朝乃山、富山から111年ぶり大関誕生。強さを支える地元の胸熱スポットとは(ピストン藤井)

2020.4.2


似ていないのをチャラにする、朝乃山への

「頭のてっぺんから適当に彫っていったから、足が短くなって内股にもなってしもうた。ふへへ!」

上半身8割、下半身2割のアンバランス朝乃山像は、一時、朝乃山本人がSNSのアイコンにしていたことで知られる逸品だ。朝乃山と、富山出身の米プロバスケット選手・八村塁、柴田理恵を配した「おらが村のスター☆トーテムポール」も必見である。白星を祈るオリジナル祈願所では、朝乃山が白星を挙げたときのみイルミネーションを点灯。春場所の千秋楽当日も、エロティックなピンクの光が朝乃山の大関昇進を祝福していた。

長谷川さんは朝乃山が出世する度に新作を発表しており、小結に昇進した際は3メートル30センチの巨大な朝乃山モニュメントを作成。この大きさは、コロッケさんのモノマネショーに登場したバルーン状のメガ北島三郎に匹敵する(藤井調べ)。素人のおじさんが手がけたとは思えない出来栄えで、独自のセンスが冴え渡っている。しかし最近は朝乃山の出世スピードが速く、創作が追いつかないという。

朝乃山像の前で、長谷川敏博おじさんと筆者の記念写真

「大関になったんやから、なんか作らんといけんねえ。次々とやる気出さんとのぉ!」

長谷川さんには「自身が描く朝乃山がことごとく似ていない」という致命的ウィークポイントがあるが、朝乃山へのあふれんばかりの愛がそれをチャラにしている。

コロナとの戦いは長期戦になりそうだが、終息に向かった暁には、チビッ子と一緒にこの朝乃山の聖地を訪ねてみてほしい。運よく農作業中の長谷川さんに遭遇できれば、畑の大根を引っこ抜きつつ熱い相撲談義を繰り広げてくれるはずだ。そしてきっと、もっと朝乃山のことが好きになるはずだ。




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ピストン藤井(藤井聡子)

(ふじい・さとこ)1979年、富山市生まれ。東京で雑誌編集者として勤務後、2008年に帰郷。ピストン藤井のペンネームで、富山ならではの個性の強い場所や人を探るライター活動を開始する。2013年にミニコミ『文藝逡巡 別冊 郷土愛バカ一代!』を自費制作。現在4号まで発刊している。2019年10月に本名名..

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