『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を“父殺し”で考察 星一徹から碇ゲンドウへ

2021.4.3

葛城ミサトに『宇宙戦艦ヤマト』を想起する

こうした過程を経て、『シン・エヴァ』のゲンドウは最終的に、ずっとできなかった「断念」をするに至るのである。

『シン・エヴァ』ではシンジに対して、ゲンドウ以外にも、親的なポジションを担うキャラクターが登場している。それが葛城ミサトだ。

アスカの「母親」という言葉でブリッジして、ミサトのアップのカットへとつなぐくだりもあるが、ミサトの言動を見ると単に「母親」とは言い切れない。むしろシンジを受け入れ、その行動をあと押しする過程で「包含の原理」と「切断の原理」の両方を拮抗するかたちで持っている存在として描かれている。これはこれまで『エヴァンゲリオン』シリーズの中ではなかったことで、本作における加持リョウジの不在と、それによる「断念」が彼女を変えたと、想像してもよいかもしれない。

特に個人的には、ラストのアクションにおけるミサトの働きは『宇宙戦艦ヤマト』及び『宇宙戦艦ヤマト 完結編』に登場するヤマト艦長、沖田十三の存在を思い出させるものがあった。いうまでもなく沖田艦長は、『ヤマト』の主人公・古代進にとって、精神的な父親ともいうべき存在である。

『EMOTION the Best 宇宙戦艦ヤマト 完結編』DVD/バンダイビジュアル
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女神のような「包含の原理」の体現者のユイに対し、(おそらく「断念」を経て)「包含の原理」と「切断の原理」も併せ持つことができる大人となったミサトの存在は、共感できる生身の理想像として魅力的に描かれていた。
 
そんなミサトを見て思い出したことがもうひとつある。それは子供が生まれて、実感できるようになったものがあるということだ。何が実感できるようになったかというと「未来」だ。

自分が生きている時間、それはいつも「現在」だ。自分が小学生のころ憧れた「21世紀の未来」も到来してみると、ただの「現在」に過ぎない。では「「未来」とはなんなのか。それは自分が死んだあと、子供が生きていく時間なのだ。自分は絶対到達することができない時間。でも成長過程を目の当たりにした人間をよすがにして、かすかに想像することだけができる時間。それこそが「未来」なのではないか。成長する子供を見ていると、そういう思いが強まる。

『シン・エヴァ』のラストはそんな子供たちが生きていく未来へとつながっていると感じられた。

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