「ときどき怠けることは、生きていくうえで大切なことです。そして、仕事でも役立つのです」
子どもが風邪をひいて熱を出しても「学校を休むな」という親は当たり前にいる。途中でやめること、休むことはいけない。幼いころからそう刷り込まれてしまっている人は少なくない。
結婚したばかりのころ、妻が熱があるのに会社に行こうとしたことがあった。38度くらいあったとおもう。わたしは「休め」といって会社に電話をかけさせた。
妻は「なんで?」といった。
信じがたいことだが、妻は風邪で会社を休むという発想がなかったのだ。
わたしは長年フリーランスで仕事をしているのだが「疲れたら休む」「眠くなったら寝る」をモットーにしている。
この教えは水木しげるから学んだ。
『水木サンの幸福論』(角川文庫)という本で「幸福の七カ条」という幸せの秘訣を提唱している。
《第一条 成功や栄誉や勝ち負けを目的に、ことを行ってはいけない。
第二条 しないではいられないことをし続けなさい。
第三条 他人との比較ではない、あくまでも自分の楽しさを追求すべし。
第四条 好きの力を信じる。
第五条 才能と収入は別、努力は人を裏切ると心得よ。
第六条 怠け者になりなさい。
第七条 目に見えない世界を信じる》
水木先生は若い漫画家や編集者に「徹夜をするな」と注意した。徹夜は寿命を縮める。
理想の怠け者は猫とつげ義春だといっていた。
《ときどき怠けることは、生きていくうえで大切なことです。そして、仕事でも役立つのです》
ぜひとも令和の日本は「気軽に休める社会」を目指してほしい。途中でやめたり、サボったりすることに寛容な国になってほしい。
わたしはこの理想が実現する日を「365日24時間」願っている。
休み休み歩いたほうが遠くまで行ける。無理はつづかない。自分の身を守れるのは自分だけだ。