西寺郷太『Funkvision』:PR

西寺郷太が混迷する時代に生み出した『Funkvision』というイメージ。異能なミュージシャンが見通した未来とは

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2020.7.25

頭の中で渦巻いていたプリンスの言葉があと押しに

アルバムのラストに収められている「あの公園で会おう」も印象的だ。フランク・オーシャンを思わせるようなアンビエンス感のあるトラックに乗せてオートチューンで加工された声で優しく歌う、とてもセンチメンタルな1曲になっている。

「『あの公園で会おう』は去年の11月くらいに書いた曲です。僕がすごく世話になった友達のイラストレーターが10年前に結婚したんですけど、当時はちゃんとした結婚式ができなかったそうで、10年の記念にウェディングドレスを着て友達を集めた結婚式をちゃんとしようということになって。
『実は郷太さんに結婚式で1曲歌ってほしい』と言われたんです。普段はあんまりやらないんですよ。しかもそのときは締め切りも目白押しで。最初はカバーを歌おうと思ったんだけれど、曲を選ぶのも難しい。どうせなら新曲を作ろうと思って作ったのがこの曲。実際に結婚式で弾き語りをしたら、そのパーティに集まった女性の来場者の方も、涙を流しながら聴いてくれた。
僕、あんまりそういうキャラじゃないんですよ。弾き語りで泣かせるって、あんまり僕が望んでいた自分の姿じゃなくて。でも、10年に1回くらいはこういうのもいいかなって。で、作ったのは去年だったけれど、明らかに叙情的な曲なので、今回のアルバムのテイストには合わないかなと思って放置していたんです。けれど、最後の最後で入れようということになった」

指針となったのはプリンスの言葉だという。

「2015年のグラミー賞でプリンスが『アルバムって覚えてる? 本や、黒人の命と同じように、アルバムは今も重要だ』と言っていた。その言葉は今もすごく大事な意味を持っていて。特に僕がこのアルバムを作っていた期間は、ずっと頭の中にその言葉が渦巻いていたんです。
その『アルバムって覚えてる?』っていう言葉を思い出したから、この曲を入れようと考えた。プリンスの『PARADE』というアルバムのラストに『Sometimes It Snows In April』という曲があるんですけれど、そういう、アルバムのラストに入るべき曲ってこれなんじゃないかと思ったんです。とは言っても、デモも作ってなかったんで、宮川弾さんとエンジニアの兼重(哲哉)の前で弾き語りで歌ったのを録音してもらって。おそるおそる『どう?』って聞いたら『めっちゃいいです』って言うんで、それをもとに作っていきました。
やっぱり、ちょっと恥ずかしいんですよね。ほかの曲は感情をコントロールしてるんだけど、この曲は実際に今暮らす地元の仲間や、自分の子供たちに向けて書いたからすごくエモーショナルで、子供が成長していくのを見つめる親の視点もある。ただ、結婚式を公園のカフェでやったんで『あの公園で会おう』というタイトルになっているんですけれど、コロナ禍でみんなが集まれなくなった今の状況でこの曲を歌うのはアリなんじゃないかと思って、このアルバムに入れました」

『Funkvision』には、プリンス「When 2 R In Love」とマイケル・ジャクソン「P.Y.T.(Pretty Young Thing)」のカバーが収録されている

こうして稀代の“ベッドルーム・ファンク”に仕上がった本作。『Funkvision』というタイトルのとおり、そこにはビジョン、すなわち未来を見通す洞察力が結実している。そうした資質は、特異なスタンスで活躍してきた西寺郷太というミュージシャンだからこそ獲得してきたものであるのは間違いないだろう。

「極端に研究して音楽に取り組んでいる人は、もちろんたくさんいると思います。ただ僕みたいに、書いたり話したりすることで音楽そのものを好きになってほしい、とアウトプットしてるミュージシャンは少ないと自負しているんですね。
本を書いたり、連載したりするたびに、自分なりにこのアーティストはどういうふうに考えて音楽に接していたのかを思い浮かべるんです。そうやっていろんなアーティストの人生を追体験してアウトプットするのを繰り返してきた。
そういうふうにやってきたことが、音楽家としての自分にも影響していると思っていて。自分が考えてきたことは必ず音になる。特に『Funkvision』はそういうアルバムになったと思っています」

西寺郷太
(にしでら・ごうた)1973年東京生まれ、京都育ち。早稲田大学在学時に小松シゲル(Dr.)、奥田健介(G)と出会い、バンド「NONA REEVES」のシンガー、メイン・ソングライターとして、1997年ワーナーミュージック・ジャパンよりデビュー。以後、音楽プロデューサー、作詞・作曲家としても少年隊、SMAP、V6、YUKI、鈴木雅之、岡村靖幸、Negicco、私立恵比寿中学などの多くの作品、アーティストに携わる。日本屈指の音楽研究家としても知られ、近年では特に80年代音楽の伝承者としてテレビ・ラジオ出演、雑誌連載など精力的に活動。マイケル・ジャクソン、プリンス、ジョージ・マイケルなどの公式ライナーノーツを手がけるほか、執筆した書籍の数々はベストセラーに。代表作に小説『噂のメロディ・メイカー』(扶桑社)、『新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書』『プリンス論』(新潮社)、『始めるノートメソッド』(スモール出版)など。 現在、Spotify公式Podcast『西寺郷太の GOTOWN Podcast』毎週日曜更新。


『アルバムって覚えてる?』プリンスの言葉がずっと頭の中に渦巻いていた――西寺郷太インタビュー(PR)

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