2025年5月に封切られた映画『BADBOYS -THE MOVIE-』での主演、日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』出演などを経て、10月24日公開の最新作の映画『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』では市毛良枝とW主演を務めるに至った豆原一成。
俳優業は、輝かしい光を浴び続ける中で個性をアピールして、常に存在感を示さないといけないグローバルボーイズグループ・JO1とは、“別人になりきる”という真逆の活動だ。そして、活動を始めた当初からその演技力に定評があった「俳優・豆原一成」。
10月10日に発売された『Quick Japan』vol.180では、バックカバー&15ページ特集「俳優・豆原一成(JO1)光を背に、役を宿す」を実施。その特集に掲載された豆原一成ロングインタビューを抜粋し、QJWebオリジナルパート&撮り下ろし写真を加えてお届けする。
豆原一成
(まめはら・いっせい)2002年5月30日生まれ。岡山県出身。2020年3月にデビューしたグローバルボーイズグループ「JO1」のメンバー。グループでも随一の筋トレ好きとして知られている
目次
生の演技の迫力に圧倒された
──俳優としての活動を始めた初期から、豆原さんの演技力は高い評価を得ていましたよね。ご自身としては、なぜ演技の資質が自分にあったと分析していますか?
豆原 僕は自分の演技がうまいと思ったことは一回もないんです。「お芝居をやってみたい」という思いはJO1になったころから少しあったけど、自分にできるかはやってみなくちゃわからないし、「機会があったらとにかく一度やってみたい」という思いでした。
オムニバス映画『半径1メートルの君~上を向いて歩こう~』で初めて演技に挑戦したときは、まだ「お芝居ってなんなんだろう」という感覚で、本質的なところは全然わかっていなかったですね。「これから芝居を続けていこう」という意思もあまりなかったと思います。
──演技への意欲が湧いてきたのはいつごろですか?
豆原 『劇場版 仮面ライダーリバイス バトルファミリア』です。その前に経験したドラマ『ショート・プログラム』(Amazon Prime Video)の撮影が、めちゃくちゃ難しかったんです。撮影は4日間くらいだったけど、自分の中でプレッシャーが大きくて、早朝から夜遅くまで続く撮影にまったく集中できなくて。渡部(亮平)監督からは、「ちゃんと集中しよう!」と怒られていました。
──そうだったんですね。当時、QJで渡部監督に取材させていただいたんですが、監督は豆原さんの演技を「ものすごく安定感がある」と絶賛していました。
豆原 本当ですか? 怒られたことを今でも鮮明に覚えています(笑)。ずっと緊張していて、「何してるの」という短いセリフさえパッと出てこず、「ヤバイ、ヤバイ」と焦っていて。それで「もう芝居はいいかな」と思っていたところに、『バトルファミリア』のお話をいただいたんです。僕は子供のころから『仮面ライダー』が大好きで、いつか出てみたいと思っていたので、「これを断るわけにはいかない」と。
現場では八嶋智人さんや映美くららさんなど、名だたる方々とご一緒させていただいたんですが、自分のシーンがないときに撮影を見学していたら、みなさんのお芝居に「すごいな」と心を持っていかれて。生の演技の迫力に圧倒され、そこからお芝居への意欲がどんどん高まっていきました。

山田裕貴さんの演技に引き込まれる
──そのあとはドラマ『超人間要塞ヒロシ戦記』『お笑いインスパイアドラマ ラフな生活のススメ』(ともにNHK)、日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS)など多数の作品に引っ張りだこで、『BADBOYS -THE MOVIE-』では映画初主演。順風満帆に歩んできましたよね。
豆原 いやいや、全然そんなことはないです。お芝居は奥が深すぎて、今も毎回すごく悩みながら挑んでいます。
──人生の中で影響を受けた、憧れの俳優さんはいますか?
豆原 僕は『仮面ライダー』などのヒーローものが大好きで、それをきっかけにドラマや映画に触れるようになったんですけど、すごく尊敬しているのは山田裕貴さんです。『海賊戦隊ゴーカイジャー』で俳優デビューされて以降もいろんな作品に出演されていますが、主演はもちろんですが、二番手なども担当されていることが多い印象で。そういう立ち位置だからこその演じる難しさがあると思うけど、山田さんの演技にはいつも引き込まれるんです。とてもかっこよくて、役者としてリスペクトしています。
──いつか共演したいですね。
豆原 はい、いつかご一緒できたらうれしいです!
──ちなみに、JO1のメンバーもそれぞれに役者として活躍していますが、ほかのメンバーのお芝居で「この人の演技は自分と違うタイプだな」と感じるのは?
豆原 (川西)拓実君もいろんな作品に出演しているんですけど、自分とはちょっと違うなと感じています。何が違うかはうまく説明できないんですが、拓実君は持ち前のセンスでなんでもうまくやってしまうタイプなので、そこが演技でも光っているなって。感じる能力に長けているからこそ、拓実君にしかできないアウトプットのお芝居になっているなと、いつも見ていて感じます。

プロから教わったコーヒーの淹れ方を奨君に共有
──ケレン味のある芝居やアクションで魅せた『BADBOYS -THE MOVIE-』とは異なり、『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』は人と関わるシーンが大半で、繊細な表現が求められたと思いますが、手応えを感じたシーンはありますか?
豆原 ええと、どこでしょう……難しいですね。撮影現場では、毎日「今日はどうなるんだろう」と思いながら芝居をしていたんです。なので「ここはうまく行けた!」という感覚はあまりなかったかもしれない。自然なお芝居だからこそ、ポイントがすごく小さくたくさんあって、つかみづらかったのかもしれないです。
『BADBOYS』は「今のパンチ決まった!」とか、わかりやすかったんですけど(笑)。毎日プレッシャーを感じていたけど、以前と比べたら、人として少し成長できているのかなと思います。
──座長としての振る舞いを意識することはありましたか?
豆原 今回はベテランの方が多いということもあり、監督も含め、みんなで一歩ずつ着実に作っていくような現場だったんです。自分が率先するというよりは、全員で市毛さんについて行くような感覚がありました。
──背伸びしすぎずにいられたんですね。ちなみにコーヒーを淹れるシーンも多かったですが、けっこう練習されたんですか?
豆原 はい、監修の方に入ってもらって練習をしましたし、キットを借りて、家でも毎朝自分で淹れていました。やっぱり慣れている人の手つきというものがあるので、そこは一つひとつ丁寧に教えていただき、違和感なく見せられるように練習しました。
──“豆原”という名前でこの役に就くのも、なんだか不思議な偶然ですよね。
豆原 そうなんですよ(笑)。それこそ豆の種類もいろいろ勉強させてもらいました。もともとコーヒーは好きなんですけど、普段はペットボトルのものばかり飲んでいるので、自分で豆から挽いてみて、奥深さを感じましたね。JO1リーダーの(與那城)奨君はコーヒーに詳しいので、講習を受けたあとに奨君と話したら「俺もその淹れ方知ってるよ」と言われたり、自分がプロの方に聞いた淹れ方を奨君に共有したりもしました。

いつかチャレンジしてみたい朝ドラや大河ドラマ
──拓磨と文子の温かい交流も印象的な作品ですが、豆原さんとお祖父様、お祖母様との思い出も教えてください。
豆原 親が共働きだったので、僕はずっとおばあちゃんっ子だったんです。おばあちゃんに車で習い事に送ってもらったり、夏にはおばあちゃんちの目の前で花火をやったり。おじいちゃんが竹を切ってきて、庭でそうめん流しをしたこともありました。
そんな感じでおばあちゃん、おじいちゃんとの思い出はたくさんありますし、今もすごく仲がいいです。この前実家に帰ったときも会いに行って、「『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』ぜひ観に行ってね」と伝えました。

──今日お話を聞いていて、出演作も増え、どんどん演技のおもしろさを実感されていることがよく伝わってきたのですが、豆原さんはいつもインタビューで「こうした演技のお仕事も、すべてJO1のため」とお話ししていますよね。とはいえ、「役者としてここまでたどり着きたい」という夢や野望も抱いているのではないですか?
豆原 そうですね。もちろん「こういうお芝居をやってみたいな」「こういう作品に出てみたいな」という思いはあります。「JO1の中でもお芝居といったら豆原一成」と言ってもらえるように、もっとがんばらなきゃいけないとも思っています。でもすべて、グループとしての知名度があるからこそ、自分がこういう経験をさせてもらえているという感覚が前提にあって。
知名度を借りながら自分が役者としてもっと上に行くために、役者の自分とJO1としての自分が刺激し合えたらうれしいです。自分の芝居でJO1に還元できたら最高だし、反対にJO1の力に支えてもらって、豆原一成としていろんな芝居に挑戦できたら理想的ですね。
──日曜劇場にも出演されたので、いつか朝ドラか、大河か、と期待する声も、ファンの方からは聞こえてきます。
豆原 ファンの方はそう言ってくれるんですけど(笑)、いやあ、プレッシャーは大きいですよね。いつかお声をかけていただいたら、もちろんチャレンジしてみたいです!

映画『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』

公開日:2025年10月24日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
出演:豆原一成(JO1)、市毛良枝、酒井美紀、八木莉可子、市川笑三郎、福田歩汰(DXTEEN)、藤田玲、星田英利/長塚京三
監督:中西健二
脚本:まなべゆきこ
音楽:安川午朗
制作プロダクション:PADMA
原案:島田依史子『信用はデパートで売っていない 教え子とともに歩んだ女性の物語』(講談社エディトリアル刊)
原案総責任:島田昌和
配給:ギャガ
(C)2025「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」
バックカバー&15ページ特集「俳優・豆原一成」掲載の『Quick Japan』が発売中

映画『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』(10月24日(金)全国公開)に、市毛良枝とともにW主演を務める豆原一成(JO1)が『Quick Japan』vol.180(10月10日(金)発売)のバックカバー&15ページ特集「俳優・豆原一成(JO1)光を背に、役を宿す」に登場。
さらに特集では、映画『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』の中西健二監督や同作で映画初出演を果たした福田歩汰(DXTEEN)が語る「俳優・豆原一成」の魅力、さらに豆原の過去の出演作の共演者や監督からのコメントも掲載。さまざまな側面から「俳優・豆原一成」に迫る。

強い光を浴びながら個性が求められるグループでの活動とは真逆ともいえる、自分とは異なる役になりきる俳優活動で豆原一成が考えていることとは──。