こんなときだし、ゲームでもしませんか?僕が選んだ最高のゲームベスト10(川田十夢)

2020.2.24

DSの拡張現実的な3作品について

まずは『タイムホロウ〜奪われた過去を求めて〜』。ニンテンドーDSのタイトルで、タッチパネル部分の使い方が非常におもしろい。主人公は過去を変える力を秘めた、謎のホロウペンを手に入れる。現在進行形で見舞われているトラブルの原因、事象の起点となる空間をペンで囲うと、過去の時間へ戻ることができる。いわば過去修正型アドベンチャー。作者のさじ加減によってどうにかなるミステリーが多いなかで、これは設定的に誤魔化しが利かない。脚本が見事。

『Scribblenauts』は、書き込んだ単語のオブジェクトが登場する、自由度の高いゲーム。たとえば、少し離れた場所に好きな女の子がいる。さて、なんでしょう。が、このゲームにおけるステージの考え方。とにかく自由。「airplane」と書いて飛行機を出現させて迎えに行くもよし。「ship」と書いて船を登場させるもよし。ただし、よくステージを観察してから動かないと、途中にある火の海にあっけなくやられたりもする。

『ゴーストトリック』は、かつて『逆転裁判』シリーズを作ったディレクター巧舟さんが作ったニンテンドーDSのタイトル。主人公が死んでしまうところからスタート、霊魂となって物に宿り、生きた者たちに示唆を与えながら、自分が死んでしまった理由を探索する。これもタッチパネル部分の使い方が上手、指向性を持ったオブジェクトを、ひと筆書きのようにいかにつなぐかが鍵となる。

PS4のコントローラー越しに世界旅行が楽しめる3タイトル

『Horizon Zero Dawn』は、人類の文明が崩壊したあとの世界を描いている。動物を模した機械生命体が闊歩しており、人間は狩猟生活に逆戻り。主人公は、限られた資源でもある動物を狩りながら、自らの出生と世界の秘密に迫る。時間を制御したり、ホロ技術越しに過去の文明が滅びるヒントを得たり、設定の中にも普通にARが登場する。記憶装置としてのARの有用性を、奇しくもゲームが実証している。オランダのゲームスタジオならではの、透明感に満ちた美しいビジュアルに心奪われる。機械動物たちの、剥き出しとなった真っ青なプラスティック状の血管、そして血液に当たる蛍光色のブレイズが、メカニック造形の豊かさと設計の緻密さを物語っている。

『Life is Strange』は、いわゆるバタフライエフェクトがテーマとなっている。蝶が羽ばたく程度の微々たる撹乱が、遠く離れた場所で竜巻を生み出すかもしれない。何気ない会話のちょっとした言葉のチョイスから、主人公を取り巻く状況が変化してゆく。フランスのゲームスタジオということもあり、フランス映画のような肌触りのストーリーテリング。物事の重要度、重さ、軽さを内面から揺るがす。ディティール重視の丁寧な作り。

『Grand Theft Auto V』は、まさにアメリカ。トランプ政権が生まれて、なおも政局を維持しつづけている理由がわからない人は、このゲームをやるといい。理屈ではなく、プレイ感覚として理解できる。複数の登場人物はもれなく下衆、最下層の暮らしのなかでやむなく犯罪に走ることになる。金に目が眩んで、友人を裏切り、下衆の極みとなるか。首の皮一枚つながった良心を最後まで保ちつづけられるか。どんな映画も、小説も、描いてこなかった民主主義のリアルな側面を、当事者となってプレイできる。最も恐るべき狂人、トレバーに残った最後の良心は、刺青に刻まれている。

ここで文字数いっぱい。続きはまた次回。日本が世界に誇る二大天才、小島秀夫と名越稔洋にまだ触れていない。脳内オートセーブ機能を駆使して、つづく。

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川田十夢

(かわだ・とむ) 1976年生まれ。新しい本『拡張現実的』が発売中、開発者。AR三兄弟。公私ともに長男。毎週金曜日20時からJ-WAVE 『INNOVATION WORLD』が放送中、『WIRED』で毎号連載。『AR三兄弟の素晴らしきこの世界 vol.2』が7月30日に放送決定。音楽はトリプルファイ..

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