2大会ぶり4度目。コンビ大喜利王決定戦『AUN』において、高校サッカーなら青森山田ばりの強さを見せつけてまたも真空ジェシカが優勝した。優勝記念である本特集の出演も2020年から数えて当然4度目になるが、その間に2度の『M-1グランプリ』決勝進出を果たすなど、大喜利王者は芸人としての格も上げ続けている。今回、そんな真空ジェシカが対談相手に選んだのはケビンス。第5回『AUN』にも出場し、2010年代から大喜利界隈でも鎬を削ってきた伯仲の実力派コンビに大喜利の話を聞いてみたい。
現代の大喜利強者たちは当時から光を放っていた。『大喜利千景』、『転脳児杯』、『大喜利天下一武道会』……2010年代に界隈を彩った大喜利の現場を『AUN』という最新のライブと比較しながら振り返りたい。
※この記事は『クイック・ジャパン』vol.165に掲載のインタビューを転載したものです。
大喜利ライブにも種類があって
──2大会ぶり4度目の『AUN』優勝おめでとうございます。いよいよ絶対王者の風格が出てきましたね。
川北 まーごめですよね。でもアルティメットありがとうでもあるんですよ。
ガク なんにも言ってないなぁ。
川北 毎回、運の積み重ねで勝ってるよな。
ガク うん、運はマジでいい。今回、決勝でママタルトに勝てたのもたぶんタイミングだったしね。
川北 あれは力だけどな。あれは俺が頑張った。めちゃくちゃ数出したから。
ガク たしかにすごく頑張ってくれたけど(笑)。
仁木 やっぱ数ですよね。マジで真空さんが速すぎた。答え考えてるときに「なんか会場沸いてんな」とは思ってたんですよ。そしたらいつの間にか差が開いてた。
コンボイ こっちで一生懸命やってるときに、真空さんのほうからパラ……パラ……って紙のめくれる音が聞こえてくるんですよ。あのスピード、なんかズルしてません?
川北 ズルしてた。
コンボイ ズルしてたんかい!
川北 ありがたい?
コンボイ (大声で)ありがた……ありがたくないですよ。
川北 ありがたくなかったか。
仁木 でも楽しかったし、また出たいです。一答ごとにポイントのつく大喜利って意外と少ないんですよね。判定員がいるのは良い要素なのかも。お客さんが決めるとなると緊張しちゃうし。
川北 あとお客さんが決める形だとたぶん今回の「赤ノ宮翼」みたいな回答ばっかりになる(笑)。
コンボイ 『AUN』はお客さんがめちゃくちゃお笑いの感覚持ってるから、そういう回答めっちゃウケますよね。吉本の劇場でしかやってない僕のサンシャイン坂田さんのモノマネも笑ってもらえました。
川北 あれすごいよな。芸人でもギリわかるかどうかなのに。
仁木 お客さんが本当にわかって笑ってるのか、一回疑う時間はあった(笑)。
川北 正直でいてほしいところはあるよね。お客さん同士で「これわかんないの?」みたいな感じにはならないでほしい。「わかるわけねぇだろ」でもいいんだし。
仁木 点数が競ってるとお客さんもヒートアップするし、決勝は観てて楽しかったです。
川北 観るぶんには楽しいよね。個人的にはバトルじゃない大喜利のほうが好きは好きというか、やってて楽しいのはそっちだけど。
ガク ずっと必死だから楽しめる余白がないもんな。
川北 どんどん答え出して「なんやそれ」ワハハ、みたいなほうが楽しい。前にウケたやつを利用して語尾だけ変えたり、最悪本当に同じのを出したりできるし。
仁木 そういう大喜利って半分くらいは平場なんすよね。そこまで脳みそでガッツリ勝負してる感じは意外となくて。
コンボイ 吉本に『ギリギリプリンス』って大喜利ライブがあって、それも本当に平場って感じですね。僕、第123代チャンピオンなんですけど、回答とは関係ない平場でポイントが溜まって優勝しました。
川北 おぉ! すごいね。優勝したってことはありがたいよねぇ?
コンボイ (大声で)優勝できて、ありがたいね~! こんだけ読んでたらひとりくらい、手作りの電話使ってる人いんのかな~!
仁木 いねぇよ(笑)。いないライン言ったらダメなんだよ。
コンボイ あぁ、ひとりぐらいはいそうなのがいいのか。
川北 たぶん違法だしな。手作りの電話。
手塚の現場に赤塚はハマれない
──ライブのタイプによってウケるポイントも変わりますか?
仁木 めっちゃ違いますね。本当にイメージなんですけど、赤嶺総理がいるライブでは自分はあんまりウケない印象があります。赤嶺総理が悪いとかじゃないんですよ。お客さんがちゃんとした大喜利を見に来てるから、自分はそこにハマる答えを出せないんで。
川北 赤嶺総理は手塚賞なんだよね。
ガク 種類があるんだ(笑)。手塚(治虫)と赤塚(不二夫)みたいな。
川北 でも手塚は赤塚の現場でもそれなりに通用するんだよな。赤塚は手塚の現場だと「なにやってんだ」ってなるけど。
ガク 赤塚側でも赤嶺総理はウケるもんな。
仁木 ちょっとね、ふざけていい現場が多すぎるんでふざけちゃうんですよね。
川北 それでいいとも思ってるしね(笑)。でも仁木くんはいろんなライブ出てるイメージあるわ。
仁木 ネタやらずに大喜利ライブしか出てない時期ありましたね。でもそういうときに真空さんと会った記憶あんまりないんですよ。
川北 一緒だったのは『大喜利千景』くらいだよね。やっぱり基本的に大喜利で競うようなライブはあんまり出ないようにしてた。なんか楽しくなくなっちゃうから。
仁木 いや、本当そうなんですよ。腹立ったりしますからね。
──どんなとき腹が立つんですか?
仁木 これはもう19~20歳くらいの尖ってたころの感覚ですけど、キャラ芸人っぽい人がそれに則った答え出したときとか、すごいストレスでした。
川北 コンボイみたいなやつ?
仁木 コンボイみたいなやつが大きい声で答えるだけみたいなとき、「なんだよこいつ」って。
コンボイ いいだろ別に! その人も楽しくやってたんだ!
川北 バトル系でいったら『大喜利天下一武道会』とかあったよね。
仁木 懐かしいな~! 『天下一』はマジでピリピリしてましたね。点数表で結果がバーッと出るとき、スマブラの映像が公開されたときくらい沸くんですよ。あれはあのときあの現場でしか味わえなかった気がする。K‒PROの『転脳児杯』とか『学校では教えてくれない答え方』もありましたね。
ガク アマチュアの大喜利ライブもいっぱいあったよね。今のほうがプロとアマがごっちゃになってる。
川北 そうね。寺田(寛明)くんがそこの垣根を取っ払って『大喜利千景』を打って。あと、仁木くんがサンミュージックいたとき、事務所の大喜利ライブで「優勝しました」っていっつも真ん中に座ってる写真あげてたよね。
仁木 『大喜利もんすたぁ』、12連覇くらいしてました(笑)。でもこれは人によると思うんですけど、「大喜利の人」って思われるのもちょっと嫌は嫌なんですよ。イジられなくなるから。「仁木くんはね、まぁまぁ」みたいになる。
ガク ふざけてくれないと思われてるんだ。
仁木 損なんですよね。正直、大喜利やる人って暗いイメージあるし、明るくいなきゃいけないなとは思います。明るくて強いのがいちばんいいですよね。
『クイック・ジャパン』vol.165
2023年2月28日(火)より順次発売の『クイック・ジャパン』vol.165は、表紙登場のえなこをはじめとした人気コスプレイヤーが多数在籍するPPエンタープライズ所属のコスプレイヤーへ取材を実施。 華やかなイメージの一方、あまり語られることのない本人たちのストーリーを徹底的に掘り下げた、60ページの読むコスプレイヤー特集となった。
また、今泉力哉監督により実写映画化されたマンガ『ちひろさん』(安田弘之作)の小特集も掲載。そのほか、2021年に『万事快調 オール・グリーンズ』で第28回松本清張賞を受賞した小説家・波木銅による新連載「ニュー・サバービア」がスタート。いつも以上に読む企画がそろった。
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