感覚として「右手で作る」つもりだった

――それぞれの価値観や表現する世界に、近いものがあるかもしれないですね。劇伴はどんなふうに作っていったんですか?
尾崎 初めてのことで、作り方もわからない中で、基本はギターを触りながら、アコースティックギターの単音をベースに考えました。アルペジオを弾いたり、一本のギターの音を組み合わせながら作っていきました。とにかく暇さえあればギターに触っていましたね。
左利きなんですけど、感覚として「右手で作る」つもりでやったんです。今までのように作ってしまったら、作品の邪魔になると思ったし、それだと新たに劇伴に挑戦する意味がない。具体的には、気になる音を作っていって、ある程度たまったらベースの(長谷川)カオナシに渡して、ほかの楽器を打ち込んでもらったり、重ねたり色づけをしてもらったり、新しいメロディを足してもらったりしました。
――「右手で作るつもり」。おもしろいです。
尾崎 だけど結局、iPhoneに録音した、家で録ったような響きや、音質の悪さ、手触りがすごく合っていたので、新しく打ち込んでもそれに勝てなくて。結果的にそのまま形にした曲が多いですね。アコースティックな曲が多いのは、そういう流れがあったからです。
不安や不自由があるのはすごくいいこと
――作曲の過程で発見はありましたか?
尾崎 とにかく、おもしろかったです。普段は感じても絶対使わずに捨ててしまうような感覚を使えた気がします。まだ自分の中にはまったく知らない部屋があるのを見つけたようで、楽しかったです。自分にそういう欲があったことに気づけたというか、改めて、できないことや不安なこと、不自由なことがあるのはすごくいいことだと思いました。
――思い切って引き受けられてよかったですね。
尾崎 劇伴をやるというのは、「クリープハイプが今までにないような曲を作ってきた」というのともまた違ったことだと思うし、それをやったときに、得るものがすごく多かったです。音楽に対してより開けたし、こういうこともやれるんだとわかった。だけど、まだ理想には届かなかったという実感もあるので、これからもいろんなことをやるべきだと気づかせてもらいましたね。広くなった感じがします。
(衣装協力:SPLASH TOY&USEDCLOTHING/GEEK OUT STORE/Pigsty 渋谷神宮前店)
尾崎世界観
1984年生まれ、東京都葛飾区出身。クリープハイプのボーカル、ギター担当。クリープハイプとしては2012年、アルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』でメジャーデビュー。2018年には約4年ぶりとなる2度目の日本武道館公演『クリープハイプのすべて』を開催。同年、9月に5thオリジナルアルバム『泣きたくなるほど嬉しい日々に』を発売。
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『どうにかなる日々』
志村貴子による、様々な恋模様を淡く繊細に描いたオムニバス漫画「どうにかなる日々」を、詩的な映像・音楽演出に定評のある佐藤卓哉監督がアニメ化。 “誰かの恋”を優しく見守り、温かく描くオムニバスショートストーリー集。
原作:志村貴子「どうにかなる日々」/太田出版
監督:佐藤卓哉
出演:花澤香菜、小松未可子、櫻井孝宏ほか
配給:ポニーキャニオン
©志村貴子/太田出版・「どうにかなる日々」製作委員会関連リンク
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