しまだあや「恥ずかしい」をやっつけちゃうと、大事にしていることまでやっつけちゃう

2021.3.6

アルバムを見返したらボブ・サップみたいな5人と

——今まさにプロジェクトが動きそうなところ恐縮ですが、しまださんと藤江さんは、もともとどこで知り合ったんでしょう?

しまだ 前職でトークイベントを企画したときに、藤江さんにオファーしたのが最初です。『ねほりんぱほりん』に込めてらっしゃる思いに、とても興味があったので。

藤江 しまださん、初めて電話で話したときからすごくフレンドリーで。現地でお会いしたときも「わたし藤江さんめっちゃ好き! 絶対また会う」って、普通そういうこと言わないじゃないですか。

しまだ わたしそういうの出ちゃうんですよ。

藤江 でも、初対面なのにその距離感が不快じゃなかったんです。それがすごく印象に残っていて、きっと島田さんのことがみんな好きになるんだろうな、と思いました。

しまだ え、めっちゃうれしい。泣く……。

しまだ「めっちゃ嬉しい。泣く……」
しまだ「めっちゃうれしい。泣く……」

——しまださんのnoteにも、初対面の人にすぐ打ち解けている様子が書かれていますよね。「日常を3日間タイムループさせたら、74歳に娘ができた」※とか。

※神楽坂で3日間過ごすことになり、毎日同じ行動をしてみた様子を書いたエッセイ。喫茶店や写真館、美容院のおじさんおばさんたちと、どんどん仲よくなっていく

しまだ はい、良くも悪くも、人との壁がない人生を送ってますね(笑)。 母に聞いても「昔からこうだよ」って言われます。

昔NHKで『にこにこぷん』って子供番組があったじゃないですか。そのコンサートに行ったとき、子供たちは客席で手遊びとかするんですけど、わたしは舞台に上がっちゃって(笑)。基本的に「壁」という概念がわかってなかったみたいで。

海外に行っても現地の人に日本語でしゃべりつづけて、でもなんか仲よくなってたらしいです。アルバムを見返したら、ボブ・サップみたいな5人に囲まれて、「イエ〜イ!」ってしてる写真があって。「どういう状況……?」って、自分でもびっくりしました。

——それはすごい……。でも「良くも悪くも」ということは、人との距離が近過ぎて、失敗したこともあるということですか?

しまだ あります。失敗のほうが多かったです。

中学高校のときは、男子にも女子にも先生にも、けっこうフレンドリーに接していたんですが、それが媚びっぽく見えたり、よく思わない人もいましたし。

社会人になっても、しばらくはよく叱られましたよ。会議中に出てしまう「わ〜!」「へ〜!」みたいな感じを受け入れてくださる方もいれば、「なんだふざけてるのか」という方もいらっしゃって。

今はもう、ちゃんと学習しました。TPOや、相手の温度感に合わせた相づちとか……心地よいと感じる距離感は、一人ひとり違うんだということを、心得ていきたいな、と。

「私だけかもしれない」を、私だけで考えない

——藤江さんから見た「しまだあや」について、もう少し聞かせてもらってもいいですか?

藤江 人との間に壁はないし、奈良で自宅も開放されているし※、なんかこう……新しい生き物みたいだなと思います(笑)。

※しまださんは自宅の94%を一般開放しており、地元の大学生や高校生が自由に出入りできる環境で暮らしています

藤江 そうそう、そんな暮らしをしているのに、大変な悩みがあるんですよね。

しまだ そうなんです。うんちを出すのが恥ずかし過ぎて、全然出せないんです。

——……うんちが?

しまだ 大に限った話なんですけど、人の気配を感じると出せないんです。誰しも恥ずかしいと感じる話だと思うんですが、ちょっとそのレベルが異常みたいで。

藤江 そんな人が自宅を開放しているんですよ。

——ずっと人の気配がしてるじゃないですか。

しまだ あまりに我慢し過ぎて、救急車で運ばれたこともあります。

藤江 心配になるでしょう?

——めちゃくちゃ心配です。どうやって生きてるんです……?

藤江 なので、番組でお話ししてもらうことにしました。『私だけかもしれない講座』(Eテレ)という番組で、3月7日放送予定です。もう収録もすみまして。

しまだ Eテレで番組を作る前に、自分が出ちゃいました(笑)。

——テレビに出演されたことは何度かあったんですか?

しまだ ニュース番組にちょっと映ることはありましたけど、自分がメインで話すなんてほぼ初めてで……。

でも収録では「この人本当に悩んでいるのか?」ってくらい意気揚々と話せたんですよ。スタッフさんもいいリアクションをしてくれるので、あれ? なんかわたし、面白いのかな?って(笑)。

こんなに困っていることを楽しそうにしゃべれた自分がいる、と思えたら、それこそ「便秘が解消した」みたいな感じになりましたね。

帰りのタクシーの中で自分の顔を見たら、温泉で熱いお湯と水風呂に繰り返し入って出たときの顔みたいになってましたし。

——もはやデトックスじゃないですか。

しまだ ホントに! 嘘かと思われるかもしれないですけど、腸の調子もけっこうよくなったりして、こういうの体に出るんやなって。この番組、私が一番得してるんじゃないか?って(笑)。

「私だけかもしれないを、私だけで考えない」って大事なんだなって、思えた収録でした。

しまだ「すごく不思議な感覚でしたね。目の前にあるモニターに、自分にソフトクリームが合成された映像が映ってるんですよ。リアルタイムに合成されているから、自分が首を傾けたらソフトクリームも傾いたりして」(Eテレ『私だけかもしれない講座』より)
しまだ「目の前にあるモニターに、自分にソフトクリームが合成された映像が映ってるんですよ(Eテレ『私だけかもしれない講座』より)

すごく不思議な感覚でしたね。目の前にあるモニターに、自分にソフトクリームが合成された映像が映ってるんですよ。リアルタイムに合成されているから、自分が首を傾けたらソフトクリームも傾いたりして。

私なんだけど私じゃない「ソフトクリームちゃん」と、一緒に番組を作っているみたいでしたね。

ソフトクリームちゃんがしゃべる様子を見ていると「がんばれ!」って気持ちになるし、逆にこちらがソフトクリームちゃんに励まされてるように感じる瞬間もある。

ソフトクリームちゃんは自分なんだけど自分じゃない。つまり自分がしゃべっているのに、“ふたり”で悩みを俯瞰しながら解説してるみたいな……。今までにない感覚でした。

しまだ「一緒に番組を作っているみたいでしたね」
しまだ「一緒に番組を作っているみたいでしたね」

——テレビで話すのも、なかなか勇気が必要なテーマではないかと思います。

しまだ 「恥ずかしい」「しんどい」と感じることって、ほかの人より何倍も敏感になるじゃないですか。

それって、自分が大事にしているものを守るための感情だと思うんです。だから「恥ずかしい」をやっつけちゃうと、大事にしていることまでやっつけちゃう。

自分の中の「恥ずかしさくん」とか「恥ずかしさちゃん」に寄り添って、一緒に「どうする?どうする?」って考えるほうが健全なんじゃないかな、と。

『私だけかもしれない講座』でも、「こうやったらどう?」「いい感じかも」と自分を研究した成果を発表しています。

——「恥ずかしさ」との付き合い方を探っていくわけですね。

しまだ これはエッセイを書くことにも通じているんです。エッセイでは自分の過去の記憶を消すんじゃなく、「変換」をするようにしてて。

父との思い出なんかも、100あったら90くらいは、思い出すのがしんどい内容ではあるんです。でも、楽しかった残りの10を仲間にして、90の背景を一緒に考えたり。その研究結果を、作品として出す。そうしたら、90の捉え方が少し変わっていく。いい思い出の割合が、10/100から、60/150になる。

やっつけるんじゃなくて、どう付き合っていくか。わたしの場合は、その答えのひとつがたまたま、エッセイだったんだと思います。

——放送を楽しみにしています。

しまだ わたしも楽しみです! でもどういうふうに観ようかな……。みんなで観る話じゃないけど、ひとりで観るのもなんか怖い(笑)。

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