竹内唯人『絆』:PR

『オオカミちゃん』では終われない。竹内唯人、コロナ禍でのトラウマを克服した新境地「1対1を2000回繰り返す」

2023.5.19
竹内唯人インタビュー

文=坂井彩花 編集=森田真規


『オオカミちゃんには騙されない』(ABEMA)への出演を経て、アーティストの道を歩み始めた竹内唯人。純粋でまっすぐな素顔は、番組出演から3年が経った今も健在だ。しかし、アーティスト活動を本格化させていこうとした矢先、コロナ禍に突入。不安に押し潰されそうになってもおかしくないものだが、プラスの面もあったと話す。『オオカミちゃんには騙されない』出演後、彼はどのような思いで過ごしてきたのか──。

ユニバーサルミュージック移籍第1弾シングルとして3月に『Fly』を、4月には『絆』をリリースした竹内唯人に、芸能活動を始めたきっかけから現在どのようなマインドで音楽と向き合っているのかまで、心の内を語ってもらった。

素の自分が世間に受け入れられた『オオカミちゃん』

──竹内さんが芸能活動を始められたきっかけを教えてください。

竹内 中学3年生のとき、テレビに出演させていただいたら、3時間の放送でインスタグラムのフォロワーが15万人くらい増えたんです。それがきっかけで、高校生になったとき「事務所に入りませんか?」と声をかけていただきました。そこがインフルエンサーのプロダクションだったのもあり「インスタグラムやSNSを使って仕事をしていきます」と説明を受け、「いいじゃん!」と思って活動を始めました。

──モデルや俳優など、具体的にやりたい活動があったわけではないんですか?

竹内 何か「これをやりたい」ってものがあったわけではなく、単純に遊んだりバイクを改造したりするお金が欲しかったんです(笑)。当時はラーメン屋で働きまくり、月に23万円くらいもらっていたんですよ。でも、シフトは週6で入っていて。「事務所に入ったら週6で働かなくても、23万円もらえるかな?」と父に聞いたら「運がよければ稼げるんじゃない」と言われたので、「じゃあ、やってみようかな」って。

──芸能の仕事がやりたくて事務所に入ったわけではないんですね。

竹内 もともとはラーメン屋になりたかったので、学生時代は「芸能の仕事がしたい」とは1ミリも思ってなかったですね。おいしいラーメンを作りたいとは、今も思ってます(笑)。

──『オオカミちゃんには騙されない』には、どういった経緯で出演されることになったんですか?

竹内 ABEMAの方から「『オオカミちゃんには騙されない』に興味ないですか?」と声をかけていただきました。『オオカミくん(には騙されない)』だと好きなフリをするのは男性だし、オオカミじゃなくても「オオカミだ」って疑われてしまい、ファンの子たちによくない印象を持たれそうで怖かったんです。でも、『オオカミちゃん』ならオオカミ役は女性じゃないですか。それで、「『オオカミちゃん』なら出たいです」とお返事しました。

──番組出演前に望んでいたような反響はありましたか?

竹内 当時は、渋谷とかに行くと街の人の反応が半端なかったですね。「僕のことを知ってくれている人がこんなにいるんだ!」と感動しました。けっこう軽い気持ちで出演したのに、こんなに反響があるんだなって。それに、『オオカミちゃん』に出演していたときの僕は限りなく素だったので、猫を被らなくても世間に受け入れてもらえたのが驚きでした。

ライブへの恐怖を克服した瞬間

──現実的に「音楽活動しよう」となったきっかけは何かあったんですか?

竹内 あるとき、Rude-α君と一緒にカラオケに行ったら「歌、うまいんじゃない?」と言ってくれて。僕にとってRude-α君は『オオカミちゃんに騙されない』の同期でありながら、ラップバトルでめちゃくちゃかっこいいラップを披露していたイケてる人。そんな人に「音楽やれよ」って言われたから、「アーティストやろうかな」とモヤモヤしていたのが、しっかりと「やるぞ!」に変わったんです。

──音楽活動を本格化させようとしていたタイミングでコロナ禍に突入してしまったことは、どのように受け止めていますか?

竹内 どっちもどっちだなって。楽曲をリリースしてすぐコロナ禍に突入してしまったので、本来ならもう少し活動ができたかもしれないとは思います。一方で、そもそも楽曲も少なく、アーティストとして何をしたらいいのかわからないタイミングでもあったので、楽曲制作に力を入れて勉強する時間が取れたのはありがたかったです。

──先の見えない状況下で、不安を覚えることはなかったんですか?

竹内 不安は別になかったんですけど、実は、コロナ渦でライブがトラウマになりそうな時期もありました。出演者の枠が空いているってことで対バンライブに出させてもらったことがあったんですけど、そのときの空気感がちょっと怖くて。

僕のことを知っている人たちは曲を聴きながらうなずいたり体で表してくれていたけど、知らない人ってポカーンとなっちゃうじゃないですか。なおかつ、マスクで顔が覆われていると目しか見えないので、僕のライブにまったく興味がないようにも見えてしまって……。「楽しませよう」と思って全力でライブしてましたけど、あの雰囲気は怖かったですね。普段は緊張しない僕が、プレッシャーに押し潰されそうになっていましたから。

──その恐怖はどうやって克服されたんですか?

竹内 ライブが終わったあとに、「初めてライブを観ました」とか「帰りの電車で曲を聴いていたら、今日やってない○○って曲もかっこよかった」とか、みんながインスタグラムでDMを送ってきてくれるようになって。ステージに立っていると1人で2000人に向かい合っているような気がしてしまうけど、「1対1を2000回繰り返せばいいんだ」と思えたんですよね。その結果として、少しでも「あの人かっこよかった」と思ってもらえたら幸せだなって。それに気づけてからは、ライブで気持ちも乗り始めました。

以前はステージを左右に行ったり来たりしがちで、お客さんのことを見られなかったんです。でも今では、つまらなそうにしている人とも目を合わせられるようになりました。自分が「怖い」と思ってライブをしていたら、お客さんが楽しめるはずがないって考えに変わったんです。それからライブもすごく楽しくなりました。

竹内唯人
竹内唯人

歌詞の意味がいろんなシーンにリンクする新曲『絆』

──今はいいマインドで身の回りのことと向き合えていそうですね。

竹内 今までで一番いい精神状態です。以前だと、決まりそうな仕事を逃してしまったときにへこみがちだったんですけど、最近は「次をがんばろう!」とすぐに切り替えられるようになりました。基本的にネガティブなときってあまりないんですが、今の俺はマジでヤバいです。ポジティブ過ぎて……とにかくポジティブなんですよ(笑)。

──ポジティブとネガティブ、このふたつの感情だと音楽制作のモチベーションになるのはどちらですか?

竹内 ポジティブだと思います。それこそ『絆』はネガティブな雰囲気もあるので、トラックをもらったときに、どういうふうに作ったらいいか全然わからなくて。「こういうニュアンスの曲が欲しいです」とお伝えして、歌詞とメロディをお任せしたんです。いざでき上がった曲を聴いたときには、「こういう表現ができるんだ」ってすごく勉強になりました。

──具体的にはどのような点が勉強になったんですか?

竹内 僕は、わりとまっすぐに曲を書くタイプなんですよ。一方で作詞作曲をしてくださったCarlos K.さんは、いろんな場所や情景、人にリンクするような歌詞やメロディを書かれる方で。一曲の中に幅を作ることができるのはさすがだと思いましたし、僕も勉強したいと思いました。

──『絆』のリリースから少し経ちましたが、反響はいかがですか?

竹内 今まで僕のことをフォローしていただけの方からも、「この曲を聴いて、すごく元気が出ました」と初めてDMをいただけて。それに、これまでファンの子から「今までの曲で一番いい」と言っていただいたことがなかったんですけど、『絆』はめっちゃそう言ってもらえたので、とてもうれしかったですね。

──どんなシチュエーションで『絆』を聴いてほしいですか?

竹内 まず家を出ていくときに聴いて、「すごくいい曲だな」と思いながら仕事をがんばってもらって、帰り道では自分が大きなステージに立っているような気持ちで聴いてほしいです。僕はそうやってバラードを聴くのが、すごく好きなんですよ。そうすると、歌詞の意味をゆっくり頭で理解しながら聴けるので。何回も聴いているうちに、日常にリンクしてグッとくるタイミングがあるんじゃないかな。

竹内唯人「絆」Official MV

“チーム竹内”で大きなことを成し遂げたい

──現時点では、どのようなことが音楽面での課題としてありますか?

竹内 実際のところ、課題しかないですよ。話し始めたら「それもだ!」って、たくさん出てくる気がします(笑)。でも今は、ひとつの課題に向き合うというより、いろんなことをがんばろうと思っています。楽曲を通して僕がどんな人なのか伝えていく必要があるし、もちろんほかの仕事もがんばらないといけない。

今の事務所に入ってから、仕事のモチベーションがかなり上がっているんですよ。これまでは「失敗しても、どうせ次があるでしょ」と楽観的に捉えている面もあったんですけど、最近だと「一つひとつの仕事を大事にしなきゃ」って気持ちが強くなっていて。先へ進んでいくためには、目の前にあることをひとつずつ、しっかりやっていかないとダメだなって感じています。

──これからどのような曲をやっていきたいか、決まっていますか?

竹内 今年リリースする楽曲は『絆』や『Fly』の軸で広げていきたいと考えています。「From Now On feat. Novel Core」や「Wonderland」をやっていたころの竹内唯人が、今っぽく進化して戻ってくるイメージですかね。

僕のファンはバラードがすごく好きみたいで。「MIRAI (feat. $HOR1 WINBOY)」がきっかけで興味を持ってくれる子が多いんですけど、僕の曲を聴いていくとだんだん「バラードがいい」ってなるみたいなんですよ。

竹内唯人「Fly」Official MV

──音楽で表現したいことが定まってきたんですね。

竹内 去年までは「こんな曲もやってみよう」みたいな感じだったんですが、それはちょっと違うかなって思ってます。とはいっても、常に今やっている音楽が、今一番やりたい音楽ではあるので。楽曲を作るまでにたくさん話し合って、新しい気持ちで楽曲を作っていきたいですね。

──では最後に、これから成し遂げたい夢を教えてください。

竹内 Zeppツアーに立ちたいとかCDを売りたいとか、いろいろ目標はありますけど、今のチームで大きなことをやりたいですね。今のシーンで「これってすごい!」と思ってもらえることを、“チーム竹内”で成し遂げたいと思います。

竹内唯人、『Fly』『絆』2カ月連続配信リリース

竹内唯人『Fly』
竹内唯人『Fly』

『Fly』
リリース日:2023年3月20日
視聴はこちら

竹内唯人『絆』
竹内唯人『絆』

『絆』
リリース日:2023年4月24日
視聴はこちら

竹内唯人

竹内唯人
(たけうち・ゆいと)2001年生まれ、東京都出身。2019年にABEMAの恋愛リアリティショー『オオカミちゃんには騙されない』に出演し、スタイリッシュなビジュアルと気さくなキャラクターとのギャップが同世代から人気を集める。同年10月にLINE RECORDSよりデジタルシングル『Only Me』でアーティストデビュー。2021年4月にリリースした「MIRAI (feat. $HOR1 WINBOY)」がTikTokで話題となり、2021年7月にはMajor 1st Digital Single『After the rain』をリリース。2023年にはユニバーサルミュージックへ移籍し、3月から2カ月連続で『Fly』『絆』を配信リリースした。


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坂井彩花

(さかい・あやか)1991年、群馬県生まれ。ライター、キュレーター。ライブハウス、楽器屋販売員を経験の後、2017年にフリーランスとして独立。『Rolling Stone Japan Web』『Billboard JAPAN』『Real Sound』などで記事を執筆。エンタテインメントとカルチャーが..

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