GLAY・HISASHIが「解散を考えたとき」と、時代に対応するための「決断」

2020.1.27

「もう解散しようか」という話もあった

──なるほど。でも、たとえば結成10年目の頃と、20周年を迎えた現在では、バンドに対する考え方もいくらかは変化しているのでは?

HISASHI もちろん。それこそ10年目って、GLAYにとってはいちばん浮き足立っちゃいけない時期だったと思うんです。特に僕らは90年代のCDバブルという竜巻に飲み込まれて、そこでなんとか踏ん張ろうとしていた時期に、バンドの10周年を迎えたので。当時はホント必死でしたね。

なんとかメンバー4人の結束を固めて、地に足をつけていかなきゃって。だから、あの頃ってセールス的にいちばん売れている時期なんですけど、バンドとしては、正直そんなにおもしろくなかったんです。

──それほど目まぐるしい時期だったんですね。

HISASHI うん。実際、当時は「もう解散しようか」みたいな話もありましたし。でも、そこで僕らは「とにかく今のGLAYを楽しもうよ」というポジティブな考え方に切り替えることができたんです。だから、バンド的には10年前よりも今のほうがずっと健康的なんですよね。今みたいに時間をかけてスタジオ・ワークをやれたり、メンバーと一緒に呑みながら、ツアーの演出を考えたりしている時のほうがずっと楽しいし、そういう当たり前の時間をちゃんと確保することで、GLAYのクリエイティブな面もかなり落ち着いたと思います。

──その竜巻のような状況にいながら、皆さんはよく冷静でいられましたね。

HISASHI 僕はもう、2000年代に入るタイミングで、「絶対にここから時代は変わっていく」と確信していました。「こんな状況がいつまでも続くわけない。このままいけば、間違いなくGLAYはダメになる」って。だから、当時は厳しい決断をしなければいけないときも、たくさんありました。それでつらい別れもあった。

でも、それらの決断はイチ音楽ファンとしても絶対に必要だったと思うし、それまでコンスタントに続けてきた『GLAY EXPO』(GLAYが1999年から開催している大型ライブ・イべント)も、僕らは大事にしていきたかったから。それに、あの時期があったおかげで、今また笑顔で再会できている人もいますからね。もちろん、その倍以上に新しい出会いもたくさんありましたし。

──確かに現在のGLAYは、10年前よりバンドの活動を意識的にコントロールできているような印象があります。

HISASHI うん。そういう意味でいうと、10年前の僕らは「今がチャンスだ!」とも思っていたんです。これからの時代は、バンドに関するいろんなことを自分たちでコントロールできるようになるはずだって。たとえばそれは、氷室京介さんや矢沢永吉さんみたいな先輩たちを見ていても感じることだったし、そこでG-DIRECT(GLAYのオフィシャルストア)を始めたことはすごく大きかった。

実際、今の僕らは自分たちの売り上げとか、プロモーションの成果、あるいはミュージック・ビデオにかかる予算なんかも、シビアに把握できているんです。そうやって身の回りのことを認識しながら、結果を追求していけるのって、すごくおもしろいことだと思うんですよね。なんか、ゲームみたいな感じ……と言ったらアレですけど(笑)。少なくとも今の僕らは、自分たちがどこに向かってボールを投げているのか、ちゃんとわかった上で活動できているので。

これからの音楽の楽しみ方を考える

──同時に、GLAYはつい最近もドーム公演を成功させるなど、今もスケールの大きな活動を展開していますよね。

HISASHI それは本当にうれしいことだと思っていて。僕らって、毎回シングル曲ばかりをやるバンドじゃないし、今コンサートに来てくれているお客さんの中には、「新しいアルバムの曲はよく知らない」みたいな人も、きっといると思うんです。それでもみんなに来てもらえているのは、きっとこのバンドのもつ雰囲気とかを楽しんでもらえているんだろうなって。

もちろん、自分たちからそれを売りにするつもりはないし、これからも常に攻めていくつもりなんですけど、そうやって愛してもらえていることは、本当に幸せだと思っています。

──そう、今やGLAYのファンは2世代から3世代にわたるわけで。バンドや楽曲との付き合い方も、きっと様々だと思うんですよ。

HISASHI ホントそうですね。音楽の楽しみ方はますます多様になってきていると思う。それこそ、GLAYに関するアイテムをすべて収集してくれている人もいれば、「新曲は最近あまり買ってないけど、コンサートには必ず行く」という人もいる。どちらにしても、僕はすごくうれしいんですよね。

――今は音楽を無料で聴けてしまう時代でもありますが、そこについてはどう考えていますか。

HISASHI もちろん、そこともうまく付き合っていこうと考えています。今の時代って、音楽業界的には危機的な状況ともいえますけど、僕はそういう状況だってすごく楽しんでいますからね。そういえば、最近SNSで「CDが売れなくなると、アーティストがかわいそうだ。だから、みんなでCDを買おう」みたいに呼びかけているのを見かけて。個人的にちょっと思うことがあったんですけど、それをネット上に書き込むとまた炎上させちゃうから(笑)。その思いの丈は、呑みの席でTAKUROにぶつけました。

──あははは(笑)。ネット上で言えないことはメンバーにぶつけると。

HISASHI まあ、そんな話をひたすら聞かされてるTAKUROは、相当ゲッソリしてましたけどね(笑)。


GLAY
1994年メジャーデビュー。 2019年10月に15枚目のオリジナルアルバム「NO DEMOCRACY」を発売 。2020年にはベストアルバム 「REVIEW II」のリリース、デビュー25周年を総括する海外ロングツアー&ドームツアー開催予定

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