シンクロニシティ「芸人もお金にならなかったら続けても…」プロに踏み込んでからの変化

シンクロニシティ

文・編集=梅山織愛 撮影=晴知花


神保町よしもと漫才劇場に所属するお笑い芸人に自身の“出囃子”について聞く連載「大舞台で響かせたい」。今回はシンクロニシティが登場。

今年4月より神保町よしもと漫才劇場の所属となったふたり。それまでは会社員として働きながらフリーで活動していたふたりに出囃子の話だけでなく、事務所に入ってからの変化を聞いた。

シンクロニシティ
よしおか(1994年10月2日生まれ、神奈川県出身)と西野諒太郎(にしの・りょうたろう/1994年3月23日生まれ、東京都出身)によるコンビ。中央大学の落語研究会で出会い、2017年にコンビ結成。事務所に所属せずにフリーで活動を続け、『M-1グランプリ2022』では準決勝進出。そして2023年4月より吉本興業に所属した。

シンクロニシティの出囃子/amazarashi「奇跡」

シンクロニシティ
シンクロニシティ(左:西野諒太郎、右:よしおか)

西野諒太郎(以下、西野) 前はふたりの雰囲気に合わせて『風の谷のナウシカ』の劇中歌を使ってました。だけど、まわりと違う雰囲気になっちゃうので……。僕たちは今年の4月に吉本に入ったんですけど、フリーのときもたまに無限大ホールとかの劇場に出させてもらう機会があったんです。そういうときの『風の谷のナウシカ』はおジャマしてる身分なのにって気まずさを感じてしまっていたので、普通の曲にしようと。それでよしおかさんに決めてもらいました。

よしおか 『風の谷のナウシカ』は奇をてらっている感じがして、出にくかったです。

よしおか はい。amazarashiさんは高校生ぐらいのときからずっと好きで。

西野 そうです。それぞれ会社員をしながらお笑いをやってました。

西野 僕たち、大学の落語研究会で知り合って、ふたりで「プロを目指そう」って話になったんですけど、自分たちの中でいけるって思えたらプロになろうと約束したんです。だから、最初は働きながら『M-1グランプリ』に出てました。そしたら2018年に初めて準々決勝に行けて。そのときに「準決勝に行ったらプロになろう」と具体的に決めました。そこからなかなか準決勝には行けなかったんですけど、去年ようやく行けたので、事務所を探して吉本に入りました。

よしおか 平日は普通に仕事して、土日のどちらかはライブに出て、という感じでした。だからずっと休みがなかったです。

西野 なんか転職活動みたいなイメージでお笑いをやってましたね。仕事をしながら、ほかの会社も受けてるみたいな状態です。

先が見えないと踏み込めなかった

シンクロニシティ

よしおか 今もなんですけど、人前で話すのが苦手だったんです。だからちょっとは得意になるといいなと思って大学生になったとき、人前に立つ系のサークルに入ろうと。それで演劇とかいろいろ考えたんですけど、お笑いが自分には向いてるのかなって思って入りました。

よしおか 学生時代にけっこういいところまで行けたので、これはプロでもやっていけるんじゃないかなっていう気持ちが芽生えてしまって……。それで卒業してからも続けてる感じです。

西野 父親がとにかくバラエティ番組が好きだったので、小さいころから家でずっと流れていたので、僕もハマっていって、大学でお笑いを始めました。そのときにはすでに卒業してプロになるっていうビジョンはわりと描いていました。

西野 3年生のときに『(学生才能発掘バラエティ)学生HEROES!』(テレビ朝日)の収録に行かせてもらうようになったんですけど、そこでハリウッドザコシショウさんとか永野さんとか、とにかくパワーがある人を近くで観て、あ、自分とは住む世界が違うんだろうなって感じてしまったんです。就活が始まるタイミングでもあったので、いったん、そっちも考えようっていう気持ちになり就職しました。

西野 そうですね。お笑い芸人になるのも、先が見えないと踏み込めないなと思って。あと、そもそも僕たちがそこまでの絆じゃなかったっていうのもあるかもしれないです。バイトしながらでも一緒にがんばろうなってほどの仲ではないというか(笑)。お金にならなかったら続けても……っていう思いがそれぞれあったんだと思います。

プロになって見た目が変わった

シンクロニシティ

よしおか お笑いを観るのって普通に働いてる人とかじゃないですか。自分も一回そっち側に行ったことで、平衡感覚が身についたというか。こういうこと言ったらよく思わない人もいるだろうなっていう感覚は、ちゃんとあるのかなって思います。

西野 たしかに、お笑いをやってることを職場にも言ってたんで、職場の人が観たときのことも考えてしまって過激なことを言わないようにとかは思うようになりました。あとは、職場に50、60代の上司とかもいたので、そういう世代の人でも意味がわかるネタをやろうとするようにはなったかもしれないです。

よしおか 私は舞台で使う靴を毎日磨くようになりました。フリーのときはあまり気にしなかったんですけど、見られているという意識が強くなったので、足の先までちゃんときれいにしようと思うようになりました。

西野 僕も身につけているものには気をつけるようになりました。そもそも私服を着る機会がなかったっていうのもあるんですけど、吉本に所属してから「信じられないぐらい私服がダサい」って言われるようになって。それで先輩の芸人さんに選んでもらったりとかするようになって、変わりました。

よしおか ヤーレンズの楢原(真樹)さんとかに私服を選んでもらってるので、けっこう変わったかなとは。あとは、お客さんから私服を送ってもらってたりするので、それも大きいのかなと思います。

よしおか 3月末に仕事を辞めたとき、これからは何色にしてもいいんだ!って思って、 ミルクティーベージュみたいな色にしたんですけど、 2、3日ぐらいで金髪になっちゃって。それでライブに出たら、「そこらへん歩いてる男女がちょっとおもしろいこと言ってるようにしか見えへん、ボソボソ言ってんのがいいねん」って言われてしまって……。

西野 わざわざ関西弁で言わなくていいから(笑)。

よしおか それで、まわりの女芸人の方たちとかに相談して、ブルーブラックがいいと教えてもらったので、今の髪色に落ち着きました。やりたいと思える色でもあり、暗くも見えるので。

賑やかな空気も嫌いじゃない

西野 そうですね、僕は草野球とかにも参加するようになりました。芸人の草野球って平日の昼間っていう社会人からしたら信じられない時間にやるんですよ(笑)。だけど、今は行けるようになったので。そういうところでのやりとりが平場につながったりもするので、つながりは大切だなと思います。

西野 だけど、みんながわーってしゃべってるとき、自分でも自分の声が聞こえなかったりして、こんなに声小さかったんだとか、いろいろ思いますね。

よしおか 私も最初は何もしゃべれなくって。だけど、軍艦さんと一緒になったとき、軍艦さんも声は小さいけど、ずっと声は出していて、見習わなきゃいけないなって思いました。

西野 そんな気持ちはないですね。今までやりたくない仕事を月金フルタイムでやっていたので、それに比べればやりたくないことはないです(笑)。僕たち、まわりの人が思ってるよりも、賑やかな空気とか嫌じゃないんですよ。

よしおか そうですね。

シンクロニシティ

これまで以上に緊張した『M-1』

よしおか 根が変な人ではあるから、そこは早く見つかってほしいです。ちゃんとした人だと思われるだけで、全然ちゃんとした人じゃないので。

西野 否定はできないですね(笑)。よしおかさんは暗いからおもしろいみたいに思われてると思うんですけど、意外とそんなことはないです。よしおかさん自身も自分のキャラクターが崩れるかもみたいに思って、あまりしゃべんないようにするときとかもあるんですけど、打ち解けたらしゃべる人なので、ぜひ長めの話とかも聞いてほしいです。

よしおか おしゃべりは好きです。あ、でもしゃべったあとにちょっとしゃべりすぎちゃったかもって後悔もします。ちょっと自分の情報を言い過ぎちゃったかもとか……。

西野 人の話を聞いてチャチャを入れるのが好きなんですよね。 自分のこと詮索されるのはあんまり得意じゃないみたいです。

西野 地上波ラジオはできたらいいなって思います。視覚的なことより、ただしゃしゃべっておもしろいみたいなことのほうがやりたいので、ラジオができたらうれしいですね。僕もおしゃべりには見えないと思うんですけど。

よしおか やっと顔と名前がわかるようになってきたので、ちょっとずつほかの芸人さんとも話すようになりました。最近は後輩の定点計画とよく話してます。空気感がけっこう近いので、混ぜてもらって。4人目の定点計画みたいな感じになってます。

西野 向こうは思ってないと思いますけどね(笑)。

西野 これまで以上に緊張しました。働いてたときに何か落ち込むことがあったら、自分は芸人と思って、お笑いの舞台で失敗したら、自分はサラリーマンだって思うみたいに。これまでは自分の気持ちを都合よく整理してたんですけど、それができなかったので。

よしおか そうですね。今までは仕事もあったので、お笑いがダメでも仕事があるってバランスを取ったんですけど、今年からはお笑いしかないのでプレッシャーは大きかったです。

西野 あと、事務所に入っておもしろくなくなったとは思われたくないというのもあります。通る通らないは運の要素もあるので、そこだけで評価するのではなく、ネタ自体がよくなったと思われたらいいなと思います。

この記事の画像(全8枚)



  • 『よしおかの部屋』

    2023年12月13日(水)開場20:45/開演21:00/終演22:00
    出演:シンクロニシティ/カラタチ
    会場チケット(当日):1,500円(税込)
    オンラインチケット:1,200円(税込)

    関連リンク

  • 『西野』

    2023年12月16日(土)開場17:45/開演18:00/終演19:00
    出演:シンクロニシティ/ハイツ友の会
    会場チケット:前売1,500円(税込)/当日1,800円(税込)
    オンラインチケット:1,200円(税込)

    関連リンク

  • 【シンクロニシティ×QJWeb サイン入りチェキプレゼント】フォロー&RTキャンペーン

    ■キャンペーン応募期間
    2023年12月13日(水)〜2023年12月27日(水)

    ■キャンペーン参加方法
    【ステップ1】QJWeb公式ツイッターアカウント「@qj_web」をフォローしてください。
      ▼
    【ステップ2】「@qj_web」がキャンペーン告知をしたこのツイートを、応募期間中にリツイートしてください。
      ▼
    【応募完了!】
    締め切り後当選された方には「@qj_web」からDMにてご連絡を差し上げます。フォローを外さず、DMを開放してお待ちください。

    ※必ずご自身のアカウントを“公開”にした状態でリツイートしてください。アカウントが非公開(鍵アカウント)の場合はご応募の対象になりませんのでご注意ください。
    ※「いいね」はご応募の対象になりませんのでご注意ください。
    ※当選の発表は、こちらのDMをもって代えさせていただきます。
    ※当落についてのお問い合わせは受けかねますので、ご了承ください。
    ※本キャンペーンの当選がQJWebのインスタアカウントと重複した場合、どちらか一方の当選は無効となります。
    ※本景品は非売品です。譲渡・転売はご遠慮ください。
    ※いただいた個人情報は、本プレゼントキャンペーン以外の目的には使用しません。


関連記事

この記事が掲載されているカテゴリ

Written by

梅山織愛

(うめやま・おりちか)1997年生まれ。珍しい名前ってよく言われます。編集者・ライター。自他共に認めるミーハー。チョコレートとかき氷が好き。

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。