【今月は何を観に行く?】2022年7月のオススメ映画情報

2022.7.2

映画ファン必見の7月公開予定作をラインナップ! 映画評論家・映画ライターのバフィー吉川がセレクト&推薦する、注目の映画作品をお届けします。

本能のまま生きるって、悪いこと?『わたしは最悪。』

(C)2021 OSLO PICTURES - MK PRODUCTIONS - FILM I VÄST - SNOWGLOBE - B-Reel – ARTE FRANCE CINEMA

監督:ヨアキム・トリアー
脚本:ヨアキム・トリアー、エスキル・フォクト
出演:レナーテ・レインスヴェ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ハーバート・ノードラムほか
7月1日(金)より全国順次公開

ストーリー

学生時代は成績優秀、アートの才能や文才もあるのに、「これしかない!」という決定的な道が見つからず、いまだ人生の脇役にいるような気分のユリヤ。そんな彼女に対し、グラフィックノベル作家として成功した年上の恋人アクセルは、妻や母といったポジションを勧めてくる。ある夜、招待されていないパーティに紛れ込んだユリヤは、若くて魅力的なアイヴィンと出会う。新たな恋の勢いに乗ったユリヤは、今度こそ人生の主役になろうとするのだが……。

おすすめポイント

人生の選択によっては、月並みではあってもそれなりに幸せな生活が送れたかもしれない。家族を作るチャンスもあった。しかし彼女は、自分の本能と直感を信じ、素直に生きただけ。結果的にそれが誰かを傷つけ、人を不幸にさせたとしても。他者のことを考えないで、自分のために突き進むことが、果たして「最悪」なことなのだろうか……。そもそも、自分の人生なのだから、自由に生きて何が悪い? そんな究極の問いを訴えかけてくる本作は、物語はすごくシンプルでありながら、奥深さを感じさせる。

ホラーの常識を覆す展開の連続!まさかの感動要素も⁉『ブラック・フォン』

(C)2021 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

監督:スコット・デリクソン
脚本:スコット・デリクソン、C・ロバート・カーギル
出演:イーサン・ホーク、メイソン・テムズ、マデリーン・マックグロウほか
7月1日(金)全国公開

ストーリー

コロラド州デンバー北部のとある町では、子供の行方不明事件が頻発していた。気が小さく独り立ちできない少年フィニーは、ある日の学校の帰り道、マジシャンだという風船を持った男に出くわす。「マジックを見たいだろ?」のひと言を発したかと思うと、フィニーは黒いバンに無理やり押し込まる。気がつくと、地下室のような密室に閉じ込められていたフィニー。壁に囲まれたその部屋には、鍵のかかった扉と鉄格子の窓、そして「断線している黒電話」があった。すると突如、断線しているはずの電話のベルが鳴り響く。フィニーはおそるおそるその受話器を取るが、それは死者からのメッセージだった。一方、行方不明のフィニーを探している妹のグウェンは兄の失踪に関する不思議な予知夢を見たというが……。

おすすめポイント

傑作とそうでない作品の差が極端なスコット・デリクソン作品ではあるが、今作は間違いなく傑作!

ホラーやスリラーに方程式があるとするなら、本作はことごとくそして意図的に、その方程式から外れた作品といえるだろう。つまり、従来の常識が通用しないのだ。恐怖の象徴である霊の存在が希望の象徴として描かれているほか、特殊能力、妙に協力的な警察、毒親の改心など、複数の“ちょっと違った”要素が絡み合うことで、まったく予想できない展開に向かっていく。すでに命を奪われてしまった子供の亡霊たちの事件を解決したい、これ以上被害者を増やしたくないというフィニーの純粋な願いには、つらさと感動が入り混じって、鑑賞中はなんとも言えない感情になってしまうだろう。

国際女優チョン・ジョンソがラブコメに初挑戦『恋愛の抜けたロマンス』

(C)2021 CJ ENM Co., Ltd., TWELVE JOURNEY ALL RIGHTS RESERVE

監督:チョン・ガヨン
脚本:チョン・ガヨン、ワン・ヘジ
出演:チョン・ジョンソ、ソン・ソック、コン・ミンジョン、キム・スルギ、ペ・ユラム、キム・ジェファほか
7月8日(金)シネマート新宿ほかロードショー

ストーリー

仕事も恋愛も思いどおりにいかない29歳、ジャヨン。元カレとの別れから恋愛引退を決意したが、耐え難い寂しさに勝てず、最後の望み“デートアプリ”で相手を検索する。一方、仕事も恋愛もカモにされる33歳、ウリ。恋愛の痛みも引かないうちに19禁コラムの執筆を引き受けることになり、半強制的に“デートアプリ”に加入させられることに。名前、目的、本音すべてを隠して会った、ジャヨンとウリ。1ミリも期待していなかったふたりだったが、互いに惹かれるようになり、恋愛のようなそうでないような微妙な関係が始まっていく。

おすすめポイント

村上春樹の短編を映画化した『バーニング 劇場版』(2018)でデビュー後、6月24日からNetflixで配信中のドラマ『ペーパー・ハウス・コリア:統一通貨を奪え』のトーキョー役で注目され、2021年の『Mona Lisa and the Blood Moon』(日本未公開)では、ケイト・ハドソンとも共演を果たしたチョン・ジョンソ主演。韓国のアラサー、アラフォーのリアルな恋愛事情を描いた大人向けラブコメに仕上がっている。

過去の経験と、年齢を考えると時間をかけていられないという妙な焦りから、恋愛に臆病になってしまった男女のちょっとワケありな関係は、本当の愛に発展するのだろうか……? 日本の映画やドラマでもありがちな設定ではあるし、見事なまでに案の定な展開になっていくものの、『ザ・コール』(2020)では狂気的な演技が注目されたチョン・ジョンソの初ラブコメという点に注目してもらいたい。

70年代ホラー愛がいっぱい!『X エックス』

(C)2022 Over The Hill Pictures LLC All Rights Reserved.

監督・脚本:タイ・ウェスト
出演:ミア・ゴス、ジェナ・オルテガ、ブリタニー・スノウ、スコット・メスカディ(キッド・カディ)、マーティン・ヘンダーソン、オーウェン・キャンベル、ステファン・ウレほか
7月8日(⾦)TOHOシネマズ ⽇⽐⾕ほか全国ロードショー

ストーリー

1979年、テキサス。女優のマキシーンと、そのマネージャーで敏腕プロデューサーのウェイン、ブロンド女優のボビー・リンとベトナム帰還兵で俳優のジャクソン、そして自主映画監督の学生RJと、その彼女で録音担当の学生ロレインの3組のカップルは、映画撮影のために借りた田舎の農場へ向かう。彼らが撮影する映画のタイトルは『農場の娘たち』。この映画でドル箱を狙う6人の野心は、剥き出しだ。そんな彼らを農場で待ち受けたのは、みすぼらしい老人のハワードだった。一方、マキシーンは、母屋の窓ガラスからこちらを見つめるハワードの妻である老婆パールと目が合ってしまう。そう、3組のカップルが踏み入れたのは、史上最高齢の殺人夫婦が棲む家だった……。

おすすめポイント

2009年の『The House of the Devil』(日本未公開)でも70、80年代ホラーの質感にこだわった画作りで一気に注目を集めたタイ・ウェスト監督が、今回は徹底的に70年代ホラーを再現。おかしな言葉になってしまうが、“現代の70年代ホラー”という不思議な感覚にさせられる作品。いかにも『悪魔のいけにえ』(1974)や『サランドラ』(1977)の「田舎は怖い」的なスプラッター・ムービー要素の中に、アメリカン・ニューシネマへのリスペクトがギミックとして隠されている。また70、80年代ホラーが、裏テーマに“性の乱れの危険性”を描いていたのに対し、本作はかなりストレートに描かれている。

若さゆえにバカな行動をする若者たちと、そんな若さを懐かしむ殺人鬼たち。過去の自分たちと未来の自分たちが顔を合わせたとき、互いにどういった行動を取るのだろうか……といった、鏡のような相手と対決するようになる構造も独特だ。

極限の状況下、誰を信じて誰を疑うか?『炎のデス・ポリス』

(C)2021 CS Movie II LLC. All Rights Reserved

監督:ジョー・カーナハン
脚本:カート・マクロード、ジョー・カーナハン
出演:ジェラルド・バトラー、フランク・グリロ、アレクシス・ラウダー、トビー・ハスほか
7月15日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開

ストーリー

ある夜、アメリカ・ネバダ州の砂漠地帯に佇むガンクリーク警察署に、暴力沙汰を起こした詐欺師テディが連行されてくる。実はマフィアのボスに命を狙われているテディは、避難場所を求めてわざと逮捕されたのだ。留置場に放り込まれひと息ついたのも束の間、マフィアに雇われたスゴ腕の殺し屋ボブが泥酔男になりすまして留置場のお向かいさんとなったから、大変。新人警官ヴァレリーの活躍によってボブのテディ抹殺計画は阻止されるが、マフィアが放った新たな刺客、サイコパスのアンソニーが現れて署員を皆殺しにし、小さな警察署はまるで戦場のような大惨事に……。孤立無援の危機に陥ったヴァレリー、裏社会に生きる同じ穴のムジナでありながら激しくいがみ合うテディ、ボブ、アンソニー。果たして4人のうち、この一夜限りの壮絶な殺し合いを生き抜き、朝を迎えられるのは誰なのか!?

おすすめポイント

砂漠地帯にある警察署に訳あり詐欺師、殺し屋、サイコパス、汚職警官が大集合なカオス状態に巻き込まれる、新人警官ヴァレリー。誰ひとり信用できない状況でヴァレリーが助かるためには、誰かと協力しなければならない。一時的に協力関係にあっても、そのあとはどうなる……。先の先を読もうとすればするほどに、難しい選択。選択を間違えば即死の状況でヴァレリーがどう決断するか。その心理戦は、今作における一番の注目ポイントとなっている。また、無法地帯と化した警察署の中で繰り広げられる大味アクションも、見どころのひとつだ。

『バーフバリ』俳優が“森の神”を演じる『ハーティー 森の神』

監督・脚本:プラブ・ソロモン
出演:ラーナー・ダッグバーティ、シュリヤー・ピルガオーンカル、ゾーヤー・フセイン、プルキット・サムラートほか
7月29日(金)ロードショー

ストーリー

人里離れた深い森で、野生のゾウの群れを見守りながらひとり暮らす男スミトラナンダン。森を愛し、動物たちと家族のように暮らすこの男のことを、人々は敬意を表して“森の神”と呼んだ。ある日、役人のうしろ盾を得た巨大企業が、彼の住む森を占拠し、リゾート施設の開発を始めてしまう。森とゾウを守るため、開発を阻止しようとする森の神だったが、逆に罠にはめられ、投獄されてしまう事態に。同じ森に住む仲間たちが当局に対しゲリラ的な戦いを挑む一方、釈放された森の神はあくまで平和的な解決方法を模索しつづけるが、その努力も虚しく、森は高い塀で囲まれ、ゾウが暮らしていた場所は奪われてしまう。森の神は身を賭して最後の抗議を決意するのだが……。

おすすめポイント

インドには現代も、まだまだ野生生物と人間が共存する森林地帯が多く存在している。祖先の意思を継ぎ、北インドにあるアランヤの森を50年以上管理してきた剛毛髭モジャな男、スミトラナンダン。森の神として一目置かれる彼は、動物の声を聞くことができ、特にゾウたちと仲よし。自然の中でターザンのように平和に暮らしていた日々が、都市開発を目論む陰謀によって壊されたとき、森の神は動く!

日本でもヒットしたインド映画『バーフバリ 伝説誕生』(2015)で、濃過ぎる悪役を演じたラーナー・ダッグバーティ主演の本作。一見すると暑苦しい映画に思えるもののメッセージ性もあり、そのギャップも魅力のひとつとなっている。

赤裸々過ぎる恋愛映画『わたし達はおとな』。女性目線で描かれた圧倒的な“等身大のラブストーリー”

【注目作めじろ押し!】2022年6月のオススメ映画情報

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