TOMOO「オセロ」:PR

TOMOOが語る、“普遍”的な音楽に託した想い「笑うこともできなかった自分を救ってくれた、秘密基地みたいな音楽を作りたい」

2022.8.5
TOMOO

文=天野史彬 撮影=SEIYA FUJII(W inc.) 編集=森田真規
ヘアメイク=YOUCA スタイリスト=Minoru Sugahara


Official髭男dismの藤原聡やVaundy、マカロニえんぴつのはっとりらが絶賛した楽曲「Ginger」のMV再生回数がYouTubeで170万回(2022年8月3日時点)を超えるなど、今、最も注目されているシンガーソングライターのひとり、TOMOO。8月3日、そんな彼女が、デジタルシングル「オセロ」でポニーキャニオン内のレーベル「IRORI Records」よりメジャーデビューを果たした。

QJWeb初登場となる本インタビューでは、「音楽を作って残すことって、『人が人と生きている』こと、そのものだと思っている」と語るTOMOOに、「オセロ」に込めた想い、“普遍”や“ポップス”をキーワードに音楽との向き合い方について話してもらった。

TOMOO - Ginger 【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

普遍的なことは、がんばれば伝わる

──8月3日に配信リリースされた「オセロ」がメジャーデビュー第1弾楽曲ということで、今まさに環境が目まぐるしく変わっている最中かと思いますが、実感としてはいかがですか?

TOMOO そうですね……制作にしろ、ラジオにしろ、こういうインタビューにしろ、人とお話をする機会が増えたんですよ。そもそも私は人としゃべるのがあまり得意じゃないっていうところから曲を書くことがスタートしているんですけど、この数カ月間デビューの準備をしていくなかで、人と接することの希望を感じられるようにもなったし、やっぱり難しさもあるし、どっちもあるっていう感じで。

ただ、活動を始めてもう10年になるんですけど、音楽活動の入口に立ったときに想像していたメジャーデビューって、すっごく怖いことだったんですよね。イメージ的には「ロケット発射!」みたいな(笑)。自分がロケットで、空を飛んだことなんてないのに飛ばされる、みたいなイメージだったんです。で、「あとはがんばって〜」みたいな(笑)。

──なるほど(笑)。

TOMOO でも、これから何を感じるかはわからないですけど、今の時点で思うのは、「これはロケット発射ではないな」って。それよりも、人。ひたすら、人。人と人だなって感じています。たとえば、街中で音楽が流れるのって、無邪気に音楽を聴いているだけだと、ただの“現象”だと思っちゃうじゃないですか。でも、そういうこともすべて、一人ひとりの間に会話があって成り立っていて。前は「デビュー」っていう漠然とした言葉を、大きな事象としてなんとなく遠くから眺めていたけど、今は、すべてが“人”によって成り立っているんだなと実感しています。

──「人と接することの希望と難しさ」というのは、TOMOOさんの中では今まさに、具体的にどう感じられているものなんですか?

TOMOO 希望ということでいうと、あくまでも「作品を作る」という目標があった上での話なんですけど、「話ができる」っていうことですね。(目の前の資料にある自分の写真を見ながら)今、自分の顔を見ていて思い出したんですけど、昔の私って、「自分の考えは誰にも通じない」と思っていたんですよ。音楽にしろなんにしろ、「自分が思っていることは、まあ通じないだろう」というのが前提にあって。でも今は、いっぱいの人と作品を作らせてもらっているから、遅かれ早かれちゃんと伝えないと作品が仕上がらないじゃないですか。そこで「会話をできている」っていうことが、今初めて辿り着いていることなんです。

もちろん人が増えるほどそれぞれ違う好みや価値を持っているわけだから、「ムズいな」って思うんですけど。でも、昔はもっと怖かったんです。「自分の作品が、思っているのと全然違って捉えられるんじゃないか?」とか、「自分が作るものは、自分以外に理解しようがないんじゃないか?」と思っていたから。でも、今はそうは思っていなくて。私は「自分はポップスをやっている」と思っているんですけど、普遍的なことは、がんばれば伝わるんじゃないかと今は思います。作品を作るのって、それぞれが、ただ形を作っているんじゃなくて、何かを表現するっていうことだから。

@tomoo628 TOMOO「オセロ」POWER PLAY ON 31 RADIO STATION!#TOMOO #オセロ #othello ♬ オリジナル楽曲 - TOMOO

普遍というか、真理というか、フィロソフィーを音楽で残したい

──TOMOOさんが「自分はポップスをやっている」と自覚的になったのは、いつごろなんですか?

TOMOO 17歳で活動を始めたときに、大会とかにデモを送ろうとすると、ジャンルを書かなきゃいけないんですよ。そういうときに一応「ポップス」ってことにしていたんですけど、当時は正直よくわかんなかったんですよね。これはロックで、これはポップスで、これはコアな感じで、とかよくわからなかった。ポップスっていうと、10代のころのイメージだと、聴きやすくて、変わったことはやらず、丸い感じで、広場で流れやすくて、誰でもわかる感じの言葉が使われ、あんまり怖くないし、暗くない……みたいな(笑)。

──うん、わかります(笑)。

TOMOO 漠然とそういうイメージだったんですよ。でも、それは嘘だなって思います。最近になって思うのは、私の音楽って、影響を受けているものもけっこうバラバラだし、ごちゃ混ぜだったりするんですけど、「ごちゃ混ぜ≒ポップス」なのかなって。そういうことを、ここ数年で考えるようになりました。

活動を10年やってきて、けっこう曲も作ってきましたけど、自分が作ってきた曲のバリエーションを俯瞰して眺めたときに、「この、いろんなものが混ざり合った交差点みたいなものが、ポップスなのかもしれないな」って思ったんです。だって、「大衆」とはいっても、同じ人がいるわけじゃないから。いろんな人がいて、大衆じゃないですか。だからある意味、いろんなものが混ざっているのって、大衆的なんじゃないかって。なので、ここ1〜2年くらいですかね、「自分がやっているのはポップスなのかな」と思ったのは。

──もうちょっと伺いたいのですが、なぜ、TOMOOさんは「ごちゃ混ぜな音楽≒ポップス」というかたちの表現を求めたんだと思いますか?

TOMOO ええ、なんでだろう……。ひとつのジャンルの音楽を聴いてきたわけではないっていうのはあると思います。スタートは2〜3歳ころに聴いたジブリやディズニーの音楽で、小学生のころは『Mステ(ミュージックステーション/テレビ朝日)』に出てくる人たちとか、アニメの主題歌とか、いわゆるJ-POPを聴いてきたし、もっと遡るとクラシックをやっていたり、学校の音楽の時間に習う音楽にも触れてきたし。中学は暗い気持ちの青春時代だったんですけど、先輩の好きな音楽に憧れてエヴァネッセンスを聴くようになったり、高校では人に勧められて洋楽を聴くようになり……聴く音楽が転々としてきたっていうのはあるんですけど。でも、なんで自分はポップスなんだろう……? ごめんなさい、今考えながらしゃべってます。めっちゃすごい問いにぶち当たってる(笑)。

──(笑)。

TOMOO ……でも、まだ全然途上なんですけど、音楽でやりたいことはあって。私が歌っていることって、そんな大規模な景色ではないんですけど、ただ、曲として残したいと思うのは、普遍的なものというか、真理というか……言葉にするのは難しいんですけど。なんというか、「きっと同じことを思う人もいるであろう」っていうフィロソフィーみたいなもの。そのフィロソフィーを音楽で残したい、みたいな気持ちがあって。それがあるから、最近は「ポップス」という言葉に肯定的になっているんだと思うんです。

──「フィロソフィーを残す」ということが、TOMOOさんの中では「ポップス」と結びついているんですね。

TOMOO 私が好きな音楽って、「人がそこにいる」って感じるものだなと思うんですよね。私、中学生で音楽を作り出したころは、日常的に感じる感情で一番大きいのが“寂しい”だったんですけど、そういうときにも聴くことができた音楽とか声って、「そこに、その人がいる」っていう感じがしたんです。本当に生身のその人が、音の向こうにいる感じがして。それが気持ちのシェルターとか秘密基地みたいになってくれるような感覚があった。友達とまではいかないけど、「人がそこにいる」って感じられることが救いだったんです。なので、自分もそうなりたいと思います。

人の気持ちが内に内にこもってしまって、だんだん、寒くなっていってしまうような精神状態のときに、人は人に手を握られたら正気になると思うんですよ。その“正気さ”を、音の向こうで渡せるアーティストになりたい。それは、自分がほかの人の曲を聴いて、そう思ったことがあるから。自分がもらったものは、自分も違う人にあげられるものだと思うので。

TOMOO

すり鉢状の武道館でライブがしたい

──たとえば、「売れたい」とか、「あの会場でライブがしたい」とか、そういった野心は、今TOMOOさんの中にどれくらいあるんですか?

TOMOO 野心……? そうですね……でも、17歳くらいのころから、「目標はなんですか?」みたいなことを聞かれるのが得意じゃなかったんですよ。私、野心があまりないんですよね。さっき言ったような、「残したいもの」みたいな望みはあるんですけど、勝ち負けとか、自分が大きくなることに対してのハングリーさを持てないことがコンプレックスだったんです。

でも、コンテストに出ると絶対にそういうことを聞かれるし、まわりの人たちは野心がいっぱいある感じだったのに、私はぼやぼやしていて。それで「私の音楽への気持ちは弱いのかな」って思ったりしたこともあったんですけど……でも、今の実感としては、武道館でライブをしたいんですよね。……って、ここに辿り着くまでに前置き長過ぎますよね(笑)。

──いやいや(笑)。でも、「武道館に立ちたい」という思いはあるんですね。

TOMOO 今素直に思っていることだし、「ためらうくらいなら言えばいいじゃん」って思ったので、言いました(笑)。でも、これは野心とはちょっと違うかもしれない。すり鉢状の会場でライブがしたくて。そのほうが、顔が見えそうだなと思って。

──武道館は、会場の作りがすり鉢状ですもんね。

TOMOO 私、17歳のころにフロアライブをしたことがあって。出場した音楽コンテストでいいところまで行ったのに、みんなの期待を裏切ってボロボロの演奏をしてしまったっていう挫折第1号の経験があったんですけど、そのフロアライブは、同じコンテストに出ていた出場者の人が企画しているライブだったんです。

目線がお客さんと同じか、お客さんのほうがちょっと高いくらいのライブだったんですけど、今まで歌ってきた中で一番、歌っている側と聴いている側に対立がなくて、ハートが溶けている感じがしたんですよね。そこでコンテストに出るきっかけになった曲を歌ったんですけど、その経験が自分にとってひとつの原点になっているんです。すり鉢状の武道館も、イメージとしては、そういうフロアライブの感覚に近いのかなって想像してます。

──なるほど。TOMOOさんにとって理想的なライブは、演者と聴き手が「溶けていく」もの、ということですか。

TOMOO ライブは、聴いてくれる人の心の熱をもらって歌う感じなんです。もとから自分の中にお客さんに対する愛情があるというよりは、歌っているときに熱をもらう感じ。昔はそんなこと感じていなかったんですけどね。昔は成功とか失敗の感覚が強くあったし、それゆえに怖かったし、ライブは試練っていう感じだったんですけど。

TOMOO

「I」から「We」へ。変化していく“私の歌”

──お話を聞いていると、音楽を始められたころと今のTOMOOさんに至るまで少なからず変化してきたことがあるのかなと思うのですが、音楽を10年やられてきて、始めたころと今の自分はけっこう違うと思いますか?

TOMOO う〜ん……暗い心からスタートしているところは変わらずですね。中学のころとかは友達も少なくてめっちゃ暗くて、それで家でずっとピアノを弾いていて。最初はとにかく、悲しいときや寂しいときに曲を書いていたし、今もそういう部分は大きくは変わらないと思うんですけど、でも、今は明るい面と暗い面をどっちも持つようになった感じはします。

私の曲を聴いてくれる方からすると、今の私のイメージって、「元気な子」だと思うんですよ。「明るい子」だと思われていると思う。それって、17歳のころの自分にとってはあり得ないことなんです。当時は笑うこともできなくて、ただ真剣に弾き語りをしているだけだったので。でも、私自身の中身が変わったのかというと、そうは思えない。どちらも、もともと自分の中にあったものだと思うんですよね。歌を歌い始める前、幼少のころは近所のアパートの子を呼んで、ひとり芝居をしたりしていましたから(笑)。結局、陰陽どっちも自分の中にあったものなんだと思う。それが今は、どっちも表に出てくるようになったのかなって。

──先ほど「人がそこにいる」と感じる音楽を作りたい、とおっしゃっていましたけど、自分の音楽を聴く人のことは、曲を作るときにどのくらい意識したり、想定したりするものですか?

TOMOO 最初から聴いてくれる人のことを考えたり、意識したりして曲は作らないです。まずは自分の中で、目に留まった瞬間とか、心に刻まれるような瞬間があって、それをひとつの手がかりにして曲作りはスタートするんですけど、聴いている人の存在は、作ったり歌ったりしていくなかで、ぼんやりイメージされていくような感じです。曲を書いている最中に考えていることは、自分の半径数メートルのことに終始しているなと思います。でも、だんだんと「I=私」から離れていくというか、実感として、「あんな人やこんな人」の歌にもなっていくというか……。

──「I」でありながら、「We」でもあるような?

TOMOO そう、そこがちょっと混ざってくるんですよね。「混ざるって何?」って感じだと思うんですけど、でも本当に、ライブで歌ったりしているとそういう感じになるんです。

TOMOO

生きることを“祝福”する、それが音楽の得意技

TOMOO - オセロ (Official Audio)

──新曲「オセロ」は、TOMOOさんにとってどのような曲ですか?

TOMOO メジャーデビューもするし、自然とこれまでの10年間を振り返るタイミングがあって。10年がひと巡りだとするなら、そのひと巡りの中での、あのときの誰かとの軋轢、あのときのふがいなさ、あのときの悲しかったこと、キツかったこと、あのときの許せなかった自分のこと……いろんなことがあって。そういうことが、ある瞬間に……私は歌っている最中が多いんですけど、ふわっと脳内に立ち昇ってくることがあるんです。

そういうときって、嫌な記憶で終わった人との関係も、くるっとひっくり返って温かかった側面が見えたりするんですよね。当時、その状況下にいたときは否定的に思っていたことが、今、なんらかの瞬間を迎えたことによって、捉え直されたり、違う側面が見えたりすることがあって。

──それこそオセロのように、過去の意味合いがひっくり返る瞬間というか。

TOMOO そう、それは自分に限った話ではなくて、私のそばにいた人の苦しかったことや、どうすることもできなかったことも、いつか、何かの先で、ひっくり返る。それは「かき消す」とか「なかったことにする」ということでもなく、事実は変わらないまま、意味が変わる瞬間ってあるんじゃないかと思うんです。

私は、自分の人生の何かを「くるっとさせたい」という気持ちもあるし、それだけじゃなくて、私の音楽を聴いてくれる人や、私を支えてくれる人、私と仲違いしてバイバイした人……全部を、光の浴びているところでくるっとさせたい。その「くるっと翻す」ことが、私の願いというか、私が音楽に期待していることだなって思うんです。

──音楽を聴いていて、自分が生きてきた、生きているということを、祝福できるような、そういう瞬間に出会うことはあるなって僕も思います。

TOMOO ああ〜、「祝福」っていい表現ですね。音楽は世界を変えられるか、変えられないか論争ってずっとあるし、「結局、無駄じゃん」と思う人もいるかもしれないけど、やっぱり、心のことなので、音楽って。それが音楽の得意技じゃんって、最近は思うんです。

──今日のお話の前半で、TOMOOさんは「普遍」という言葉を使われていたと思うんですけど、この言葉は今のTOMOOさんにとって、どういったイメージやニュアンスを持つものなのかを、最後に改めて教えていただけますか。

TOMOO 人は人と生きるように作られていると思うんですけど、音楽を作って残すことって、「人が人と生きている」こと、そのものだと思っていて。人間同士わからないことは多いし、家族とか、恋人とか、近い人でもわからずじまいのことは多いけど、でも、「ここだけは」っていうもの、「ここだけは通じている」っていう核みたいなものが、“普遍”なのかなって思います。

音楽って、作った人が死んじゃったあとも聴かれるし、時空を超えちゃっているんですよ。そういう意味では、死んでも残るし、ケンカ別れしても残る。いい人か悪い人かも関係ない。距離や時空も超えて、人が人と生きるための信じていい真心みたいなもの……ですかね、“普遍”は。自分は“寂しい”からスタートしているから、人と生きたいんですね、たぶん。「普遍っぽいものを残したい」っていう望みの根源は、そういうところから来ている気がします。

TOMOO メジャー1stデジタルシングル「オセロ」

リリース日:2022年8月3日
配信URL
https://lnk.to/otthelo
YouTube(Official Audio)
https://youtu.be/nvQJgkLLjyE

TOMOO「オセロ」コメント
オセロは、タイトルの通りボードゲームの「オセロ」を1つのモチーフにしています。
黒と白が表裏で一つになってできているオセロは、たとえばずっと黒、黒、黒…と続いていても、1つの白で一気に裏返ります。
生きていくなかでも、ネガティブな過去や性質をなかったことのように消そうとするのではなくて、オセロの白の裏には黒が残っているように、存在はしているまま、照らされ見える面が変わったなら…という願いを込めました。
サウンド面では、前作に続いて、mabanuaさんに編曲していただきました。
“暗さ”と“明るさ”、“ゴツゴツした質感”と“華”など、相反するような要素が同居した、歌詞ともシンクロしたサウンドに仕上げていただきました。ぜひ沢山聴いていただけたら嬉しいです。

TOMOOプロフィール
(ともお)1995年生まれ、東京都出身。シンガーソングライター。6歳よりピアノを始め、中学生のころからオリジナル曲の制作をスタート。高校時代にはYAMAHA主催の『The 6th Music Revolution』ジャパンファイナルに進出。大学進学後、本格的に音楽活動を開始し、2022年8月3日にデジタルシングル「オセロ」でメジャーデビューを果たす。

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Written by

天野史彬

(あまの・ふみあき)ライター。1987年生まれ、東京都在住。雑誌編集を経て、2012年よりフリーランスでの活動を開始。音楽関係の記事を中心に多方面で執筆中。