表現できるすべてをやりきれば解散なのか?
──ところで、BiSHがなくなるかもしれないということを考えたりしますか?
アイナ 全然しますよ! 女の子が6人もいれば、ひとりが子どもを産んで辞めるみたいな可能性もあるじゃないですか? あとみんな変わり者だから脱走して地元に帰る可能性だってある(笑)。
──(笑)。そうはいってもBiSHを続けたい気持ちはあるんじゃないですか?
アイナ 私自身、年々やり続けていくことが大切だと思うようになっているので、ずっとやりたいです。でもメンバーのひとりが「表現できるすべてのことをやりきりました、もうできません」ってなったら「わかった。じゃあ辞めよう」って言うかもしれない。もうやりきったって言われたら、それ以上はない気がしていて。
──その子だけ抜けてグループを続けていく選択肢はない?
アイナ 私は今の6人のうちの誰かひとりが欠けたらBiSHって言えないと思っていて。今年5年目なんですけど、この前初めてモモカンが休んだ状態でライブをしたとき、完全系じゃないなと思っちゃった。考えが甘いかもしれないし、それでもやれって言われるかもしれないんですけど。
──それだけ替えのきかないメンバー6人だと。
アイナ 唯一無二だってまわりが言うくらいまだ売れていないし、すべてやりきってはいないと思うんですけど、私個人としては唯一無二の存在だと思っていますね。
──アイナさんにとって、BiSHでやり遂げたと思うときってどんなときなんでしょうね。
アイナ ほかの5人全員の夢を全部叶えたときですかね。全員のやりたい意見や案をステージでしっかり出せて、それを観たお客さんも納得してくれたとき。個人的な活動でも、もしモモカンが作家として有名になりたい夢があったら、それを叶えていない状態で解散は考えられないですね。
──たとえばアイナさんが結婚をして家族を持ちながら、BiSHの活動を両立させたい気持ちはありますか。
アイナ 今はあまり考えられないですね。刹那的な美しさってあるじゃないですか? 綺麗だなと思う瞬間がメンバーを見ていてもあるので、それを大切にするならば家族は別にいらないかな。でも私も人間なので変わると思います。
──世間ではBiSHの存在はどんどん大きくなっています。お客さんが求めるものと、BiSHとしてやりたいことに、これからズレが出てくる可能性もなくはないですよね。
アイナ もしファンの人が喜ぶ音楽を作り続けて、媚びることが自分の仕事なのであれば、私はそれは辞めたいですね。でも今はそうじゃないし、松隈(ケンタ)さんの作る音楽も、渡辺(淳之介)さんの紡ぐ言葉も、メンバーの持っている個性も、すべて好きでやっているし媚びてはないと思うので、しっかりこのまま精進するしかないです。
誰にも言えなかったこと「空っぽになる心」
──アイナさんにとっては、ダンスと歌で精進していく。ダンスという表現で大きいテーマがあるとしたら、それはなんでしょう。
アイナ 「生」と「死」と「愛」ですかね。死んじゃったら、会いたい人にも会えないから。身をもってそれを実感したことがあって。そこから生と死についてはすごく考えるようになりました。
──そこに連なっている「愛」とはどういうものなんでしょう。
アイナ みんな死んだら同じ形の骨になるのに、生きている間に好きという感情が生まれて、恋愛でも家族でもこの人“だから”好きと強く思うじゃないですか。でも死んだら一緒なんですよ。死後の世界はわからないから、生きている間しか「愛」は感じられないじゃないですか。そう考えたときに、「生」と「死」と「愛」は全部リンクするんじゃないかなと思ったんです。
──ダンスの意味に納得しました。これまで何度も取材してきましたけど、そこまで話してくれることはめずらしいですね。
アイナ あまり言わないですね。
──今まで自分の中で思っていても、言わないようにしていたということ?
アイナ 言わなかったです。読んできた本とか、本当のことを誰にも言ったことがなくて。今も言っていないんですけど(笑)。それは恥ずかしいからで。アホな振りしているほうが楽だなって思っちゃうところはある。そこが自分の弱いところですね。根底にある本とか考え方とかはあまり言わない。それ以外は言うんですけど。
──ダンスと歌から読み取ってということかもしれないですね。
アイナ これもあまり言ったことがないんですけど、ひとつ理由があって。小学生のときに先生に呼び出されて、悩みがあったら話しなさいってときに、自分の悩みを言っちゃったんですよ。
それで心が軽くなった瞬間、自分の中の大切な何かが抜けちゃった気がして。そのときから空っぽになる心が怖くて、人に本当の悩みを言えなくなっちゃったんです。そういう悩みを昇華できるのが昔からダンスで、10年以上経ったときに、私はもしかしたら悩みは人には言わず、自分の中でダンスで表現することがいいんじゃないかと思って、本当の真剣な話とかは言わなくなりました。
そのせいで人と話すのがすごい苦手になっちゃったんです。それで嘘ばっかりついていた時代がありましたね。それこそメンバーにも嘘ばっかり言っていたり(笑)。自分と相手の間に膜を張っちゃって、その上に嘘を重ねちゃうみたいな。
──それは今も変わらずですか?
アイナ 今は嘘はつかなくなりました。それは止めようと思って。自分のことを言えないだけだったんですけど、嘘をつくのはよくないし、表現できる場所があるから。そういう意味でも私にとってダンスはすごく大切なものです。
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