Kis-My-Ft2藤ヶ谷太輔「逃げることは恥じゃない」愛されるクズを演じて気がついたこと
Kis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔が主演を務める映画『そして僕は途方に暮れる』が1月13日(金)に公開される。2018年に上演された同名タイトルの舞台を原作とした本作は、フリーターの菅原裕一が些細なことをきっかけに恋人、友人、家族から逃亡していく姿を描く。
舞台から引きつづき本作の主演を務めた藤ヶ谷。役と向き合うなかで改めて感じた裕一の魅力、そして自身にとっての大きな決断について聞いた。
藤ヶ谷太輔
(ふじがや・たいすけ)1987年6月25日生まれ、神奈川県出身。Kis-My-Ft2として2011年にデビュー。2022年12月14日にリリースした30枚目のシングル『想花』で通算30作目となるオリコン1位を獲得。個人としてドラマや映画への出演だけではなく、近年では『A-Studio+』(TBS)でMCを務めている。
“逃げる”ことはカッコいい
──約4年の時を経ての映画化ですが、話を聞いたときの心境は?
藤ヶ谷 舞台のとき、稽古が2カ月弱くらいあったんですけど4キロ近く落ちたんですよ。稽古中は常にいっぱいいっぱいだったし、公演が始まってからも毎朝(作・演出の)三浦(大輔)さんからダメ出しがあって、三浦式ダイエットが一番効果あるんじゃないかと思いました(笑)。
でも、それがつらい思い出だったら映画化のお話をいただいても「また、あれ演じるのか……」って気持ちになると思うんですけど、そうは思わなかったんです。むしろ「またできるんだ」って思ってしまって。そういう気持ちにさせる裕一という役の力はすごいなと感じました。
──久しぶりに裕一を演じられていかがでしたか。
藤ヶ谷 また裕一を演じられることはうれしかったんですけど、よくよく考えたらあのつらい現場をもう一回やるんだって思って(笑)。今回も撮影は大変でしたけど、舞台でやった作品が立体化していくのはおもしろかったです。映画ではすごい距離走りましたし。
──藤ヶ谷さんが思う裕一の魅力はどんな部分でしょうか。
藤ヶ谷 一周回って、逃げるかっこよさがありますよね。裕一自身は逃げたくて逃げてるわけじゃない。だけど何か引っかかることがあると、先のことを考えずに衝動的に逃げてしまう。自分みたいなタイプだと逃げたいと思っても、その先行く場所あるかな、連絡つくかなとかいろいろ考えてしまうので、そこを考えずに出られるカッコよさがありますね。
あと、裕一ってクズだなって思うところがたくさんあるのに、不思議と彼には彼女もいるし、親友も友達もいるんですよ。中途半端なクズは嫌われるけど、クズも極めると愛されるんじゃないかって感じました。私がどうにかしなきゃ、守ってあげなきゃって気持ちにさせるというか。
──藤ヶ谷さんも逃げたいと思うことがあるんですね。
藤ヶ谷 いろんなことを考えちゃうから逃げないだけであって、逃げたいなと思うことはあります。でも、戻ってくるときにどういう顔したらいいのかわからないし、まわりになんて言えばいいのかわからないですよね。携帯も依存してるわけじゃないけど、電源を切ってしまったら次に電源を入れるときが怖いです。
撮影での楽しい思い出はない
──裕一は藤ヶ谷さんとはタイプの違う人物像に感じますが、役作りは難しかったですか。
藤ヶ谷 舞台のとき、台本を読んだだけじゃ裕一をつかめなかったんですよ。どうしようかなと思ったので、まずは三浦さんになってみようと思って。三浦さんが自分を投影している役でもあるので、三浦さんを観察して、三浦さんになることを意識するようになってからはやりやすかったです。ってことは三浦さんもクズなのかな(笑)?
──ひげや伸びきった髪などビジュアルも裕一を理解する上でのポイントですよね。
藤ヶ谷 ビジュアルも三浦監督と相談しながら作りました。作品が進むにつれて、げっそりしていくし、髭も伸びていくし、クマも出てくるし。この作品ではメイクもしてないんです。今は男性でも美容に気を遣っている人が増えているから、逆にワイルドでいたらおもしろそうだなと思って。普段から化粧水と乳液くらいしかやらないんですけど。
──裕一の感覚はすぐに取り戻せましたか。
藤ヶ谷 3年ぐらい空いたのでなかなか難しかったですね。序盤の部屋を出ていくシーンでけっこうテイクを重ねたんです。だけど、徐々にチューニングが合っていって、三浦さんの中で「できた」って感じたテイクがあったみたいで。自分ではわからなかったんですけど、そこからは「大丈夫だ」って言ってくださいました。
──映画化にあたり、舞台で演じていてよかったなと思うところはありましたか。
藤ヶ谷 舞台のとき、前日ハマったなって思ったところで狙いに行き過ぎて、その日は失笑しか起きない、みたいなことがあったんです。狙い過ぎると笑ってもらえないので、今回の撮影では狙い過ぎないということを意識しました。舞台と違って映画はその場で反応をもらえないので、舞台をやっていなかったらと考えると怖いですね。
『A-Studio+』で三谷(幸喜)さんに取材させていただいたときに「人を泣かすパターンはものすごいパターンがあるけど、笑わせるのって3パターンくらいしかないんじゃないか」っておっしゃってて。確かに笑っていただくのって難しいなと感じました。
──前田敦子さん、中尾明慶さんと舞台からの共演となる方もいらっしゃいますが、現場の雰囲気はいかがでしたか。
藤ヶ谷 おふたりとは舞台での経験があるから撮影中、安心感はとてもありました。かといって、この映画は楽しいシーンが一個もないので、現場での楽しい思い出は一個もないです(笑)。しかもほとんどの撮影が僕と誰かというシーンばかりで、全員で集合したみたいなことがなかったので、舞台挨拶どうしようと思ってます。僕はみなさんにお会いしているので、僕が回さなきゃとなりそうですよね(笑)。
年々感じる出会いの大切さ
──本作では“人とのつながり”がカギとなりますが、舞台から映画までのこの4年間で世間的にも“人とのつながり”についての考え方は変化しましたね。
藤ヶ谷 そうですね。映画の撮影中もコロナ禍だったので、お芝居以外でみなさんと会話する時間があまりなくて。でも、より本番に集中するというかキャラクターとしてみなさんとしっかり対峙できたと思います。
──作中で裕一は自身の決断によって大きく物語を動かしますが、藤ヶ谷さんは大きな決断をした瞬間はありますか。
藤ヶ谷 『ドン・ジュアン』に出演したことですかね。望海(風斗)さん主演の『ドン・ジュアン』も観させていただいてたので、お話をいただいたときに「全然できないな」って感じて、お断りしようと思ったんです。むしろお断りしないと失礼になるかなと。だから、演出の生田(大和)さんのところに僕はお断りするために行ったんですけど、そのとき「僕と一緒に冒険に出ませんか」と口説かれて、最終的にこの人とだったらやっていけるかもと思って出演を決めました。でも、この作品で表現することのおもしろさやミュージカルならではのパワーを感じたし、今でも連絡を取るくらい大切なカンパニーもできたので、あのとき挑戦を決めてよかったです。
──生田さんとの出会いが藤ヶ谷さんにとっては大きな出来事だったんですね。
藤ヶ谷 出会いは年々大事になってますね。『A-Studio+』もお話をいただいたときは「なんで俺なのかな?」って思ったんですけど、そこで(笑福亭)鶴瓶さんと出会って、鶴瓶さんの人間力を学ばせてもらってます。あと、取材でいろいろな方にお会いするようになって、俺は人が好きなんだなと思いました。怖がらず一歩踏み出すことで得られることってたくさんあるんだなって30超えてから感じてます。
──これまでに逃げてしまった経験はありますか。
藤ヶ谷 何年か前に中居(正広)さんにゴルフに誘っていただいて行ったんですけど、それ以来クラブは握ってないです(笑)。中居さんはアメと鞭の使い分けが上手なので、1対1のときは優しく教えてくれるのに、ほかに人がいると「ここで入れないとスターじゃないぞ」とか言ってくるんですよ。で、その状況で外しちゃって。「どんまい」とかもなく、シーンとなっちゃったのが怖くて、それ以来ゴルフからは逃げてます(笑)。
──その状況は怖いですね……。でも、逃げるのは悪いことばかりじゃないですよね。
藤ヶ谷 僕自身もひと昔前は逃げることは恥だと思ってたんですけど、今は恥だとは思わないですね。すぐにはできないけど準備したらできるようになることもあるじゃないですか。だからそのときは一度逃げて、準備して自信をつけてから戦うのもありなんじゃないかなと年を重ねるなかで気がつきました。本当につらいときは逃げるべきだとも思います。
-
『そして僕は途方に暮れる』
2023年1月13日(金)公開
藤ヶ谷太輔、前田敦子、中尾明慶、毎熊克哉、野村周平、香里奈、原田美枝子、豊川悦司
脚本・監督:三浦大輔
原作:シアターコクーン「そして僕は途方に暮れる」(作・演出 三浦大輔)
音楽:内橋和久
エンディング曲:大澤誉志幸「そして僕は途方に暮れる」
製作:映画「そして僕は途方に暮れる」製作委員会
制作プロダクション:アミューズ 映像企画製作部 デジタル・フロンティア
企画製作・配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2022 映画『そして僕は途方に暮れる』製作委員会
関連記事
-
-
サバ番出演、K-POPへの憧れ、両親へのプレゼン…それぞれの道を歩んだ5人が、新ガールズグループ・UN1CONになるまで
UN1CON「A.R.T.」:PR