結成20周年の2020年に回るはずだった全国ツアーがコロナ禍で延期となった笑い飯。21周年となる2021年、改めて「20+1周年」として4年ぶりに各地で単独ライブを開催している。21年目は今何を考え、どのように漫才に取り組んでいるのか。笑い飯の西田幸治と哲夫のふたりに、今の『M-1グランプリ』について、気になる若手についても聞いた。
昔とは若手との距離感が変わった
——おふたりは今年で芸歴21年ですが、あらためてこれまでを振り返ってみて、どのように感じていますか?
哲夫 老けたなあと思いますねえ。もう50歳が見えてきましたからね。
——老けたというのは、日常生活でもあるかもしれませんが、漫才をやっていて感じることもありますか?
哲夫 若いころは「若いのにこんな感じでしゃべってたらあかんかな」と思ってたのが、だんだん落ち着きが出てきて、しゃべり方が合ってきたりとかね。題材も、若いうちに偉そうなんをやってもそぐわなかったりしますからね。……まあ僕ら若いころだいぶ偉そうやったと思いますけど。なんかそういうのんが年相応になってきてる感じはしますね。
——ではむしろ歳を重ねて漫才がいろんな面でしっくりくるように?
哲夫 うん。でも一方で子供な部分もあるんですけど。大人になれない部分もええ感じで残しながら、でも大人っぽいことを言うても別にバチ当たらんようになりましたね。
——西田さんはいかがですか?
西田 まわりの芸人仲間とか、やってることがあんまり変わってないので「もう20年経ったんか」という感覚ですね。若手の子らとの距離もそんなに離れてないですし。でも別に、デビュー数年のおもしろい子らとしゃべれたりするのはありがたいことですけどね。自分らが若いころ、こんな芸歴離れてる先輩方とようしゃべらんかったよなあ、と思ったりしますね。
——それは時代もあるんでしょうか。
西田 ですかねえ。昔は芸歴20年超えた人らと日常的にライブで接することなかったかもしれませんね。僕ら、いまだに若手に混じってゲームコーナー出てたりしますからね。
哲夫 僕もずっと若い人らが好きやししゃべりたいんで、偉ぶらないように気をつけてますね。自分に弟がいなかったからですかね、弟みたいな子らが好きなんですよ(笑)。
若い子らがアドバイスを取り入れないのもおもしろい
——笑い飯のおふたりには、それこそ今くらいの時期になると特に若手のみなさん、後輩のみなさんからアドバイスや意見を求められることも多いと思いますが。
哲夫 おもろい子らは、自信があるから僕らに聞いても聞かんでもええとこまで行かはる。でも毎回全然ええとこまで行かれへんような子とかにいろいろ聞かれることもあるんですよ。で、そういう子らにちょこっとアドバイスしても取り入れてくれない。そういうのんはおもしろく見てますね。
——おもしろく。
哲夫 言っても取り入れない子らが「2回戦また落ちた」とか言って反省してる。その子らと話すのはなんか充実したものがあります。「こいつ、いつになったら売れる体質になるんやろ」と思いながら(笑)。
——その方たちはアドバイスを取り入れないけれど、哲夫さんは親身になっていろいろ伝えるわけですよね。
哲夫 そうですそうです。まあ取り入れるかどうかは別にいいんですよ。やっぱり本人のやりたいことがあってこの世界に来てるわけですから、それが一番大事やと思うし。
——西田さんも後輩からアドバイスを求められることがあると思いますが。
西田 たまにありますけど、もう僕は「わからん」としか言わないですね。「一回しか落ちてないから、お前らの気持ちはわからん」としか。
——たしかにそうですね。第1回大会以外、優勝された第10回大会まで、すべて決勝進出している。
西田 だから、何回も決勝に出たことあるような子らが改めて「すごいですね」と言ってくれることはあって、そんなんは「わかってくれるか」と思うことはありますけどね。いやでも、賞レース引退した側から現役を見ると、やっぱりいいなあ、やってるなあ、と思いますけどね。
——誰よりも決勝を経験した身として、最近の『M-1』についてはどう思われますか?
哲夫 最初の何年かは、会場の空気が厳か過ぎてお客さんも緊張して、トップバッターがウケにくい時期がありましたけど、第1期の途中からはわりとお客さんも笑えるような雰囲気になったと思いますね。あとは最近、波がまた増えてきたなと思います。以前は「ここが大きい波かな」と思ったところがずば抜けてた。ここ数年は「一番大きい波がもうここで来たんか」と思ってたらまた大きい波来て、最後まだここでも波来るか、という感覚。
——波が増えている。
哲夫 全体的にめっちゃおもしろくなってる、ということだと思います。
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