白岩瑠姫が持つ「儚い強さ」
王道の青春ラブストーリーと思いきや、深いメッセージも伝えている本作。周囲がカテゴライズした自分でありつづけなければとする茜の姿に、共感する人も多いだろう。そんな人々の目に、青磁がどう映るのかを考えてみる。
画家になるという揺るぎない夢を持ち、言いたいことをはっきりと口にする青磁。予告編にもあるように、茜に「大嫌い」と言い放つほどだ。青磁という存在が眩し過ぎては目を逸らしたくなり、別世界の人間過ぎては、疎ましくもなるだろう。「誰もが青磁のようには生きられない」と、本作のメッセージがかすんでしまう可能性もある。
しかし青磁の言葉は、不思議なほど観る者の胸に届き、心を解きほぐす。それはなぜだろう。理由を探していると、公式サイトに寄せられた酒井監督のコメントが目に留まった。「儚い強さ」。これは、監督が白岩を表現した言葉だ。
確かに白岩は、強さの裏にある“何か”、強さを得るに至るまでの“何か”を、その佇まいに想像させる。彼が持つ「儚い強さ」が、青磁の言動を理想論ではなくさせ、深みをもたらしているのだろうと思った。
出会うべくして出会った“キャラクターと演者”
白岩の「儚い強さ」の要素ともいえるある思いが、8月10日に行われた舞台挨拶にて、彼自身の口から明かされた。時間は永遠ではない、人生は一度きり、やりたいことはやったほうがいい。こうした青磁の考え方について白岩は、「演じたというよりも、“わかるよ”という気持ちだった」と、自身との共通点として話していた。
「このステージが人生最後のステージになってもいいと思って、全力を出し切ってやっている」
ステージ上で、ファンにも何度もそう伝えてきたという白岩は、青磁と同じ考えを持つ青年だった。いつからそんなふうに考えるようになったのか、その背景には何があったのか、「人生には限りがある」と知るにはまだ若い白岩のこれまでに思いを馳せるうち、“白岩こそが、青磁を青磁たらしめているのだな”と感じた。
白岩の信念ともいえるメッセージだからこそ、青磁の言葉には嘘がなく、茜に、そして我々の心に届く。それは俳優としてのスキル、いわゆる「演技力」とはまた異なるものかもしれない。
しかし、白岩瑠姫が深川青磁を演じるにおいては、じゅうぶん過ぎる理由。おそらく鑑賞にあたり、白岩のイメージを完全には消すことのできないファンにとっても、白岩と青磁のオーバーラップは、本作のメッセージをより強いものとするはずだ。
出会うべくして出会った、ソウルメイトのようなキャラクターと演者。その化学反応を、ぜひまっさらな目で見てほしいと思う。
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映画『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』
2023年9月1日(金)全国ロードショー
監督:酒井麻衣
脚本:イ・ナウォン、酒井麻衣
原作:汐見夏衛『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』(スターツ出版)
主題歌:JO1「Gradation」(LAPONE Entertainment)
出演:白岩瑠姫(JO1)、久間田琳加、箭内夢菜、吉田ウーロン太、今井隆文、上杉柊平、鶴田真由
配給:アスミック・エース
(c)2023『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』製作委員会関連リンク
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