「今までNoって言われてきた人たちを救いたい」ちゃんみなプロデュースのガールズグループオーディションが始動!【『No No Girls』レポート#1】

「今までNoって言われてきた人たちを救いたい」ちゃんみなプロデュースのガールズグループオーディションが始動!【『No No Girls』レポート#1】

文=奈都樹 編集=森田真規


YouTubeの総再生回数は5億回を超え、若い世代から絶大なる支持を得ているラッパー/シンガーのちゃんみな。そんな彼女が、SKY-HIが主宰するレーベル/マネジメント「BMSG」とタッグを組んで始動したオーディションプロジェクト『No No Girls』。

「今までいろんなNoって言われてきた人たちを救いたい」と、本オーディションのプロデューサーであるちゃんみなは宣言。そして、ここから生まれるガールズグループに所属するアーティストには、以下3つの“No”を求めるという。

No FAKE(本物であれ)
No LAZE(誰よりも一生懸命であれ)
No HATE(自分に中指を立てるな)

2024年10月4日にYouTubeにて配信された『No No Girls』Ep.01では、7000通以上の応募の中から30人まで絞られた1次審査と2次審査の様子が届けられた。

【No No Girls】Ep.01 / Prologue - What’s No No Girls-

コンセプトの生命線は“声”

「今までいろんなNoって言われてきた人たちを救いたい。全世界にいるNoと言われてきた人、または自分で自分にNoって言い続けてる人。あなたの声と人生を聴かせてください」

2023年11月、横浜アリーナ。ちゃんみなは夢を見る女性、夢をあきらめかけている女性たちに向かってそう宣言した。そしてオーディションプロジェクト『No No Girls』は幕を開けた。

SKY-HIがCEOを務めるレーベル/マネジメント「BMSG」が、ちゃんみなをプロデューサーに迎えて始まった本オーディション。SKY-HIによれば、女性であるというだけでBMSGと契約できないという状態がこの3、4年続いてしまっており、改めてひとつのカルチャーを作っていくためのブランドとして「B-RAVE」を立ち上げたという。BMSG傘下の新組織として創出された本プロジェクトでは、クリエイティブ、内容、方針、人選、すべての権利をちゃんみなに委任した。

ちゃんみなといえば、自身の経験をもとに世間にはびこるルッキズムをアイロニカルに描いた楽曲「美人」が記憶に新しい。『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』で注目を集めた彼女だが、YouTubeやSNSのコメントには楽曲ではなく容姿に対する批判が多かったという。そうした経験から感じた違和感やショックが「美人」という名曲にもつながっている。

かつてインタビューではこのような話もしていた。

「私は子供の頃からバレエやピアノ、ヒップホップダンスのコンクールや発表会、オーディションに出たり、他の人よりもおそらく「ステージ」がついてまわる幼少期だったんですね。3歳の頃からお化粧もしていたり。そして、その中では様々な意味で「美しい子」がセンターで踊るというのが当たり前だったし、「美しいか美しくないか」で判断されるのが普通の世界にいたんです」

「ちゃんみなが経験した、容姿に基づく中傷と賛美 自らラップで切る」(『CINRA』、https://www.cinra.net/article/interview-202104-chanmina_ymmts

そんな彼女は、本プロジェクトについてハッキリとこう言う。

「身長、体重、年齢、全然別にいらないです。ガールズグループをやりたかったら来てください」

コンセプトの生命線は“声”。ちゃんみなはその理由を、「人格、性格、経験は表情とか声に出るんですよね。歌ってちゃんと自分と向き合わなきゃいけない。自分の魂から出てくる、自分の歌声じゃないとだめなの。だから私はきれいに歌うとかそんなのどうでもいい。その人の人生が声に乗っていればいい」と話す。

さらに声にこだわり始めた背景について、自らの人生を踏まえながらこのように語った。

「私自身とってもたくさんいろんな場面でNoと言われてきた人生だったので。ずっと覚えているのが、先生に言われてたんだよね。“みなちゃんは黒なんだよ。黒だからだめなんだよ。みなちゃんがひとりヘタなだけで端っこにいても全員黒にしちゃう。だから真ん中に行くぐらい上手になるか、ひとりでやりなさい”って言われたの。めちゃくちゃダンスがんばってやるって、やったんだけど、気づいたら、私が本当にやりたいの、声を届けたいんだけどな、歌いたいんだけどなって」

アーティストに求める、3つの“No”

そんなちゃんみながアーティストに求めるものは、以下3つの“No”にある。

・No FAKE(本物であれ)
=自己表現(自分の経験や視点から見えているもの、自分が本当に感じている事実を伝えること)

・No LAZE(誰よりも一生懸命であれ)
=自己理解(自分と向き合うことを怠るな)

・No HATE(自分に中指を立てるな)
=自己肯定(自分を信用する、私なんてと思わずに一生懸命生きる)

特にNo LAZEについて「めちゃくちゃめんどくさい作業だけど、ここを怠けずに自分と向き合ってほしい」と話す。SKY-HIも「自己理解めちゃくちゃエグい作業なんだけど、それをやった人にしか出ない声はあるよね」と共感した。

たしかに、ちゃんみなの声色はそのパートごとにまったく異なり、一曲の中にさまざまな感情をあらわにして聴き手の心を揺さぶり乱す。この表現の幅広さは人生経験から生まれた感情を歌に乗せているからに違いないが、“感情”という形のないものを表現に落とし込むまでに、彼女もまたこの“3つのNo”と繰り返し向き合ってきたのだろう。

「ガールズグループをやりたかったら来てください」。ちゃんみなの力強い言葉に引き寄せられ、オーディションには自分の人生を切り拓こうとする女性たちが国内外から集まった。応募総数は7000通以上。その中で1次審査通過者はたった250人だという。

「First Love」で魅せる対象的なふたり

2次審査は全国3都市の会場で行われた。厳しい審査を通過した夢追い人たちが続々と会場に足を運ぶ。

中にはオーディション自体受けたのが初めてだという候補者も。「ずっと昔からアーティストというか、パフォーマンスする人になりたい夢はあったんですけど、自分の実力とかビジュアルとかに自信がなくて、そういう機会があっても全部自分で受けるのをあきらめてしまうことがあって……」と声を震わせたのは、YUKINOだ。

彼女は課題曲に宇多田ヒカル「First Love」をセレクト。ピンと張り詰めた緊張感が漂うなか、彼女が歌い出すとその場の空気がガラッと変わった。

先ほどの弱気な表情から一変。裏声と地声をひらひらと使い分けながら力強く切ない歌声を響かせる。まるで自信のなさから解放されたかのように輝きを放つ彼女。これにはちゃんみなもSKY-HIも驚きが隠せない。歌い終えた彼女にちゃんみなは、「こういう人に来てもらいたかったです。次も会えたらうれしいです」と微笑んだ。

いくつかある課題曲でも「First Love」は、候補者によって表現の仕方がまったく異なるのが興味深い。中でも、ちゃんみなから「R&Bに革命が起きそうな歌声」と言わしめたのはFUMINOだ。ウィスパーボイスが特徴的な彼女。歌い方にも聴き手の感情をすべて受容しようとするクッションのような柔らかさがあり、YUKINOとはまた違う魅力があった。

韓国から来日、元練習生など実力者ぞろいの応募者たち

2次審査の候補者には、1次審査で「いい声」と評されたJISOO(ジス)も含まれていた。この日のために韓国から来日した彼女は、椎名林檎「丸の内サディスティック」を披露。イントロから「Um~~、ドゥビドゥバ~~」とスキャットをきかせる。歌唱だけでなく、表情の見せ方、リズムの取り方、身のこなし方、そのすべてが洗練されていることが誰の目にも明らかだった。しかも、それをあまりにも自然にできてしまうところにも惹きつける魅力がある。特に驚いていたのはSKY-HIで、「とんでもない歌声、いやすごい」と大絶賛だった。

続いて、「お久しぶりです」とちゃんみなと言葉を交わしたのはMOMOKA。ちゃんみなが特別トレーナーとして参加していた大型ガールズオーディションの練習生で、あと一歩というところで涙をのんだという。このオーディションにはそんな元練習生も多い。

MOMOKAは金髪ロングだったヘアスタイルを、黒髪ボブにしてイメージチェンジ。あどけなさが残るかわいらしい雰囲気からクールな色気をまとった女性へと変わっていた。

彼女はちゃんみなの「ハレンチ」を披露する。体を手で撫でるような艶やかな仕草や凛とした力強い眼差しが、スモーキーな歌声にハマっていてパフォーマンスすべてが完成されている。

そんな彼女に対してちゃんみなは、「パフォーマンスもそうですけど、出で立ちも、違うフェーズに行った感じがするんですよ。すごい大きなものを乗り越えたんだろうなという感じがしていて」と成長具合に思わず笑みをこぼす。これには緊張気味なMOMOKAの表情もパッと明るくなった。すると続けてちゃんみなは、「前回のオーディション番組でお会いしたときとは全然違うオーラで、私は次回のオーディションでも会いたいなとは思っています」と真剣な表情でMOMOKAをまっすぐ見つめた。

そのほかにも「声自体に色気があるんですよ。これって本当に才能で」と評価された憂いの帯びた声がセクシーなYURIや、「これが実力の暴力です」とちゃんみなを興奮させた鼻にかかる気だるい歌唱が魅惑的なNAOKOなど実力者がそろう。

250人分の“才能”と“人生”に向き合った2次審査

そんな本オーディションだが、2次審査でちゃんみなとSKY-HIを仰天させたのはCHIKAだ。彼女が歌唱したのは、ちゃんみなの「ダリア」。「美人」を上から俯瞰して描いたサイドストーリー的な楽曲としても知られ、ちゃんみながいつか曲にしたいと考えていた“美”についての思いが詰め込まれた楽曲のひとつでもある。

<奏でろ賛美歌/無知なメロディーはハイ/たかが心なら差し上げたいわ/And then I…甘ったるい願いね>

身体中の力を振り絞ってCHIKAは叫ぶ。まるで内に秘めた感情が、あふれて止まらないかのようなダイナミックな歌唱。情念すらも感じさせる迫力のパフォーマンスで、審査会場が震えているのを感じる。SKY-HIは両手を挙げて歓喜、ちゃんみなは頭を抱えて驚愕。曲が終わるとふたりからは自然と拍手が起こった。

圧倒的な歌唱力。なぜこのオーディションを受けたのか。そう聞かれると、CHIKAは急に不安げな表情を浮かべて話し始めた。

「えっと……自分は……前から自信が持てなくて……まわりと比べてここが負けてるとか、あれが負けてるとか……最初はネガティブだけど、それに負けたくないって気持ちでずっとここまでがんばってきて……。自分は実力だけはつけてきたけど、人の足を止めたり、惹きつけられる人間じゃないのかなと思って」

そんなCHIKAの言葉にちゃんみなも共鳴し、「泣いちゃいそうになっちゃった。まったく同じすぎて、私の昔の理由と」と思いをこぼした。

2次審査で、250人分の“才能”と“人生”に触れていくちゃんみなとSKY-HI。中には、自分の人生を語りながら涙を流す候補者もいた。彼女たちの思いをじっくり受け取りながら、審査は進んでいく。

そして3次審査に進む候補者が決定。前述したYUKINO、FUMINO、JISOO、MOMOKA、YURI、NAOKO、CHIKAを含む、全30人の候補者が発表された。

厳しい審査を通り抜けた彼女たち。次回の『No No Girls』Ep.02では、合宿審査の様子が配信される予定だ。

『No No Girls』Ep.02配信予定
■2024年10月11日(金)20時~

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奈都樹

(なつき)1994年生まれ。リアルサウンド編集部に所属後、現在はフリーライターとして活動しながら、クオーターライフクライシスの渦中にいる若者の心情を様々な角度から切り取ったインタビューサイト『小さな生活の声』を運営中。会社員時代の経験や同世代としての視点から、若者たちのリアルな声を取材している。

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