『魔進戦隊キラメイジャー』こそコロナ禍のヒーローだ。名言「限界は超えないためにある」
春は戦隊シリーズが切り替わる季節。7日から戦隊シリーズ45作記念作品『機界戦隊ゼンカイジャー』が始まるその前に、2月28日に大団円を迎えた『魔進戦隊キラメイジャー』について振り返り、コロナ禍を駆け抜けたヒーローの軌跡を残したい。スポーツライター・オグマナオトが熱い。
戦隊45作の歴史の厚みと“キラメイジャーらしさ”
「宝石」と「乗り物」をモチーフに、単なる武力よりも「輝き(個性)」や「キラメキ」を重視して闇の帝国・ヨドンヘイムと戦った『魔進戦隊キラメイジャー』が最終回を迎えた。
全45話、ほぼ全編を通じてポジティブさと明るさ&エモさ満載でハズレなし。セリフの一つひとつにまで配慮が徹底され、世のちびっ子だけでなく一緒に見る大人であっても毎週満足度の高い戦隊だった。
たとえば、最終回におけるキラメイイエロー/射水為朝の「想定内だ!」のセリフが象徴的だ。
ヨドン皇帝にトドメを刺そうとするキラメイグリーン/瀬奈お嬢様の一撃が破られた際、「想定内だ!」と叫んで次の一手を打った為朝だったが、迂闊なセリフ回しであれば「想定どおり」としてしまってもおかしくない。だが、それでは瀬奈がミスをすることが前提となってしまう。瀬奈がもしミスをした場合でも……と考え尽くした為朝の思慮深さと仲間思いの側面が「想定内」という言葉に表れていた点でも、実にキラメイジャー感満載の最終回だった。
そんな満足度の高い毎週の放送終了後、SNSは感想を語り合う声でいつも賑わいを見せていた。中でも、ネット界隈が一際ざわついたのがエピソード26「アローな武器にしてくれ」。物語展開としても、そして戦隊と切っても切れない玩具販促的にも欠かせないパワーアップ回だ。このエピソードで、リーダーのキラメイレッドが提唱した次の言葉がヒーローとしては衝撃的だった。
《限界は超えないためにある》
限界を超えずにいかにパワーアップを目指すのか。戦隊の歴史にとってもエポックメイキングな回であり、実にキラメイジャーらしい視点、ひいては「キラメイジャーとはどんな戦隊だったのか」を象徴するひと言だったと言える。
なぜ、このフレーズが話題になったのか。それは前作『騎士竜戦隊リュウソウジャー』のリーダー、リュウソウレッド/コウの口癖が「限界は超えるためにある」と真逆だったからだ。余談だが、筆者がリュウソウジャーの出演者たちにインタビューした際も、「この作品は『限界を突破する』がテーマのひとつ」と語ってくれたことを思い出す。
だからといって、キラメイジャーにおける《限界は超えないためにある》宣言は前作批判ではない。そもそも、悪を倒すため、何かを成し遂げるために限界突破を目指す姿は、ヒーローものにおける普遍的なテーマでもあるはずだ。その前提を理解しつつ、番組プロデューサー望月卓はこのエピソード26を終えたあとの番組サイトで、こんな振り返りコメントを残している。
本来は限界は《超える》ためにあると言う方がヒロイズムとしては正統なのかもしれません。でもこれを自分じゃない誰かに強制した場合、令和のこの時代では割と体育会系でパワハラ発言気味に聞こえてくるから不思議なものです。
東映『魔進戦隊キラメイジャー』エピソード27 大ピンチランナー(2020年10月11日放送)より
こうした時代に合わせた新たな視点を取り入れる多様性こそが戦隊45作の歴史の厚みであり、令和時代を示す象徴的なセリフとなったわけだ。制作陣一人ひとりの意識の高さ、そしてメインライターを務めた荒川稔久をはじめとした脚本家陣の意思疎通の徹底に恐れ入る。
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