業媒体でライティングを開始。アニメ公式サイトのあらすじやBlu-rayブックレットなどを担当している。著書に『ライトノベル50年・読んでおきたい100冊』(玄光社)。
X:https://x.com/wataruumino

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