【第3回】窪塚洋介 世界が変わる仕組み(2003年12月収録)

2020.1.15

――他人に任せて文句を言うんではなく、自分から世界を変えようという環境活動をしてますよね。生き方そのものを問いかける。窪塚さんの生き方とも共通するように感じます。

窪塚 俺はスピリチュアルなところからしか、自分自身の体験からしか、その流れのことを話せないから。今自分がやってることもそういうことなんですけど。ただ、その流れとリンクする流れが自分の中から自然と出てきた。今それが全部つながり出して動いてきたところなんです。ぶっちゃけ、環境問題にしても、「俺ってこれでいいのかな」というか、「それで自分に何ができるんだろう」と考えてたこともあった。

でも、ひとりひとりの世界が重なってこの現実世界になってるわけだから、ひとりひとりがとにかく「自分の世界」にだけは責任を持つ。で、ひとりひとりが責任を持った瞬間に世界は変わるという仕組みになってる。やっぱりひとりひとりが大切。「地球のために」って感覚が持ちにくい人は、「自分のために」というところでいいんたと思う。それは、いつかは同じことになっていくはずだから。

――食べ物とかにも気を使いますか?

窪塚 本当に自然のものを食べたい欲求はある。太陽のパワーがすごく入ってるようなもの。無農薬だったり、無肥料だったり、なるべくオーガニック(※12)なもの。それが一番うまいじゃないっすか。自然食材の店にたまに行くんだけど、そこで「ちょっとこれつまんでくださいよ」と言われてもらうトマトが超甘くて。とくに子供(※13)が生まれてからは気にするようになった。自分の子供が着るものや、口にするものが、やっぱケミカルなものじゃなくて、オーガニックなもののほうが安心できる。地球の流れと自分の流れとシンクロするためにも。

――子供ができると、この世界を存続させていこう、この世界を、未来につなげていこうというリアルな生き方になっていくのかな。

窪塚 理屈抜きに、それはすごく思いますね。生まれる前は頭で「子供たちのために」みたいなことはなんとなく考えていたけど、実際生まれて抱っこして、こいつが幼稚園に行って、小学校、中学校に行ってということを考えると、無視できないし。


*注釈

※1:大麻
「『大麻』という植物がある。あらゆる意味で万能なこの草は、21世紀、人間にとって奇跡の草となる」(窪塚洋介著『PIECES OF PEACE』“大麻”という箱舟より)。著作の中でこう語った窪塚は当然のごとく様々なメディアによってバッシングされる。しかし、その真意は大麻がエコロジカルな素材としていかに優れているかというこである。すなわち、
●自然にやさしい生産ができる。大麻は世界各地で栽培でき、110日という短期間でまっすぐに2〜4mに成長する一年草。
害虫や雑草にも強いため、土地や水を汚染する農薬と化学肥料をたくさん必要としない。農薬の空中散布なしでは栽培が難しい綿花(コットン)と比べとても環境にやさしい。
●幅広い産業利用が可能。麻の茎に含まれているセルロースを原料として自然に土に分解するプラスチックが生産できる。石油からできるプラスチックの場合には土に分解されず、また燃焼するとダイオキシンなどが含まれている有毒ガスが発生する可能性がある。その他には住宅用の建築素材、紙、化粧品の原料などに使われはじめている。大麻からできる製品の数は2万5000種類にもなる。
●健康食品として優れている。麻の実(ヘンプの種子)は、畑の肉といわれる大豆に次いでタンパク質が多く、必須脂肪酸やビタミンがバランスよく含まれている。そのため、心筋梗塞やアレルギー疾患などを予防・改善する食べ物として見直されている。以上のことが簡単に挙げられる。

※2:産業用ヘンプ
大麻の幻覚成分(THC)を抜いた品種を産業用ヘンプという。ドラッグであるマリファナと区別するために、環境保護などのフィールドでは、ただ単に「ヘンプ」と言ったときはこの産業用ヘンプを指す場合が多い。

※3:バイオ・ディーゼル
ヘンプ油などの植物油をエステル化してバイオ・ディーゼルとしてディーゼル・カーを駆動させることができる。ディーゼル車は、地球温暖化の原因となるCO2の排出量がガソリン車に比べて圧倒的に少ない。ディーゼル車の普及なしには、京都議定書の基準をクリアできないとも言われている。ヨーロッパでは2005年までに車の市場の半分はディーゼル車に代わるとも言われており、ディーゼル・ハイブリッド・カーの開発も始まっている。

※4:エコ・エコノミー
環境学者レスター・ブラウンが提唱する目指すべき未来の経済社会。現在、70円のガソリンと400円のヘンプオイルではコストが高いと感じるかもしれない。が、70円のガソリン代には未来に起こる健康被害の医療費、破壊された自然の修復、温暖化防止のための費用は含まれていない。残りは未来の子供の世代へつけとなる。

※5:バナナ・ペーパー
ゴミとして大量廃棄されていたバナナの「茎」から紙を作り普及する取り組みが始まっている。

※6:フェア・トレード
「自由貿易」より「公正貿易」を求める運動のこと。発展途上国の有機栽培食品や手工芸品などを、公正な価格で取引し、仕事づくりや技術支援もする。世界のNGO(非政府組織)を中心に繰り広げられている。先進国による搾取、環境破壊などの弊害をもたらすグローバリゼーションへの反省から生まれた。

※7:リユースとリフューズ
誰もができるエコ実践として、リデュース(ゴミの減量)・リユース(再利用)・リサイクル(再資源化)・リターン(再生資源の活用)・リフューズ(ゴミになる物の拒絶)の5Rがある。一番ラジカルなのは、リフューズ。ゴミになりそうなものは買わない。ボイコットするという消費者運動で、企業にとってはこれが一番痛い。

※8:マイ箸
窪塚は外出時に割り箸を使わずにすむようにマイ箸を持参している。ヘンプの茎を使用した携帯用の箸だ。

※9:タスマニアの森林伐採
タスマニアでは毎年2万2000ha(東京23区の面積の約35%)の天然林が伐採されており、そのうち81%は日本の紙となる。そこでは何百年もかけて育った原生林を伐採。太い木を切ったあと、残った細い木を空からナパーム弾を落として焼きつくす。森が焼かれてしまうので小動物は新しく出る芽や、若い木を食べようとするが、その後の植林のために毒入りのニンジンにより、大量に殺される。タスマニアだけでも毒物が毎年800万トンまかれるという。

※10:セヴァン・スズキ
1979年生まれ、日系カナダ人の環境保護活動家。環境保護のキャンペーン「ROR」をおこなっている。掲載当時、日本では1450人がこのキャンペーンに参加していた。窪塚のメッセージの核になる部分は「自分をなりたたせている命の循環を敬い、大切にし、生態系の和を守ること」「民主主義と社会的公正と平和の文化をつくること」「資源の消費を控え、環境への負荷を減らすこと」というセヴァン・スズキと共鳴するところが大きい。

※11:地球サミット
1992年6月ブラジル、リオ・デ・ジャネイロで行われた「環境と開発に関する国連会議」。各国の政府代表とNGO団体が集まり環境問題や南北問題などを論じた。当時、12歳の少女だったセヴァン・スズキのスピーチは今でも伝説になっている。そのスピーチは、「直し方がわからないものをこれ以上壊しつづけるのはやめてください!」というメッセージでしめくくられる。

※12:オーガニック
最低3年間は、農薬や化学肥料を使わずにつくられた野菜や料理のこと。化学的に合成された農薬による農業は一時的には収量があがる反面、農薬をくり返し使用することで、土や水を汚染し、生態系を破壊する。結果的には土壌の生命力を奪い、収穫のたびに土壌の状態を悪化させる。一方、オーガニックの畑では、土壌を消耗することがないので毎年の農業のサイクルによって、土壌が肥えていく。

※13:愛流ちゃん
平成15年10月3日午後8時4分、2915gの元気な男の子が誕生しました、母子共に絶好調です。ていうか最高ですっていうかっていう。いきなり親バカフルスロットルの窪塚より。
みんなで愛のポジティブヴァイブスをつないでいこう、感謝。和。(子供の誕生を報告する公式WEBサイトのメッセージより)


【第4回】窪塚洋介 「真理」に触れた体験を語る(2003年12月収録)に続く

窪塚洋介 (くぼづか・ようすけ)
俳優・アーティスト。1979年5月7日生まれ。神奈川県横須賀市出身。1995年に俳優デビューし、映画を中心に舞台でも活躍。2002年『GO』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を最年少で受賞。2017年にはマーティン・スコセッシ監督作『Silence-沈黙-』でハリウッドデビューを果たし、BBC×Netflix London連続ドラマ『Giri/Haji』にも出演するなど、海外にも積極的に進出。レゲエDeeJay“卍LINE”として音楽活動を行う他に、モデル、映像監督、カメラマン、執筆など幅広く活動中。
Netflixにて『Giri/Haji』独占配信中。

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