MISIAによる、紅白史上かつてない「虹色化」
そこからちょうど12年、2019年末の紅白で起きた奇跡が、紅組のトリMISIAさんのステージですよ。
まるっと同じ期間、アタシの大晦日といえば、新宿2丁目のクラブイベント『女装紅白歌合戦』の紅組司会でした。マツコさんやミッツさんが育てた2丁目らしいおフザケ企画で、毎年「全員女装のおじさんなのに何が紅で何が白だよ!」とセルフツッコミをするのも、「本家の勝敗はただのお遊びっぽいのに、女装紅白は負けたチームの女装が全員ギャラ半額って、そこだけガチ過ぎるわ!」と訴えるのもお約束になってる年越し。
そんな2丁目女装紅白の楽屋から、こないだは大御所ババアのみなさんがごっそり消えていたんです。嗚呼、合掌……。って死んでない死んでない。まさに奇跡、本家のほうの紅白ステージに召喚されていたんですよ!
実はMISIAさん、20年前からコンサートのダンサーとして、マーガレットさんやホッシーさんら大御所ドラァグクイーン(ド派手な女装パフォーマー)を起用しています。昨年末も『LIVE PRIDE』と題されたLGBT支援のコンサートを、ユーミンさんや清水ミチコさんらと共に盛り上げてくれている筋金入りのフレンドリー歌姫なんですね。そんな彼女だからこそ、オネエハウスのアゲアゲ定番曲として長く愛されるアルバム曲『INTO THE LIGHT』をメドレーの中に仕込んで、紅白のトリの舞台にクイーンたちを大集合させてくれました。
衣装も手がけるホッシーさん制作の豪華ヘッドドレスで、MISIAさん本人も女装寄りになったクイーン祭! よく観りゃコーラスのお三方も、ミッツさん率いる女装シンガーユニットの「星屑スキャット」だし!
そして、メドレーラストの『Everything』とともにMISIAごしに画面いっぱいのレインボーフラッグ(世界共通の性的少数者のシンボル)が映し出され、会場内のアーティストさんたちも紅白分け隔てなく、みんなが手にしたレインボーの旗を振るという、紅白史上かつてない「虹色化」の瞬間を迎えたのでした。オネエキャラが桃組だと笑うわけでもなく、性同一性障害の切ない一面を伝えるわけでもなく、紅組トリの歌手が堂々と、絵面と表情でハッピーで多様なアイノカタチを見せつけてくれたわけです。
茶化してた人もきーちゃんの偉業にひれ伏すべし
そして忘れちゃいけないのが、自ら「きーちゃん」キャラへの進化を宣言した氷川きよしさん。昨年はコンサートでも、浜崎(あゆみ)さんか『年忘れにっぽんの歌』のお恵ちゃんかってくらいの裾広がりのドレスを着てみたり、ビジュアルのジェンダーレス化が話題となっていたきーちゃん。
そんな彼がまずは紅と白の片身替(かたみがわり)の着物で登場し、(きーちゃんの変化に、みなさん動揺してるかもしれないけど)「大丈夫!大丈夫!」と念押し。と思ったら、ギラギラタイトな衣装に早替えして、巨大ドラゴンに乗って場内を飛び回り、固定観念の「限界突破」を叫びあげてくれました。なんて自信に満ちたトランスフォーム! 一時期は「オセロ中島かと思ったわ〜」なんてニヤけてたいけずなオカマたちも彼の偉業にひれ伏すべし。きーちゃん最高~!
今回の紅白、視聴率が良くなかったというニュースもありましたが、文春の大規模アンケートからは「良かった出場歌手」の1位が氷川きよし、2位がMISIAだったという結果も伝えられました。そう、まさに自由な虹色演出に挑んだおふた方こそ、一般が支持したツートップでもあったんです。アーティストとしては保守層に眉をひそめられるかもしれない、賭けともいえる開き直り表現が、結局「本人も心から楽しんでいるのが伝わる良いステージ」になったってこと。時代を読むセンスという意味でもばっちりの芸能サバイバー!
令和初の紅白は、まさに紅か白かに分けられない時代の幕開けを感じる歴史に残る回でございました。現実の世はまだまだウンザリなニュースも多いけど、着実に進んでることだってあるわ。大丈夫、大丈夫だよぉ〜♪