解散危機から『THE SECOND』決勝へ。吉田たちが漫才師として再生するまでのターニングポイント

2025.9.24
吉田たち

文=鈴木 工 撮影=たまえ。 編集=梅山織愛


結成18年目を迎えた双子漫才師・吉田たち。関西では『ytv漫才新人賞』(2017年)などで優勝し、実力派漫才師として名を馳せるも、なかなか全国区の賞レースでは結果に恵まれなかった。さらにコンビ仲が険悪になり、解散寸前まで追い込まれていた時期もあったという。

それでも舞台に立ち続けていたふたりは2025年、ついに『THE SECOND 〜漫才トーナメント〜』でグランプリファイナルに進出。年間50本以上のネタを作り、現在は『吉田たち東名阪ツアー「たち噺」』を開催中。漫才師としての歩みを止めずに前へ進み続けてきたふたりの再生までのリアルを聞く。

吉田たち
吉田たち(左:こうへい、右:ゆうへい)

18年目、やるしかない現状

こうへい もう200本ぐらい上げてます。正直、ネタというのもおこがましくて。

ゆうへい せっかく作ったし、どこかで昇華させようかと、記録として上げてる感じです。自己満足といいますか。

ゆうへい 去年は50本ぐらいですね。

こうへい でも僕らのスケジュールだったら全然可能なんですよ。やらんかったらもうサボるだけなんで。

こうへい 作らないと不安なのもありますし、たくさん作らないと強いネタができないんで。もうやるしかないという感じでやってます。

こうへい 『THE SECOND 2025』のグランプリファイナルでやらしてもらったネタが「甥っ子がめっちゃ好き」みたいなネタで、ゆうへいが結婚して子供もいるのはすごく助かってますね。そういうテーマが増えることはありがたい。僕はそのとき思ってることを漫才にすることが多くて、最近はもう甥っ子のネタばっかです。

ゆうへい ネタ合わせ……という言葉はあんま使いたくないんですけど、新ネタ下ろすとき、昔ほど合わさんでもなんとなく伝わるようになってきました。

ゆうへい そこまでこだわってはないんですよ。でも、美学といいますか、舞台に出ていってしゃべり出しているファンタジーは崩したくないなと。

吉田たち

辞めるフラグが100本立ったことも

こうへい コロナ禍でお客さんがいなかったんですよ。そこで僕らケンカしたりしてましたから。

ゆうへい 楽しめてなかった感じやな、ほんまに。それで解散の話にもなりました。『M-1』が8年準々決勝止まりで、賞レース終わりのタイミングが一個の区切りかなというのは僕の中ではありましたね。そのときは『THE SECOND』の開催を知る前だったんで。

こうへい あのときは辞めるフラグが100本立ってました。

ゆうへい 状態じゃなくて、本数なんや。

こうへい そうですね。僕らほんまに憧れて前に入ってきて、関西ではいくつか賞をいただいてるのもあって、よけいに打ちひしがれました。せめて敗者復活まで行かせてくれたらネタはあんのに……と思ってたら8年経っちゃいましたね。

ゆうへい 「これ準決勝に行ったやろう?」と思うくらいウケた年もあって、それでも無理で、原因もわからんし、めっちゃしんどかったっすねえ。

こうへい ビクビクですよ。

ゆうへい イヤでしたねえ。『M-1』卒業してからも、ダイタクの結果が気になって準決勝の日はソワソワしてました。

こうへい 決勝行ったらどうなるんやろ?みたいな。

ゆうへい もちろん。できひんくなるボケも出てくるんやろうなあと。

こうへい ダイタクが『M-1』でやったボケが、もともと僕らがやってたボケだったとしても、「それダイタクやってたけどな」になる。それはしんどいなと。

こうへい ホッとしました。そのあと、オンカジ(オンラインカジノ)問題でもう一回ホッとしました。

こうへい それは全然。知り合ってから10年ぐらいの仲やし、めっちゃすごいコンビですし。それこそ『M-1』の準決勝に何度も行ってる後輩だったから、コンプレックスはあったんですよ。今は一緒に何かやったら楽しそうやなと思ってますね。もちろん負ける気はないです。

『上方漫才大賞』奨励賞で風向きが変わった

吉田たち

こうへい ラストイヤーの翌年、『上方漫才大賞』の奨励賞にノミネートしていただいたことですね。それが無理やったらもう辞めてたかもしれないです。

ゆうへい あれはでかかったです。戦ったメンバーも見取り図、なすなかにしさん、ロングコートダディ、ビスケットブラザーズで、「このメンバーで勝てたし、もうちょっとやってええやろ」となりましたね。あれ獲ってなかったらどうなってたんやろうなと思います。

こうへい 奨励賞いただいたとき、仲間からLINEがたくさん届いて、その勢いで久しぶりに僕らの誕生日11月13日にNGK(なんばグランド花月)で単独ライブをしたんです。自分らの集客力だけでは埋まらないんで、メッセンジャー黒田(有)さん、NON STYLE石田(明)さん、アインシュタインさん……先輩や仲間を総動員して満席になった。その打ち上げのとき、「一生この人らと一緒におりたい」と思えたんです。あれは僕の中でターニングポイントですね。

こうへい 第2章が始まった感じがしました。2024年の『THE SECOND』も負けた瞬間、「2025年のために漫才をアホほど作るぞ」とプラスのほうに切り替えられたんですよ。そういう意味でも、奨励賞は大きかったですね。

ゆうへい それはもうちょっと甘やかしてほしいですねえ。劇場出番がもっと欲しくて、漫才さえさせといてもらえたら……と願ってます。それこそ『THE SECOND』の前に初めて1日11ステージ立たせてもらったんですけど、全然いけました。楽しかったですよ。出番が多いのを嫌なことのように書いている芸人のSNS、何あげとんねん!と思います。

いつでも東京進出はしたい

吉田たち

こうへい ショックはもちろんショックです。でもコンビってコンビ間にしかわからないことは絶対にあるので、本人が決めたんやったら、「お疲れさまでした」と言うしかないですね。

ゆうへい ノムちゃん(野村尚平)はほんま多才で、ひとつポジティブに捉えるなら、コンビ活動という枷(かせ)がなくなった今、いろんな方向に“野村尚平”という才能を見せつけたらいいんじゃないかなと思います。解散してから一度飲みに行ったんですよ。しゃべったらね、ほんま普通におもしろいですし、最後の単独もすごかったな……。才能や話術は錆びひんなと感じましたね。1年目からあんなやつやったんで。

河野(良祐)は……アホなんでね。MCとして『ダブルインパクト』の予選を盛り上げすぎて、河野も準決勝行ったという噂が流れるぐらい、大阪では名を馳せてるんですよ。もっともっと回しているところを見られたらいいですね。

ゆうへい まあお互い才能あるふたりなので、勝手にどうにかなると思ってます。ほっといても大丈夫です!

こうへい あれは自然消滅しました。中学生カップルのように……。勢いで数カ所やってみたら、実力も知名度も足りてなかったです。終演後、客席バックにして写真撮ったらスカスカということもあって、あれは恥ずかしかった。

ゆうへい でも、またいつかやりたいですね。全国ツアー。

こうへい 『THE SECOND』優勝してやりたいなと思ってます。いろんな人に漫才見てもらいたいですね。ネタもいっぱいありますし。

こうへい 僕は行きたいです。独り身ですし。最終的には大阪で活動する気はしますけど、全国的に知られるには一回東京行かなあかんのかなと思います。

ゆうへい もちろん行きたいです。行くタイミングはいつが正解やとか、もうないですもんね。結果論やと思うんで。『THE SECOND』優勝したら行こうじゃなくて、その前にもあるかもしれません。だいたい上京って4月ですよね。

ゆうへい 優勝するのはめっちゃむずいでしょうけど、もし例年どおり5月開催で優勝できたとしても、次の4月ってだいぶ先じゃないですか。それこそ単独ツアーで「これは『THE SECOND』行くで」という手応えあったら考えたいです!

吉田たち

『吉田たち東名阪ツアー「たち噺」』
<東京公演>
日時:9月26日(金)開場19:00/開演19:30/終演21:00
会場:ルミネtheよしもと(東京都新宿区新宿3-38-2 ルミネ2 7F)
<大阪公演【吉田たちの生誕】>
日時:11月13日(木)開場19:00/開演19:30/終演21:00
会場:なんばグランド花月(大阪市中央区難波千日前11−6)

料金:前売3,000円/当日3,500円
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鈴木 工

(すずき・たくみ)ライター。雑誌『プレジデント』、『芸人雑誌』など、芸人関係からビジネスまで執筆する。

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