「青春を世界共通言語にしたい」結成10周年、新しい学校のリーダーズが見据える“4人にしか体現できないエンタテインメント”

2025.7.29

文=奈都樹 撮影=上村 窓 編集=菅原史稀


結成10周年を迎えた新しい学校のリーダーズ(以下、AG!)。2021年の世界デビューを境に国内外から引っ張りだことなり、最近でも『MUSIC AWARDS JAPAN 2025』で「最優秀国内ダンスポップアーティスト賞」と「最優秀ダンスパフォーマンス賞」の二冠に輝くなど、その活躍は留まるところを知らない。

そして7月16日にはベストアルバム『新しい学校のすゝめ』を満を持してリリース。『新しい学校の青春部ツアー2025』の来場者とファンクラブ会員からの投票から選曲されたという本作は、グループの歴史が垣間見られる作品となっている。中高生のころから活動を始め、現在は全員が20代となったAG!。セーラー服を衣装に個性と自由ではみ出してきた自称“青春日本代表”の彼女たちが、本作でひと区切りつけた先で目指す新たな“青春”とはなんなのだろうか。

4人に転機をもたらした楽曲

──結成10周年おめでとうございます。活動を振り返っていかがですか?

RIN あっという間ではあったんですけど、思い返せばいろんな出来事がありすぎまして。特にここ2、3年は目まぐるしく進んでいった日々でした。そう考えたらたしかに10年だなとも思いますし、長くもあり、短くもあり……。

全員 (うなずく)

──今回のベストアルバム『新しい学校のすゝめ』は、Disc1「あのころ」とDisc2「このごろ」で分かれていますが、それぞれターニングポイントになった曲はありますか?

SUZUKA 「恋の遮断機 feat.H ZETTRIO」ですね。自分の声質と歌謡曲というジャンルがフィットし始めた時期に、H ZETT Mさんが作ってくださって。それまで歌うことを好きと言いきれなかったし、自分の声にも自信がなかった。

そんななかこの曲に出会って、歌うこと、自分の声を少し好きになることができたんです。

──この曲以降、今のSUZUKAさんの歌声が確立されていくんですね。

SUZUKA この時期ぐらいから自分の声のトーンと楽曲のムードに化学反応が起き始めて。レコーディングに向かうことが楽しみになっていきましたね。

──RINさんはどうですか?

RIN 2曲あって……1曲は「Fly High」です。アルバム『AG! Calling』が出たタイミングあたりから、私のラップパートが定着してきて。自分はこんなにエネルギーのあるラップができるんだなって、新たな発見がありました。ヒップホップカルチャーはもともと好きだったけど自分がやるイメージは全然なかったので。

──なるほど。

RIN あと1曲は「透明ボーイ」かな。高校生のころから、日常的に頭に浮かんだ言葉や情景をメモとしてまとめていたんです。楽曲のデモをいただいたときに、そのメモを活かして歌詞を書くことに挑戦したい!という気持ちが湧き上がり作詞しました。

でき上がった歌詞をみんなに伝えたら、「いいね!」と言ってもらえて、この曲が完成しました。初めてのひとりでの作詞、思い出深い曲ですね。

──KANONさんはどうですか?

KANON 私も「Fly High」かな……『AG! Calling』あたりから4人の歌声の役割が出てきたと感じていて、特に1曲目の「Fly High」にはそれが表れているなと。私とMIZYUがハモリをする場面が増えたりとか、私には柔らかいパートが増えたりして。今の自分にちゃんとマッチしたパートを歌えるようになってきたかなという印象です。

──KANONさんのパフォーマンスには儚さがありますよね。

KANON 本当ですか!    「あのころ」の時代は無我夢中に思いっきりパフォーマンスすることを楽しんでいたんですよね。でも、今の自分は心地よく踊れるというか、無理をしてないというか。素直な感情でパフォーマンスをしているので。そういうところにあるのかな……?

──「あのころ」時代には恋愛の曲もありますが、年齢を重ねていくことで表現が変わることはありましたか?

KANON 私たちの表現って、歌に感情を乗せるだけではなくて、アートとしてどう見せるかも大事にしているんです。だから恋愛感情を表現するというのとはまた違っていて……私なんて殴られてますし(笑)。

──ははは! 「恋ゲバ」のあれは衝撃的でしたね。

KANON あくまで「パフォーマンス」として考えて表現にしているので、自分の人生経験がそこに反映されているとは限らないですね。

──MIZYUさんはどうですか?

MIZYU 「オトナブルー」です。この曲をきっかけに、たくさんの出会いがありました。

音楽が好きだから出会えた方もいれば、SNSやテレビで偶然出会えた方もいて、そこから興味を持ってライブに来てくださる方がグッと増えました。ライブでの景色や環境を進化させてくれた曲です!

──特に、MIZYUさんに影響を与えた出会いはありましたか?

MIZYU 和田アキ子さんにお会いできたことです! 「オトナブルー」は、和田さんの「古い日記」からインスパイアさせていただいてるんですが、歌番組で和田さんと一緒に「オトナブルー」と「古い日記」をマッシュアップして歌う機会があったんです。そんな未来があるなんて考えもしなかったので……。

声を重ねたり、一緒にパフォーマンスできたことが、信じられないというか。夢の遥か先の先にいる……それまでは本当に実在するのか?と思ってしまうほど、和田アキ子さんは偉大な存在なので、共演させていただいたのは印象的でした。

「理性的に爆発しましょう」

──シングル曲で見ていくと「Tokyo Calling」以降からメッセージの方向性が変わったような気がしていて。それまでは学生生活のパーソナルなストーリーが多かったですが、このあたりから外に向けた楽曲が増えていきましたよね。みなさんの中で心境に変化があったのでしょうか。

MIZYU メンバーで真剣に話し合うみたいなことはないんですけど……海外ツアーをやったことで、自分たちが今まで見ていた景色ってすごく狭いんだなって気づいたんですよね。その狭い世界を表現することも好きではあったんですけど、いったんやりきったなという感じもあって。

だからそこにフォーカスしたものを作るというよりは、世界規模での挑戦をイメージして、ミュージックビデオとか、サウンドとか、歌詞にもそれを反映するようにしました。世界規模で、長い目で、広い目で見たときに、自分たちのエネルギーが高まる曲を作りたいって。

──グループとしても個人としても、人生経験を重ねていくなかで視野が広がったということもありますか。

SUZUKA 自分が“ステージ上の番犬”じゃないですけど、お客さんをリードする言葉を伝えたりとか、ボルテージを上げるための犬の叫びのようなことをよくするので。そういった経験をたくさん積んでいったからこそ、ステージに上がるときに自分に頼りがいのある感覚が出てきましたね。そこは結成当時からは、大きく変わったところなんじゃないかなと思います。

──それが楽曲にも反映されているんですね。10年近く前のインタビューを読んでいると、SUZUKAさんはご自身の若さに対して意識的だったように思うのですが、現在20代になってどうですか?

SUZUKA 今はあのころとは違って、理性が出てくるようになりましたね。社会人として13歳から始めたAG!の活動で、今では自分たちの生活も成り立っていて。夢であり、お仕事であり、生活であり。ファンのみんなもいるし。10代のころみたいにがむしゃらに本能だけでなんでもできるやん!っていうのとはわけが違うなと思うようになって。地上波で生放送なんてときもありますし……(笑)。

「理性」と「本能の解放」の両方を大事にしたいと思うようになりましたね。理性とみだらが混ざってパフォーマンスできたら素晴らしいバランスになるんじゃないかなって。メンバーとも「理性的に爆発しましょう」ってよく話しているんです。

“青春日本代表の試合”をやりたい

──では、セーラー服を着てパフォーマンスすることにはどんな意識を持っていますか?

RIN 老若男女問わず、いろんなお客さんがライブでセーラー服を着てくださっているんですよね。それを見て、私たちにとってのアイコニックな衣装になったなと改めて思うようになって。

昔は中高生の私たちが学生の半歩先を行くために着ていたものだったんですけど、今はFrom JapanのATARASHII GAKKO!を象徴するものとしても大事な武器にもなっています。若いからこそではなくて、今が最高という気持ちが青春につながるんだってことを体現するためにも大事な衣装ですね。

MIZYU 私は3人よりも年齢が3つ上で、みんなよりも先に学生じゃなくなったときに、AG!としての活動とプライベートにギャップを感じていた時期もありました。でもそんなときに「世界」がやってきたんですね。なんかもう……そういう小さな悩みとかの次元ではなくなって。

──そうなんですね。

MIZYU セーラー服を着ることで、AG!の歴史として説得力が出ますし、海外でも私たちのことが伝わるんです。今までの悩みよりも、そっちの喜びが圧倒的に勝ったし、パフォーマンスしている上で、自分たちらしくいられるものでもあるので、今はセーラー服を脱ぐっていう考えがなくなりました。

昔はAG!がどうしたら日本で広まるかってことばかりを考えていて、世界っていう可能性さえ感じてなかった。だからセーラー服を着る自分が等身大じゃなくなるときのことを意識していたのかもしれないんですけど、今は等身大っていう概念さえなくなっているので。

──というと?

MIZYU 世界の人たちに何をどう伝えるか、そういうことを考えるようになったんです。最近では白いセーラー服だけじゃなくて、文字が入っていたり、全身赤色だったり、ライブではセーラー服の上に学ランを羽織っている時間もあります。AG!のアートとして、セーラー服を着ている感覚ですね。

──そうしたなかで、今後AG!として表現していきたい「青春」とはどのようなものになるのでしょうか。

SUZUKA 青春部員っていうファンのみんながいて、私たちは青春部の部長なんですね。「青春はエンドレスだ、年齢なんて関係ないから」というのは、部員のみんなが先に体現してくれていて。そんななかで部長にしかできない青春ってなんだろうっていうと、新しい学校のリーダーズで、会社では学べないようなムダを楽しむ精神をどれだけ伝えられるかっていうことなんじゃないかなと思うんです。

あとは、ありのままに生きることって難しいことでもあるけど、それを簡単なものなんだと価値観をシフトチェンジできるような、そういうエンタテインメントを地球上にいるみんなに伝えていきたいなって。それが4人にしかできない青春の物語かなと思っています。

RIN 青春を世界共通言語にしたいですね。青春って翻訳が難しいといわれているんです。でも世界各国を回ると「あなたすでに青春してるよ」って人が本当にたくさんいて。私たちが「青春」を体現して世界共通言語にできたら、より平和で楽しい人生を謳歌できる人々が増えるんじゃないかなと思うんです。

だから青春という概念を伝えていくためにも、この4人が一番青春していたいなって思うし、なによりも健康に、そのとき楽しいと思えることを4人で手を取り合って進んでいきたい。目の前にあることを常に楽しんで、みんなでおもしろがりながらやっていきたいですね。

KANON 結成してから10年間、この4人で続けてこられていることをよく考えるんですけど……毎日一緒にいるのに、毎日本当に楽しくて。もちろん大変なこともあるんですけど、みんなで同じ道を同じ歩幅で全力で走ってこられていることが、なによりもかけがえのない事実だなと思うので。

どんなかたちになっても、どういう道に進むにしても、きっと4人で会話して、4人で進んでいくんだと思うんです。だから自分たちに嘘をつかず、これからもパフォーマンスをしていけたらいいなと思います。

MIZYU 日々、青春に対する感度がどんどん高くなっていて。一つひとつの小さい幸せに気づくって、自分にとってすごく豊かなことだし、それに幸せを共有できる仲間が、いつも横に3人いるっていうのが自分にとってはかけがえのないものなんですよね。その幸せが自分の青春につながっているんです。

だから、この4人と、まわりにいてくださるみなさんと、常に青春を感じて、幸せを感じて、みんなで前向きに走り続けていけたらいいな。

──素敵ですね。

MIZYU あと、いつかスタジアムで応援されるような青春日本代表になれる日が来たらいいな。いつかやりたいですね、青春日本代表の試合。

──……え?

MIZYU いや、私たち結成当時は青春を掲げてなかったんですよ。それからだんだん私たちの中で「毎日青春だね〜私たち青春日本代表じゃね?」みたいに自称するようになって。でもこれからは自称じゃなくて、日本人から“青春日本代表”として認められるような本物になりたいなと!

KANON ライブで試合やってみるのは?

MIZYU あぁ! 選手としてライブに出場するとか? それじゃあ青春部員と戦ったりしたらいいのかな? 騎馬戦とかで? あぁ……やってみたいな……いつかできないかな……。

新しい学校のリーダーズ ベストアルバム『新しい学校のすゝめ』

2025年7月16日(水)発売

結成〜2020年までの楽曲を厳選した「あのころ」と、2021年〜現在までの楽曲が入った「このごろ」のCD2枚、計24曲が各形態に共通して収録。2016年に発表された「学校行けやあ゛」が1曲目を飾り、ライブのみでの披露となっていた「宮尾」が10周年を記念したアニバーサリーバージョンとして待望の音源化。また、彼女たちの世界デビュー楽曲である「NAINAINAI」をはじめ、海外フェスで大きな話題を呼んだ「Tokyo Calling」のほか、新曲「Go Wild」を収録。

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奈都樹

(なつき)1994年生まれ。リアルサウンド編集部に所属後、現在はフリーライターとして活動しながら、クオーターライフクライシスの渦中にいる若者の心情を様々な角度から切り取ったインタビューサイト『小さな生活の声』を運営中。会社員時代の経験や同世代としての視点から、若者たちのリアルな声を取材している。

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