神保町よしもと漫才劇場に所属するお笑い芸人に自身の“出囃子”について聞く連載「大舞台で響かせたい」。今回はエルフが登場。
2022年4月より拠点を東京に移したふたりは現在、それぞれのキャラクターを活かしてバラエティ番組を中心に活躍中。しかし、東京進出を決める際は、結果次第で芸人も辞める覚悟があったという。普段は見せない“芸人”としての熱い想いを聞いた。
エルフ
荒川(あらかわ/1996年8月30日生まれ、大阪府出身)と、はる(1996年6月16日生まれ、山口県出身)によるコンビ。ともにNSC大阪校38期出身。2022年4月に東京進出し、神保町よしもと漫才劇場所属に。『THE W 2022』では決勝に初進出した。
エルフの出囃子/エルフ「ハートおムービング」
──おふたりはご自身の曲を出囃子にされてるんですね。
荒川 そうです。数年前にアーティストさんの弾き語りバトルと芸人のネタバトルを交互にやるみたいなライブがあったんですけど、そのときにそれぞれで優勝した人同士で曲を作りましょうってなって、作らせてもらいました。
──それまでは何を出囃子にしていたんですか?
荒川 そのときはまだ劇場に入れてなかったので、出囃子もなかったんですよ。だから、漫才劇場所属になって、出囃子が使えるってなったときからこの曲を使ってます。
はる 最初はあやまんJAPANの「ぽいぽいぽいぽぽいぽいぽぴー」にしようと思ったんですよ。
荒川 そうだ! でも、支配人に「この曲は『あやまんJAPANです』って言ってから始まるから辞めな」って言われたよね。
はる そうそう。それでどうしようって悩んでたら先輩方から「エルフは自分らの曲あるんやから、それでええやん」って言われて。もう、ずっとこの曲ですね。
荒川 完全に変えるタイミングを失いました。
──変えようと思ってるんですか。
荒川 これにって決まってるわけじゃないんですけど、今すぐにでも変えたいです(笑)。曲中に「ハピネ~ス!」って言うんですけど、今はやってないんで。あと、地方での大きい営業とかで自分らの出囃子をかけてくださることがあるんですけど、やっぱり1000人くらいお客さんがいるところで流れるのは恥ずかしくて。
はる そうなんですよね~。好きな曲ではあるんですけどね。
──「ハピネ~ス!」最近は言ってなかったんですね!
荒川 最後が「ス」で口が小さくなるから、やめたんですよ。それに「ハッシュタ~グ」のほうが浸透している感じもするので。
──まだまだイメージがありました。この曲の制作はどのように行ったんですか。
はる 荒川が歌詞を全部書いて、お相手のバンドさんがそれに合わせて曲を作ってくださいました。
──聴いてるだけで明るくなりますよね。おふたりは普段、どういった曲を聴くんですか。
はる 私は邦ロックとかが多いですね。My Hair is Badさんとかヤングスキニーさんとか好きです。
荒川 私は本当になんでも聴きますね。浜崎あゆみさんとかはめちゃくちゃ好きなんですけど、アイドルの歌もいろいろ聴きますし、ほかにもおとぼけビ〜バ〜さんとか大森靖子さん、竹原ピストルさん、サンボマスターさんとか……。本当になんでもって感じです。
2年で結果を残せなかったら辞めると決めていた
──おふたりは昨年の4月から神保町よしもと所属となりましたが、そもそも東京進出の決め手はなんだったんですか。
荒川 完全に荒川のノリだけです。
──勢いで、という感じですか。
荒川 そうですね。はるに相談したのも決まってからなんで。
はる そんな感じでした。もちろん大阪はめっちゃ好きなんですけど、別に活動する場所はどこでもよかったので、荒川が行くって言うんだったら一緒に行こうと思いました。
──もともと東京進出は考えていたんですか。
荒川 まったくです。ずっと大阪で生きていくと思ってたんで、東京行こうと思ったことに自分でもびっくりしたんですけど、行きたいって思ってるってことは、行ったほうがいいんかなと思って。そういう自分の感覚はすごく信じてるので、少しでも行きたいと思ったら行ったほうがいいんかなと思いました。あと、自分たちが悪いんですけど、大阪時代は舞台数もけっこう少なかったんです。で、東京の同期の子とかから、東京は舞台数も多いって聞いたので、それも決め手として大きいかもしれないです。
──なるほど。でも、本当に勢いだったんですね。
荒川 だけど東京に行くんだったら絶対に結果は残すっていう覚悟で来ました。もとからそんなにズルズル芸人をやるつもりはなかったので、2年以内に賞レースで決勝行けなかったら辞めようと。
──勢いだったとはいえ、そこには強い覚悟もあったんですね。そんななか、東京に来ていかがでしたか?
はる 神保町のオーディションから再スタートだったんです。だから大阪時代のファーストステージをめっちゃ思い出しました。
荒川 大阪のときは劇場に上がるのにけっこう時間がかかったので、めっちゃ懐かしかったんですよ。あたしらのこと知らないお客さんも多いので、あたしらのネタで笑う気ないやん!みたいな感じで、めっちゃ懐かしかったです。でも、そんなときこそ絶対、この子笑かしたいと思うので、めちゃめちゃ上がりました。
はる 大阪時代も落ちて、また1からみたいなの繰り返してたもんね。めっちゃ懐かしかったわ。
──神保町の芸人さんとはすぐに打ち解けたましたか。
荒川 そうですね。でも、大阪の劇場は先輩が多かったんですけど、神保町は私たちのほうが先輩になるので、その感じがめっちゃ新鮮でした。雰囲気も全然違うんですけど、マジで両方最高!って感じです。
──たしかにおふたりとも人見知りとかしなさそうです。
はる 自分は人見知りしちゃうんで、大阪の先輩たちからも「荒川はほっといてもみんなと仲よくなれるけど、はるは危ない」って言われてました。だから、東京来たらこっそり見ててくれたりするんですよ(笑)。だけど神保町のみんながむっちゃ優しくて、向こうから「はるさん!」とか声かけてくれたんで、仲よくなれました。
荒川 あたしは最初、後輩と話す感じが恥ずかったです。18(歳)でNSCに入ったんで、同期の子もみんな年上やったし、ずっと先輩にかわいがってもらってたんで、後輩に挨拶されるのとかが恥ずかしくて。ようやく最近、慣れてきました。
ネタに対してはストイックに
──おふたりにとって、劇場はどんな場所ですか。
はる 劇場にいるとすごい癒やされる感じがします。舞台前とかはもちろん緊張するんですけど、楽屋ではみんなが話しかけてくれるので楽しくて。だから劇場の仕事は癒やしですね。
荒川 ほんとそうです。私、みんなのことがめっちゃ好きなんですよ。東京来るときは2年以内に結果を残すって決めてたのもあったし、そんな知ってる人も多くなかったので、遊ぶ時間もいらん、時間あったら動画撮りたい!みたいに思ってたんですけど、今は本当にみんなと話すのとかが楽しくて。
──ネタを磨くという面ではいかがですか。
荒川 神保町に来てからさらに強くなれてるかもしれないです。いろいろ試せる場でもあるので、自分らって意外とこんなんもできるんやとか気づけて、それがちょっとした自信とかにつながってるので。
はる ネタについては荒川が引っ張ってくれているので、正直、まったくわからないんですけど、コントとかでいろんなキャラをやったりして、発見はありますね。もっといろいろやってみたいなと思います。
──最近は特にコントにも注力されていますよね。エルフさんはどちらかといえば漫才のイメージが強かったんですけど、最近、劇場で観たおふたりのコントが本当におもしろくて!
荒川 えー! 本当ですか! もう今、病んでるんですよ。いろんな賞レースの最中なんで、これで大丈夫かなとか考えすぎて、頭フラフラになっちゃって。そのせいで、舞台で言ったらあかんこととかも言っちゃうんですよ。
はる 大丈夫やって(笑)。
荒川 神保町の人たちも本当にみんなおもろいんで、しんどいんですよ。ほんまに。そのおかげで自分らもがんばろうって思えてるのもあるんですけど。やっぱり今はネタで結果を出して、お仕事をもらってるわけじゃないので、ちゃんと結果も残さないと。
──どんなにネタ以外のお仕事が増えても、舞台には立ち続けたいですか。
荒川 吉本におらしてもらう限りは、大事だなと。こんだけおもしろい人たちに囲まれてたら、あたしが考えることなんてとかも思うんですけど、あきらめるのはまだちょっと早いんで。それにやっぱりお笑いもみんなも大好きだから、がんばろうって思えます。
生まれたときからのギャルと奇人のコンビ?
──荒川さんって、見た目とは裏腹に芯の部分は本当にしっかりされてますよね。そもそもいつから、ギャルなんですか?
荒川 生まれたときからです!
はる 生まれたとき?
荒川 お母さんもめっちゃギャルだし、ずっとまわりの友達もギャルしかおらんかったので。
──生まれながらギャルっていいですね。はるさんは荒川さんと出会うまで、ここまでのギャルに出会ったことは?
はる ギャルはいましたけど、ここまでガッツリ接したギャルは初めてでした(笑)。
──初めて会ったときはどんな印象だったんですか?
はる ほんまに明るいな~と思いましたね。相方探しの会のとき、ほかのひとは「好きな芸人さんは?」「なんの番組が好き?」とかしゃべってるんですけど、ひとりだけ「ウチの妹がかわいくて~」みたいに自分の話をずっとしてたんですよ。そういうところがいいなって思いました。私は自分の意見をしゃべるのがすごい苦手やったんで、声かけたいなって思いました。
荒川 はるは細いなって思ってました。
はる 薄いな(笑)。でも、こんな感じなんで東京進出と同じでコンビ組んだのもわりとノリでした。一回やって、無理やったらやめようって言われたんですけど、それが私的にはすごい気楽で。最初から一生一緒にやっていくぞ!みたいな感じだったらしんどかったんで。
荒川 恋愛とかでも「とりあえず付き合ってみようや」って言うんですよ。あかんかったら、別れたらええやんって思うんで。誰かとずっと一緒におらなあかんって決められてるのとか、めっちゃ苦手で。はるに対してもそんな感じでした。でも、まさかこんな奇人とは思わなくて……。
はる 何が?
荒川 6年目ぐらいから気づき始めたんですけど、そのときにはもう逃げられへんくて。私がアホでした。
はる だから何が(笑)?
荒川 ギャルに苦労させるなよ、ほんとに。
──最近はバラエティ番組などではるさんがフィーチャーされることもありますもんね。
荒川 本当にやばいんですよ。でももう自分だけでは処理できひんから、東野(幸治)さんとかニューヨークさんとかイジってくださる方に全部投げれるように、ずっと準備してんですよ。それこそ、こないだニューヨークさんのYouTubeに出させてもらったときも、はるが「タトゥー入れるなら骨つきお肉のタトゥー入れたい」って言ってた話とかをイジってもらえたんで。実はめっちゃメモしてんねんで!
はる 嫌やわ~。
──ほかのエピソードが聞けるのも楽しみにしています(笑)! では、そろそろ撮影に……。
荒川 え、インタビュー、はるの奇人話で終わんの! 嫌なんやけど!
はる ええやん、別に(笑)。そもそも私からそういう話したわけちゃうし。
荒川 こうやって結局、はるに持ってかれるんですよ。本当に、ギャル困らせないで!
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