笑いの価値観を刷新できるのは、欽ちゃん(78歳)だけである

2020.3.10

「言葉のおもしろさ」ではなく「普通の言葉」で笑わせる

欽ちゃんは言う。

「今のお笑いは、どれも同じ。言葉のおもしろさで笑わせるお笑い」。

欽ちゃんのお笑いは、動きと間を工夫することによって普通の言葉で笑わせるお笑いだった。これは、欽ちゃんのルーツである、軽演劇にヒントがあるように思う。欽ちゃんの著書『人生後半戦、これでいいの』(ポプラ新書)には軽演劇について以下のような記述がある。

「動きとセリフが別行動する」これが軽演劇の特徴で、何より難しいところです。例えば、役者が舞台に二人いて、腕組みした一人が難しい顔で「お前ちょっと」ってもう一人を呼んだとする。そうするとお客さんのほとんどは、「これから説教が始まるんだ」って予想するじゃない。「こいつ、一体何をしでかしたのかな」って。実際、ほとんどの芝居がそうなる。ところが軽演劇だと、次に出てくるセリフは「ケーキ買ってきてくれる?」とか「お茶入れてくれる?」なの。そこでお客さんは「あれ?違うの?」って意表をつかれて、笑う。(略)「ケーキ買ってきてくれる?」になるとつい腕がほどけたり、頭を下げたり、人にものを頼む動きになる。動きとセリフが一緒になってしまうんです。

『人生後半戦、これでいいの』より
『人生後半戦、これでいいの』(ポプラ新書)
『人生後半戦、これでいいの』

この例もまさに、動きと間によって普通の言葉で笑わせるお笑いだ。

欽ちゃんが今、やりたいことは多分、このような軽演劇のお笑いを現代に復活させることなんだろうと僕は思っている。一度滅びかけた軽演劇のお笑いは、2020年の僕にとても輝かしく、新鮮に響いた。

それはつまり、オーディションの目的は、受かった7名で、軽演劇を復活させるということなのではないだろうか。僕の推測が間違っているかどうか、真相は、もうすぐ明らかになる。

第10回 欽ちゃん公開オーディション on stage

日程:4月18日(土)、19日(日)
時間:14:45開場/15:00開演
会場:アトリエファンファーレ東新宿
出演:萩本欽一+オーディション参加者
チケット料金:2,000円(整理番号付き自由席)

【オーディション参加者も募集中】
・プロアマ、性別、経歴は問いません。
・33歳までの方が対象ですが、33歳以上の方は年をごまかしてご参加ください。(未成年の方は保護者の同意が必要となります)
・笑いが好きで、欽ちゃん最後の挑戦に賛同いただける方。
※詳細は公式サイトでご確認ください。

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神田桂一

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神田桂一

(かんだ・けいいち)1978年、大阪生まれ。ライター/編集者/総合司会。カルチャーからジャーナリズムの領域まで節操なく執筆。著書に『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』シリーズ(宝島社・菊池良と共著)。初の単著(ノンフィクション)をもうすぐ出します。

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