JO1の川西拓実と桜田ひよりのダブル主演で実写映画化された『バジーノイズ』(5月3日公開)。4月12日より発売中の『Quick Japan』vol.171では、川西拓実のロングインタビューと『バジーノイズ』に関わるスタッフ陣の言葉から紐解いた特集「川西拓実“解体新書”」を掲載している。
ここでは川西拓実が映画『バジーノイズ』に主演するきっかけを作った山田実プロデューサーの、誌面には収まりきらなかったエピソードも盛り込んだインタビューをお届けする。
山田 実
(やまだ・みのる)大阪府出身。宣伝プロデュース映画作品に『シング・ストリート』『ラ・ラ・ランド』など。企画した公開待機作に『言えない秘密』がある
自作曲を恥ずかしそうに披露する姿が主人公と重なった
──JO1のYouTubeコンテンツ「PROCESS JO1」(JO1のYouTubeチャンネル内のシリーズ)で川西さんがDTMを操る姿を見て、清澄(きよすみ)役をオファーしたそうですね。そこに至るまでの経緯を、もう少し詳細に教えていただけますか?
山田 僕はもともとJO1のファンで、宣伝担当から企画担当に異動して、JO1の企画を何かできないかと考えていたんです。拓実くんはオーディションでもセンスが爆発していて、「どうして未経験でこんなにできるんだろう」と驚きの連続でしたし、デビュー後の楽曲のパフォーマンスの数々でも魅力がものすごかったので、絶対に映画作品でも中心に来ることができる逸材だと思っていました。『バジーノイズ』の原作に感銘を受けていたころ、「PROCESS JO1」で、実際に部屋にこもってDTMで作ったという自作曲を恥ずかしそうに披露している拓実くんの姿が清澄に重なって。すぐに事務所に連絡して、その翌週には打ち合わせをしていましたね。
──出演が決まり、実際に対面したときの川西さんの印象はいかがでしたか。
山田 オーディションで観ていた姿のまま、すべてにひたむきに向き合う男の子でした。簡単になんでもこなしてしまうのではなく、努力を積み上げていくところが彼の魅力で。「プデュで観ていたときのままなんだな」とうれしかったですね。撮影期間にも並行してもちろんJO1としての活動があって、朝の情報番組に生出演してから現場に入ったり、撮影の合間に階段の踊り場で振り入れをしていたり。それでも絶対に悲観的には捉えないんですよね。「大変だけど、こんなにやらせてもらえてありがたいです」と常にポジティブで、明るく取り組んでいる姿が印象的でした。
──クランクアップは2023年の夏。そこから半年ほど空白があって、最近は映画のプロモーションなどで顔を合わせる機会も増えていると思いますが、久々に再会した川西さんに変化を感じた部分はありますか?
山田 僕らとしては“ほんの半年前”なんですが、JO1は活動の密度が濃いので、拓実くんは映画の撮影をかなり懐かしいことのように感じていましたね(笑)。最近再会して思うのは、いい意味で緊張がほどけたのかなと。撮影期間は集中モードだったので、堂々としていて肝が据わっている印象だったんです。でも初号試写のときにスクリーンの中の自分を観て恥ずかしがっていたり、取材では映画の見どころを自分の言葉で説明するのに苦戦していたり。なんでも器用にこなす完璧な拓実くんじゃなくて、等身大の姿を見ている気がします。
全員が感極まっていたクランクアップ
──取材で川西さんの言葉を聞くなかで、「そんなことを考えていたのか」と驚いたことはありますか?
山田 人見知りなので、思った以上にほかのキャストのみなさんとの距離感に悩んでいたんだな、と。桜田(ひより)さんや監督から話しかけてきてくれたので、それをきっかけに自分も積極的に話すようになったと言っていましたね。桜田さんも実は人見知りなんだけど、意識的に距離を縮めていた部分はあったようです。最終的にはふたりがボケとツッコミみたいな関係性になっていて、見ていて微笑ましかったです。
あとは、実は拓実くんは兵庫出身なので関西弁はまったく心配もしていなかったのですが、いざ始まると、かなり関西弁が抜けてしまっていて。セリフ中の単語が標準語になっていたり、言い回しが微妙に東京っぽかったり。ただ、拓実くんには方言指導の人をつけていなかったので、大阪出身の私が拓実くんの関西弁の修正を気をつけて指導するというのが、思いもよらなかったので大変でしたが楽しかったです。本人に指摘するたび「すんません、情けないです」と言っていたのが、おもしろくて印象深いです(笑)。
──少しお兄さん的な立ち位置の、井之脇海さんや栁俊太郎さんとはどのように接していましたか?
山田 完全に弟のようにかわいがられていました。「JO1は数週間くらい韓国に行ってMVを撮ったりするんですよ」と活動について話してみんなを驚かせたり、「Go to the TOP」というJO1のポーズを伝授していたり(笑)。やっぱりどこかでみんな、拓実くんが映画初主演だということを頭の片隅で意識しているムードがあって、優しい空気が流れていましたね。撮影の最後は拓実くんのシーンだったんですけど、少し前にクランクアップした桜田さんたちもサプライズで花束を持って駆けつけてくれたんです。
──川西さんは感無量だったでしょうね。
山田 普段は泣かないと決めているそうですが、目を潤ませていました。風間(太樹)監督も、普段は泣くような方ではないんですが、涙ぐんでおられて。全身全霊で向き合ってくれたんだな、と改めて思いました。
──川西さんが『バジーノイズ』に出演したことで得たものが、JO1の活動に還元されているなと感じる瞬間はありますか?
山田 清澄という音楽を作る役を演じて、「もっと音楽を作りたい、音楽に向き合いたい」という気持ちが強まったようです。Yaffleさん(映画『バジーノイズ』でミュージックコンセプトデザインを担当)との会話でも、使っているソフトについて聞いたり、積極的に相談したりしていましたね。Yaffleさんもそれに応えて「清澄はプロじゃないから、こういう弾き方をすると思う」など、細かく指導していて。その情熱が結実して、ついに展覧会『JO1 Exhibition “JO1 in Wonderland!”』のテーマ曲「HAPPY UNBIRTHDAY」を手がけるまでに至ったわけですから、川西さんがクリエイターとして目覚めるきっかけを作れた気がしてとてもうれしいです。
将来に漠然とした不安を抱えている人に届けたい
──山田さんが撮影を見ていた中で、川西さんが役者としてハッとするような演技を見せたシーンはどこですか?
山田 清澄はセリフが少ないから、実は最初は「演技経験が少なくても大丈夫なんじゃないか」と簡単に考えてしてしまっていた部分がありました。ただそのぶん表情で細かく表現しなければならない大変さがあると、あとから気づくのですが……拓実くんは普段からパフォーマンスでの表情管理が得意なだけあって、センスを感じましたね。たとえばライブのシーンで、潮(うしお)を客席に見つけた瞬間に清澄が微笑む表情。ただニコッと笑っているのではなく、心の底から安堵しているような感情を出せていて、演技の成長スピードがすごいなと思いました。
──みなさんへのインタビューを通して、川西さんは映画の撮影でまさにスポンジのようにたくさんのことを吸収されたんだろうなとしみじみ感じました。数年経って円熟味が増してきたらどんな表現者になっているのか、とても楽しみになる存在だなと。
山田 そうですね。最初はセリフの言い回しも少しぎこちなかったですが、とてもうまくなっていたし、本人も意欲を見せていましたが、アクションもこなせる俳優になれると思うので、そういう姿にも期待したいですね。
──川西さんをひと言で表現するとしたら、どんな言葉がしっくりきますか?
山田 一作品を通してがっつり拓実くんと向き合った上で、彼をひと言で表現するならば、あえて「センス」という言葉を使いたいです。初めて経験することばかりだから、もちろん最初は一瞬戸惑うんだけど、すぐにモノにしてしまう。そこはプデュ(オーディション)のころから変わらないんだな、と。
──製作を進めてきて、「いい作品になりそうだ」と感じたのはどのタイミングでしたか?
山田 撮影中ですね。撮影チームやすべてのスタッフの「風間監督についていこう」という思いがとても強かったんです。怒号が飛び交うなんてことは一切なく、とても優しい空気感でした。長時間の撮影や、体力的に大変なときもあったんですけど、けっしてネガティブな空気になることなく向き合ってくれて。それがひとつの絵になっていった瞬間に、「間違いない作品になる」と感じました。
──主題歌「surge」は、川西さんが清澄として歌唱しています。どのようなイメージで作り上げていったのでしょうか?
山田 ただ爽やかなだけや、気持ちが上がるというだけの曲ではなく、清澄と潮の気持ちの平行線上にあり、じわじわ感動するような曲にしたいと思っていました。それが時代を捉えているサウンドだったらよりベストだなと思っていたところ、Yaffleさんからまさにそういうトラックが上がってきて。さらに想像を超える歌詞をいしわたり淳治さんがつけてくださって。しっかり芯を捉えていて、すごいなと思いましたね。
また、拓実くん自身が撮影前に『バジーノイズ』をイメージして独自で作っていた楽曲「Heaven」も現在配信中ですが、たくさんの人に聴いてほしいです。映画サイドからお願いしたわけではなく、ある日「作ってみたのでよかったら聴いてください」と送ってくれたのですが、とにかく完成度が高くて、本作を素敵に捉えていながらもピュアな楽曲で。初めて聴いた瞬間、「やはり拓実くんの才能はすごすぎる。そして『PROCESS JO1』で作っていた楽曲っぽさもあるし、なにより主演から自発的にこんなことをしてくれるなんて、かわいすぎる!」と、本当にとても歓喜したのを覚えています。
──この映画『バジーノイズ』を、どんな方に届けたいですか?
山田 僕も20代のとき、将来がずっと不安だったんです。「将来ちゃんと仕事をできているかな」「10年後、20年後どうなっているかな」とか、漠然とした不安をずっと抱えていた。今の若い方々もおそらく近い思いを持っているように思うので、同じような感覚を持つ人が観て安堵できる、心にほんの少し希望の光が差すような作品になっていたらいいなと思います。
発売中の『Quick Japan』vol.171では、12ページにわたる特集「川西拓実“解体新書”」を掲載。川西拓実インタビューのほか、風間太樹監督、山田実プロデューサー、主題歌作詞を担当したいしわたり淳治、原作者・むつき潤といった『バジーノイズ』関係者に取材を行い、5つのキーワードから表現者・川西拓実の魅力に迫る。
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