東京吉本の若手芸人が所属する「神保町よしもと漫才劇場」から、今押さえておくべき芸人を紹介する連載「レコメンド神保町」。前途有望な若手芸人が日々、切磋琢磨しているこの劇場の中でも注目の芸人とは。
第12回は、そろって「あまりにも一般人すぎる」ことが悩みだというミカボが登場。そんなふたりが輝く瞬間を聞いた。

ミカボ
土屋翼(つちや・つばさ/1995年5月7日生まれ、千葉県出身)と山田裕磨(やまだ・ゆうま/1994年12月13日生まれ、群馬県出身)によるコンビ。2021年5月に結成、4月からは東京よしもと漫才劇場の「極メンバー」
仲のいい先輩後輩から、コンビへ
──まずはコンビとしてのアピールポイントを教えてください。
山田裕磨(以下、山田) 土屋の声ですね。低いけど通る、漫才にすごく向いてる声だなと思います。平場でもみくちゃになったときとか、まわりが高い声で「おーい!」と言ってるなか、土屋の声は低いので聞き取りやすいんですよね。
土屋翼(以下、土屋) でも、やっぱりコンビとしてのアピールポイントは山田さんの声ですよね?
山田 俺の?
土屋 怒らせたときは特におもしろい声が出るんです。僕は山田さんの後輩なんですけど、山田さんが顔を真っ赤にしておもしろい声で怒るのが好きで、すぐイジりたくなっちゃいます。
山田 そんなふうになってるかな?
──そもそも先輩後輩だったおふたりは、どのような経緯でコンビを結成したんですか。
山田 別のコンビでやってたときから仲のいい後輩だったっていうのが大きいですね。
土屋 めちゃくちゃ店員の態度が悪い沖縄料理屋によく連れて行ってもらってました。
山田 その店、店員の態度は悪いんですけど、味はめちゃくちゃうまいんです。まあ、そういうとこによく行ったり、銭湯によく行ったりする仲だったんですけど、僕がコンビを解散して、今後も漫才をやっていきたいなって思ったときに、土屋がいるなと。前に組んでたコンビは死ぬほど仲が悪くて、解散するまで2、3年ぐらいはネタ以外のことを話したことないぐらいの関係性だったんで、次に組むとしたら、おもしろいのはもちろんだけど、ちゃんといろいろ言い合える関係性がいいなと思っていたので、仲がよかった土屋に声をかけました。
──土屋さんは山田さんに声をかけてもらったときは、どんな心境だったんですか?
土屋 どうしようかな……っていう感じですね。劇場内でのランクでいったら、山田さんの前のコンビは19期のエースみたいな感じだったのでうれしかったし、信頼できる同期にしゃべったら「すぐ組め」って言われたんですよ。ただ、相方と仲が悪いところも見てたんで……。好きな先輩だけど、コンビ間での話になったら、こっちに原因がある可能性もあるじゃないですか……。
山田 あのときは、どっちも悪かったからね。
土屋 僕も芸歴的にラストチャンスかもしれないというのはあったので、一回、調査をさせてもらって。結果、後輩の前で猫かぶってたわけじゃなかったので、「ぜひ、お願いします」と。
──結成してから、コンビとしての歩みは順調ですか。
山田 劇場メンバーにはすぐ上がらせてもらったんですけど、『バトルライブ』ではまったく上位に食い込めず、けっこう苦労しましたね。
土屋 上のほうにランクインできるようになったのは、ここ1年くらいだよね。
色がないのがミカボの色
──漫才こそミカボの武器だと、そこについてはいかがでしょうか。
山田 どうですかね、まあ、なんにしろしゃべくり漫才をやっていくんだろうなとは思います。
土屋 漫才コントもやったことがあるんですけど、僕は演じ分けができないのでテンパっちゃって。「コンビニ」の設定で、客のセリフを言いながら、店員の身振り手振りをやっちゃうみたいな。
山田 それに土屋はすぐネタを飛ばすんですよ。組む前にピンでやってたときのネタも見たことがあるんですけど、全部飛ばしてました。学生服着て立ち尽くしてるときとかあったよ。
土屋 学生服で立ち尽くしてるときもあるし、バレリーナみたいなピチピチの全身タイツで立ち尽くしてるときもありましたね。
山田 (笑)。今では漫才の最初に「すみませんね、キャラ芸人出てきて」「そんなことねえよ」ってツカミがあるぐらいキャラが立ってないのにね。僕もだけど。
土屋 ふたりそろってあまりにも一般人すぎるというか。コンビとしては色がないことが色、みたいになってますね。
山田 すごいね。
土屋 でも、もう少しで僕はメガネをかけますから。
山田 どういうことですか(笑)?
土屋 キャラがない芸人脱却のために。渋谷の奥のほうで、いいメガネ見つけまして……。いい値段なんですよ(ドヤ顔)。
山田 僕らは「どっちも山田っぽいし、どっちも土屋っぽい」とか、よく言われるんですよ。土屋がメガネをかけたら、メガネかけてるほう・かけてないほう、にはなるのか……?

──でも衣装の影響か、神保町で茶色といえばミカボ、みたいなイメージはあります。
山田 ですよね! ミキの昴生さんに言っといてくださいよ。あの人、ライブで「地味! 変えろ!」って言ってきたんで。僕らは気に入ってるんですけどね。
土屋 茶色を着こなす男が一番かっこいいはずなんですけどね。まあ、実際に我々は地味なんで。だってこの前の休日、何してました?
山田 何してたかな……。近所のスーパー3つ行ってたかな~。
土屋 でしょ。僕は粘土とゲームしてましたもん。
山田 だから茶色なのか。
──この連載では読者の方へのおすすめしたいことも聞いているんですけど、そんなおふたりは趣味とかってありますか?
土屋 僕はそれこそ粘土ですね。時間が経つとプラスチックみたいに固まる樹脂粘土っていうのがあるんですけど、それでキャラクターやフィギュアとかを作ってて。インスタにも載せてます。
──すごい!
土屋 最近、よしもとのアート部門の方が見つけてくれてて、親子数組の前で粘土の先生やりませんかって言ってくれたんで、ようやく“よしもとの粘土師”としての道が始まりそうですね。
山田 粘土師? 聞いたことないけど、まあいいか……。僕は本当に趣味とかないんで。
土屋 新宿三丁目は?
山田 変な言い方するなよ(笑)。新宿三丁目にあるイタリアンでアルバイトをしてるんですけど、国内でも屈指の忙しさで。おかげで魚もさばけるようにはなりましたね。
土屋 そこの店長がよくしてくれて、営業時間外はネタ合わせやラジオの収録に使わせてもらってるんですけど、この間、バイト後の山田さんが隣に座ったときになんか生臭くて、「臭くないですか」って聞いたら「ブリさばいてきた」って言ってました。
山田 金曜の新宿ですからね。たしかに、ド桜のかつやまもうちの店で働いてたことがあって、今、あいつYouTubeでパスタとか作ってますもんね。
土屋 かつやまのパスタ、どう思います? けっこう「すごい、すごい」って言われてますけど。
山田 うーん、まあ料理のマネごとかな……噓です、そんなことないですよ! 完全に言わされました。
若手一渋い漫才師ユニットのススメ

──4月からおふたりも東京よしもと漫才劇場の「極メンバー」となります。心境はいかがでしょうか。
山田 神保町は19期で一番上だったんで、たくさん後輩にご飯とかもおごってきて……。
土屋 嘘つけよ! この人、ライブ終わりはなるべく逃げるんです。
山田 (笑)。まあ、神保町に来る前はもともと先輩ばかりの無限大(ヨシモト∞)ホールの所属だったので、元に戻るだけ、みたいな感覚ではいるんですけど、戦うとなったらだいぶ強いので。でも、コーナーとかは先輩がいると、なんとかなしてくれるだろうと、わりと自由にボケられるので楽しみではありますね。
──それこそ、おふたりは定期的に先輩とのツーマンライブを開催しているんですよね。3月14日にはアキナさんとツーマンをやるそうですが、アキナさんとはもともと交流があったんですか。
山田 いや、ほとんどなくて。ただ、1、2年前ぐらいに、武者修行で大阪の漫才劇場に出演させていただいたとき、アキナの山名(文和)さんが「なんかウケてたな!」って話しかけてくれて。向こうは覚えてないと思うんですけど、今回はそれ一本で呼ばせていただきました。
土屋 僕、動画で褒めてくれた、あそこのラジオで言ってくれた、雑誌で言ってくれたとか、褒めてもらった話は全部覚えてて。山名さんも当時、漫才劇場の支配人にも「あの子たち誰? 今日一番ウケてた」って言ってくれて。その3カ月後くらいに漫才劇場の支配人がまた呼んでくれたので、ちゃんと感謝を伝えたいです。
──楽しみですね。ほかにも今月は、ユニットライブ『漫才師ユニット男坂38』があります。4月以降もこのユニットは続くということで、始めて来るという方もいると思います。改めてどんなユニットなのでしょうか。
山田 最初は『SDN』として、素(S)敵じゃないか、ド(D)ンデコルテ、今は解散しちゃったナ(N)ミダバシで立ち上がった漫才師のユニットなんですけど、そこから紆余曲折があって、今のメンバーになりました。なかなか渋いですよね。僕らが新メンバーとして加入したときも、「新メンバーは、この方々です!」ってサプライズで登場したのに、あんまり盛り上がらず。お客さん全員が、まあミカボは入るよね~みたいなリアクションでした。
土屋 でも、このライブはオープニングアクトがね! こういう……すみません、ちょっと今手を上げたタイミングで脇をつっちゃいました。
山田 すごいね、動きじゃなんにもわからないのに(笑)。このユニットではオープニングアクトみたいなのがあって、歌って踊ったりしてるんですよ。これが本当に嫌でね(笑)。次回は何やるんだっけ?
土屋 なにわ男子の「初心LOVE」じゃない? あ、違う、「シンデレラガール」だ。
山田 それはキンプリ(King & Prince)じゃない?
土屋 じゃあキンプリの「シンデレラガール」か。え? でもなにわ男子の曲だった気が……。
山田 どっちも覚えてないんですけど、がんばります。神保町の中でも、若手のノリについていけない人に寄り添ったライブなので、ぜひ、年配の方とかも安心して来てほしいです。

『ミカボ×アキナツーマンライブ「アキボ」』
2025年3月14日(金)開場18:45/開演19:00/終演20:00
会場チケット:前売1,800円(税込)/当日2,000円(税込)
オンラインチケット:1,200円(税込)
詳細はこちら
『漫才師ユニット男坂38』
2025年3月25日(火)開場20:45/開演21:00/終演22:00
会場チケット:前売1,200円(税込)/当日1,500円(税込)
オンラインチケット:1,200円(税込)
詳細はこちら
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