年収1,000万超えのセクハラおじさん…倫理観が壊れてる?触りはしない&注意しにくい、独特な気持ち悪さ

本日は晴天なり

文=本日は晴天なり 撮影=澤田詩園 編集=梅山織愛


お笑い芸人として活動しながら、キャバクラで働いていた経験のある、ピン芸人・本日は晴天なり

キャバクラには数多くの“拗(こじ)らせおじさん”たちが来店するが、その中には群を抜いたクセを持つおじさんが存在するという。

そんなレジェンド級“拗らせおじさん”の中から、今回は「独特なセクハラをする年収1,000万超えおじさん」を紹介する。

年収1,000万超えなのに……

本日は晴天なり

彼は“霞が関で働いている”エリートだった。中年太りしてるお客様が多い中、珍しくスラッとしていて、細身のスーツがキマっていた。早い時間に来店してソファに深く腰をかけ、足を組みながら生ビールを2、3杯飲む。ピアノを習っている私立中学に通う娘がいそうな……そんな風貌だ。

性格や言動もほかのお客様とは一線を画していた。エリートさがにじみ出るよう、些細な自慢はするものの、傲慢さはなく、温厚で高圧的な態度もない。人当たりもよく、ドリンクもごちそうしてくれる。最初はいわゆる“良客”だと思った。

キャバ嬢はそのお客様がなんの仕事をしているのかを聞いてほしいのか聞いてほしくないのか、見極める必要がある。言いたいやつは聞かなくても勝手に言ってくるが。

彼は聞いてほしそうなタイプだと思ったので、仕事について聞いてみると「うん……まあ、まあね」と濁された。やっぱり言いたくなかったか、と思って深くは聞かずにいたら、会話の中にヒントとなるようなキーワードを散りばめてきた。結局、言いたかったのだ。自分が“エリート”だと。

私生活に関しても会話の中でヒントを出してくるため、聞いてもいないのに未婚で実家暮らしであることがどんどん明らかになっていった。「結婚してないよ」と言ったときは、むしろ「俺はまだフリーだから君たちにもチャンスがあるんだよ」と言いたげなテンションだった。優良物件まだ空いてますよ、ばりのテンション。むしろこの経歴があるのに未婚で実家暮らしって……怪しい……。

自慢げに話してきた気持ち悪過ぎエピソード

彼はよく、20年前の婚約者の話を昨日のことのようにしていた。最初はふたりで育てた菜園、飼っていたヨークシャテリアの話など、キャバクラではあまり聞くことのないような微笑ましいエピソードだったが、徐々にこの元カノとのセックスの話に発展していった。

この彼女とは遠距離恋愛をしながらも10年付き合ったが、結局、相手の浮気が原因で別れることになったという。しかし、彼女から別の人と結婚したとの連絡を受けた際に「あなたの体が忘れられないの」と、言われたそうだ。「別の人と結婚したのにそんなこと言う!? よっぽど僕との体の相性がよかったんだろうね!」と、彼は誇らしげだったが、そんな話をする彼のことを私は最高に気持ち悪っ!と思った。

ほかにも「この前まで付き合っていた彼女は20代でおっぱいが大きかったんだけど、セックスの相性がよくて何度もイカせてたんだよ」「僕のアソコが大好きだって言ってくるんだ」など、気持ちの悪い話を連発。しかも、「その20代の彼女のお母さんにまで迫られちゃってね」と、気持ちの悪い話をこれまた誇らしげに話す。いちいち誇らしげなのは、倫理観がぶっ壊れてるからなのだろうか。そもそもこんな話自体、嘘なんじゃないかと思う。

真の嘘つきは、話の中に本当のエピソードも混ぜ込んでくると聞いたことがある。しかし、キャバクラで“話を盛る”は、“息をする”と同義語なので、お客様が話すことがどこまで本当かなんてどうでもいい。キャバクラは、あり得ない話でも否定せずに聞いてもらえる仮想現実みたいなものだ。私の中では嘘がつきたくて店に来ている説まである。

彼は「嘘つけよ! 気持ち悪い!」としか思えない話をさんざんした挙句、「ごめんね。こんな話、セクハラだよね……?」と言ってきた。「そんなことないですよ~」と言わせようとしてくるところが、気が狂いそうなほど気持ち悪い。聞いてあげるのが仕事なのでもちろん話は聞くけど、感情が顔に出てないか不安になるレベルだった。

こんなに気持ち悪い話をしておいて、ドリンク1杯しか奢ってくれないのも腹が立ってきた。たった1杯でドヤ顔紳士ヅラしてくるのなんなの?とさえ思うように。しかも、たまに「ごめんね、今日は給料前で厳しいんだ」とかぬかしてくるようになった。

50代で!年収1,000万以上で!未婚で!実家暮らしで!なんで今日はお金ないんだよ!湯水であれよ!掃いて捨てるほどあると言え!ほぼ毎晩、良心的価格で有名なうちの店しか来てないくせに!と言いたい気持ちを抑え、「全然気にしないで♡」と微笑んだ。

キャバクラでも許されないセクハラ

彼の最大の欠点。それは、注意しづらい独特なセクハラをしてくることだった。

彼は脇フェチだと宣言していた。何フェチであろうとそれは構わない。しかし、テーブルの端にあるものを取ろうと手を伸ばした際、脇がガラ空きになると「お、チャンスですね~」などと言いながら、これみよがしに脇の下に顔を潜り込ませて脇をのぞいてくる。

「ちょっとー!」と言うと、「こんなのセクハラだよね……?」とまた「そんなことないよ」を求めてくる。

一度だけ試しに「これはさすがにセクハラですよ」と返してみたら、「そっか……」とバツが悪そうに天井を眺め、わかりやすくポリポリと頭をかいた。

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エリートとか細身のスーツとか、彼が持っていたプラスポイントはこれですべてチャラになる。触られないセクハラでこんなに不快になるのは初めてで、新鮮な苦痛だった。毎回、脇の下に顔を滑り込ませてくるなんて、キャバクラじゃなかったらとっさにヒジでこめかみを押さえつけるだろう。

そもそもキャバクラ以外では絶対にこんなことしていないはずなのだ。キャバクラなら大丈夫だろうと、やっていいことと悪いことの境界線が曖昧になっている。

バレるカツラとバレないカツラは何が違うのか?

ちなみにこのおじさん、誰がどう見てもカツラだった。

夏場は蒸れるのか、頻繁にトイレに行き、頭頂部を拭いたりしているのだろう。戻ってくるたびに、少し浮いていたり、分け目の向きが変わっていたりしていた。

ほかの人にも高確率でカツラだとバレる。対面の席に座っているお客様がイジってる声が聞こえ、逃げるように席を移動してもらったこともあるくらい、ちゃんとバレていた。

カツラは誰にも指摘されていなかったら、バレていないというわけではない。まわりは言えないだけなのだ。薄暗いキャバクラでバレるのだから、明るい昼間のオフィスでバレない理由が見つからない。

今のご時世、カツラの品質が悪いわけではない。オーダーメイドの生え際までめちゃくちゃ自然に仕上げてくれるものもある。たぶん、おじさんはカツラのケアが雑なのだ。

女性でも仕事の関係やファッションでウィッグを被っている人がいるが、バレないことが多い。私も、ものまねやコントでカツラを被る機会が多かったが、それウィッグだったんだ~と驚かれることが多い。

バレるカツラとバレないカツラは何が違うのか? それはきっとしっかりケアしているかどうかだろう。

ハゲたおじさんは自分の頭を洗うとき、固形石鹸をこすりつけて泡立てるだけだろうが、ウィッグはぬるま湯で優しくシャンプーしてトリートメントしてタオルドライしてドライヤーで遠目から風を当てたりして、となかなか手間がかかる。

毎日長時間被るなら絶対に怠ってはならないケアだが、そもそもケアしなくちゃいけないことを知らないのではないか? だから、カツラの毛質がだんだん劣化して変なテかり方をしたり、あり得ないうねり方をしたり、ごわついたりしてバレてしまうのだろう。

さらに、分け目がなんなのかも理解していないのか、おかしな向きで被っている人も多い。ちゃんと鏡見て!慣れないで!初めて被った日のドキドキを思い出して!と言いたくなる。

誤解しないでほしいのだが、ハゲだからモテないわけではないし、カツラが悪いと言っているわけではない。ただ、失敗してるから気になってしまうだけなのだ。ネクタイだって曲がってたら気になるし、襟だって片側だけ立ってたら直してほしくなる。歯に海苔がついてたって気になる。

その逆でエリートで見た目がシュッとしていても、モテるわけじゃない。このおじさんの場合、にじみ出るキモさは頭皮と同じくらい隠し切れていなかった。

自分は違うと笑ってるあなたも当てはまるところがあるかもしれませんね。

【連載】本日は晴天なりのキャバクラ見聞録

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本日は晴天なり

太田プロダクション所属のピン芸人。キャバクラバイト歴10年、身長173センチの長身女子。推し事が中心の日常も、YouTube『本日は晴天ちゃんねる』にて垂れ流し中。

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