「死ぬかと思った」「ケガどころじゃない」片岡鶴太郎×山田邦子が振り返る、芸能界の歴史的証言【『電池以下』発売記念トークライブ】

2023.5.20

吉田豪と掟ポルシェによる雑誌『CONTINUE』の人気連載「電池以下」が、昨年11月に「吉田豪編」、今年3月には「掟ポルシェ編」として相次いで単行本化。その刊行記念トークイベントが5月7日に阿佐ヶ谷ロフトAで開催された。

ゲストはなんと片岡鶴太郎と山田邦子。鶴太郎は『吉田豪編』、山田は『掟ポルシェ編』にインタビューがそれぞれ収録されているとはいえ、吉田豪が「このふたり、一緒に呼んでいいんだっけ? どっちだっけ?」と思わず考えてしまうほど、今やテレビでもそろったところを観たことのない“大物”ふたり。彼らが阿佐ヶ谷ロフトAの手狭なステージに登場すると、会場には大きなどよめきが起こった。


盟友のふたりが出会いを振り返る

吉田豪(以下、吉田)この並びは奇跡ですよ」
掟ポルシェ(以下、掟)「ヤバいでしょう。うん、ちょっと記念写真欲しいですもん!」
吉田「そうそう、ホント普通に、囲みチェキとか販売すればバカ売れするのにって(笑)」

言うまでもなく、ふたりは伝説的番組『オレたちひょうきん族』(フジテレビ)で共演していた盟友。しかも、山田が2019年に独立するまで、同じ太田プロダクションに所属していた仲だ。そもそも、山田を太田プロに“スカウト”したのが鶴太郎だという。

片岡鶴太郎(以下、鶴太郎)「山田邦子という、まだ素人なんだけれども、素人番組を荒らしてるおもしろい子がいるっていうんで、うちの事務所で当時部長をやってた者が『鶴ちゃん、こういう子がいるんだけど』って。私もチラッとテレビでは見たことあったんですよ。『その子をちょっと口説いて、うちの事務所に入れようかと思うんだけど、どう思いますか?』『絶対いいと思う』『今日会いに行くんだけど、一緒に行ってくれない?』って、道玄坂の喫茶店行くわけ」
山田邦子(以下、山田)「渋谷のね」
鶴太郎「それで初めて会うわけですよ」
山田「懐かしー! 20歳よ」
(略)
鶴太郎「やっぱりもうすでにタレント性もあって、独特の彼女のファッションもあって、あー、この子はもう絶対行くなぁって」
吉田「その時点で」

鶴太郎「うん。それで『どう? 太田プロ来ない?』って(当時の部長が)言うんで、私も言うわけですよ。『いいと思うよ、邦ちゃんのカラーにも合うし、うちとしても欲しがってるし、よかったら、おいでよ』って口説くわけ。それが初めて」
山田「なんかね、やっぱ業界の人って怖いじゃないですか。私、師匠もいないし、普通の学校行ってただけだから。だから間に知っているタレントさんがいるっていうのは強いですよね。すごく柔らかい空気を作ってくれて。私のほかにも鶴太郎さんに間に入ってもらって、太田プロに入ってる人がけっこういるんですよ」
吉田「松村(邦洋)さんとか」
鶴太郎「そうですね、松村もそうだし、先頃、他界されましたけど(笑福亭)笑瓶ちゃんも番組で一緒だったんで、『うちの事務所どう?』って言って入れたりとか」
山田「短大卒業して、それでドラマが始まって(筆者注:『野々村病院物語』(TBS)などに出演)、私は学校のころにおかしいことばっかりやってたから、(ビート)たけしさんの番組とか、お笑いの番組にちょこちょこ出始めた中に太田プロの人がいて、『(連絡先が)自宅って書いてあるけど? 一回話しない?』って。
怖いから、実はいっぱい友達を喫茶店のまわりに待機させて、何かあったら入ってきてって言って(笑)。そしたら、鶴ちゃんもテレビだと明るい感じだけど、そのときカッコよくて。なんか猫背みたいにして『太田プロいいよお』って(笑)。全然いい感じなんで、こりゃあいい事務所だなと思って」

“あのころ”の芸能界を物語る、歴史的証言が連発

一方、鶴太郎を太田プロに誘ったのはビートたけしだったそう。そのたけしによって、鶴太郎のリアクション芸の才能が開花する。

山田「リアクション芸の元祖だよね。(鶴ちゃんを)たけしさんが呼んだのは、自由にツッコみたかったんだと思いますよ。本番見てて、わあ、鶴ちゃん死ぬかもって思ったことが何回もあるもん(笑)」
「鉄板で焼かれてるんですもん(笑)。ケガどころじゃない」
鶴太郎「まず最初に熱々のおでんを口の中放り込まれましたからね(笑)」
山田「ほんとに熱かったの! 今はちゃんと温度測って、ダチョウさんとかもキレイにやってっけど」
鶴太郎「だって、おでんを使うつもりで置いてないからね(笑)。たまたま冬という設定でこたつが置いてあって、その上にみかんが3つ4つ。それで、一応、鍋を置いておこうってね。消え物のつもりなんですよ。絶対使わないだろうけど、一応ただの鍋だけじゃあれだから、おでんの具かなんかが入れてあって。で、コントをやってて、パッと見たら、おでんがグズグズグズグズ煮えてる。それでたけしさんが、急になんとも言えない目をしたんですよ(笑)。あ、やべえなと思って」
山田「キラリっと光るとね(笑)」
鶴太郎「たけしさんがあの鬼瓦権蔵ですよ。『冗談じゃないよ』って。私は浦辺(粂子)さんなんですよ」
吉田「おばちゃまで(笑)」

鶴太郎「で、カパッと蓋を開けたら鬼のような湯気がガガーって上がったんですよ。たけしさんが『おばあちゃん、おでん好きだろ、おでん!』って。これはもうヤバいフリじゃないですか。『いや、あたしは猫舌だから』『んなことないよ、おでん大好きっておばあちゃん言ってた』『言ってないよ』『いいから』っていきなりちくわぶ入れられた(笑)」
山田「だんだんわかってきて汁がいっぱい染み込んだやつをやるようになったんだよね」
鶴太郎「それから毎週毎週、全然関係のない設定の中でもおでんが置いてある(笑)」

ほかにも「プールで足に重りを鎖でつながれて落とされた」といった、あの時代ならではの「死ぬかと思った」ヤバい体験談が次々と語られていった。

その後は、唯一の女性芸人としての山田邦子の戦い方や鶴太郎が芸人から役者へシフトチェンジしていくきっかけ、そこにあった鶴太郎の考えなどまじめな話から、バブル華やかりしころのタレントショップの話などが、丁々発止のトークで軽やかに明かされ、驚きと爆笑の連続。

中盤からは、寄せられた質問に答えていく形式に。鶴太郎とダンプ松本との“抗争”についてや、山田邦子が馳浩にキレられたといったプロレスファン必聴の話から、太田プロの先輩たちの話といった芸能史が明かされていった。アイドルの寝起きドッキリがどこまで本当かという質問には、当時の寝起きドッキリをもう一度観返したくなる答えが返ってくる。

さらに『全裸監督』村西とおるの話題では、鶴太郎が、なんと黒木香の作品を黒木本人と一緒に、彼女の解説つきで観たという秘話も明かされる。黒木と村西の関係性を目の当たりにして「男としてジェラシーを感じた」と語る鶴太郎は、当時のギラギラっぷりを窺わせたし、それをものまね芸に昇華させて、大きなムーブメントまでにしたことにすごみを感じた。

すべての話題が、鉄板話かつ貴重な歴史的証言。必見の内容だった。アーカイブは5月21日まで購入・視聴することができる。


『電池以下 掟ポルシェ 編』発売記念トークライブ‼

【出演者】
MC:吉田豪、掟ポルシェ
ゲスト:片岡鶴太郎、山田邦子
配信チケット:1,500円
※アーカイブは5月21日22:00まで購入可。5月21日23:59まで視聴可能。チケット購入はこちら

『電池以下 吉田豪 編』『電池以下 掟ポルシェ 編』

発売中
著者:吉田豪、掟ポルシェ
定価:1,760円(税込)
発行:太田出版


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てれびのスキマ

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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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