日々、好きなアイドルを応援する活動、通称・“推し事”に全力を注いでいるお笑い芸人の本日は晴天なり。彼女が現在、夢中となっているのは11人組のグローバルボーイズグループ「JO1(ジェイオーワン)」だ。
最近のファン文化では、新曲のリリースやライブの開催など推しからの供給を待つだけでなく、推しのために駅や街頭ビジョンに広告を出したり、推しの名前で慈善活動を行うなどファンが推しのために動くことも主流となっているという。そんな“ファンからのプレゼント”の中で特に彼女が驚いたものを紹介する。
発想力と企画力に長けたオタクたち
アイドルの誕生日やデビュー記念日のお祝いの際、ファンたちが有志で広告を出す「応援広告」なるものをご存じだろうか? これはアイドルファン界隈では定番になってきている文化のひとつだ。街中を見渡せば、駅のポスターや街頭ビジョン、特に新宿・渋谷・池袋あたりでは高確率で見つけることができる。
これはもともとK-POP発祥の文化らしく、先月、韓国に行った際、駅やバス停など至るところに応援広告があった。これが本場の広告か!とテンションが上がり、応援されているのがどこの誰なのかも知らないが、思わず写真を撮ってしまった。
JO1の場合、事務所から期間限定で使用していい素材(アー写)が発信されるので、それらの写真を使用したり、ファンの方々のイラストや似顔絵を用いて製作されているものが多い。そのデザインやアイデアは、そういったことを生業にしている人が手がけているとしか思えないほど、どれもこれも毎回レベルの高い広告となっている。
岡山や京都や沖縄などメンバーの出身地に広告を出すファンもいる。現地に行けなくても、地元で暮らすメンバーの友達や親御さんにこんなに愛されているんですよ、とアピールできるため、親御さん思いな広告だと感じた。
JO1への応援やお祝いは応援広告に留まらず、正直、ぶっ飛んでる規模のものが多数ある。打ち上げ花火を実施したり空中バナー広告を出したりドローンショーを開催したり……。最近では、そういったお祝いに慣れてきてしまっている自分が怖い。よくよく考えたら、企業でもなんでもない一般のファンによって、めちゃくちゃすごいことが開催されているのだ。その情熱を目の当たりにすると「JO1のファンって、できないことないんじゃないか?」と、頼もしささえ感じる。
木全翔也くんは連載企画を持つほどお寿司が大好きなのでスシローのモニターに、大平祥生くんはカメラが好きなのでフラッシュ撮影をするとイラストが浮かび上がる仕組みの広告、金城碧海くんは名前が「スカイ(空)」なので、シドニーの空に飛行機で「HAPPY SKY DAY」と描いたり、メンバーの個性に合わせた広告もアイデアが光っていた。
ひこうき雲でメッセージなんて『花より男子』の最終回で道明寺司がやったやつじゃん……。オタクはマンガを超えてくる。
私はファンの皆様が出稿してくださった応援広告を見に行くのが好きなので、佐藤景瑚くんのアドトラックを何時間も追いかけたこともあった。
白岩瑠姫くんのゆりかもめを丸々トレインジャックした広告は圧巻だった。
ちなみに、瑠姫くんは王子キャラ……というか王子なので、別の年にはイギリスにあるお城の一部の土地と勲章がプレゼントされた。これはおとぎ話ではなく令和の実話だ。“白岩瑠姫”という名前が本名な時点で城をプレゼントされても違和感はないが、その発想と企画力を持ち合わせているオタクはいったい何者なんだ。
メンバーの名前で慈善活動や寄付も
奇想天外なプレゼントはグローバルグループならではなのだろうか。日本だけでなく世界中にファンがいるため、瑠姫くんのお城企画をはじめ、海外のファンが企画しているものも多い。
川尻蓮くんのファンは、NYのタイムズスクエアに広告を出した。
NYだよ?
世界の中心だよ?
みんなが被ってる帽子に書かれてるあのNYだよ?
ファンがお金を出し合っているとはいえ、こんなことがあるだろうか?
海外の広告はさすがに見に行くことができず、当時4畳の部屋を悔しさでのたうち回っていた。しかしそのとき、123☆45というコンビのヨーコちゃんがちょうど運よくNYにいた。
こんなことあるだろうか? 友達の芸人がたまたまNYにいるなんて。あの帽子のNYに。かっこよ過ぎるだろヨーコちゃん。動画の撮影に簡単なレポートまでしてくれた。優し過ぎるだろ、ヨーコちゃん。
お城やタイムズスクエアの話題は、JO1本人たちがエピソードトークとしてテレビなどで披露している。そりゃ“ファンからのプレゼント大喜利”で城の土地の所有権(庭で釣りとかできるらしい)ってかなり強いエピソードだもんな……。私なんて「入院中にリバビリで履いていた靴です。サイズが一緒なのでぜひ使ってください」と事務所に送られてきたスニーカーぐらいしか、ファンからのプレゼント大喜利に出せそうなネタがない。
取り上げ出したらキリがないくらい、あらゆる角度から本人たちのみならずほかのファンをも喜ばせるプレゼントの数々。そんな中で私が一番衝撃を受けたのは、デビュー後初めての豆ちゃん(豆原一成)の誕生日。「最年少」「オーディション1位デビュー」「デビュー後、初の誕生日」ということもあり、とんでもなく気合いが入っていたようだ。
豆ちゃん名義でアフリカで野生動物であるゾウを保護、中国でパンダを保護、スコットランドの湿地を保護。スコットランドの湿地帯保護については、所有権、世襲権、勲爵士称号が与えられるとのこと。
どーゆうこと〜〜〜〜〜〜〜〜〜?!??!! ファンからの誕プレ大喜利は豆ちゃんが優勝ぉぉ!!
アイデア突飛だな〜と感心していたが、実はこういった慈善活動や寄付のプレゼントはK-POP界隈では流行っていて、アイドルのイメージアップにつながるという意味もあるらしい。ちなみに最近のトレンドは森を作ることらしく、韓国にはBTSのRM氏の名前がついた森がある。そこまで計算されたプレゼントだったなんて……大喜利扱いした自分の底の浅さを感じた。
豆ちゃん、18歳になるだけで地球を救うのすごいな……と思っていたら、お次は宇宙へ! なんと、ふたご座惑星が11個送られた。こちらの費用はNASAの宇宙捜索活動に使われるとのこと。数年後、宇宙関連の仕事をすることになったJO1。その際のインタビューで「ふたご座の惑星を11個もらいました」と言った豆ちゃんに、MCは「どういうことですか?」と驚いていた。そりゃそうだ。
自分のできる範囲でお祝いすることが一番
かくいう私は、最推しのひとりである與那城奨くんをホテルでお祝いしたことがあった。
宇宙のあとに出す話ではないが、お祝いは想いがこもってたらそれでいい。レンタルルームなどを借りて、飾りつけしたりケーキを作ったりなどの個人的なお祝いもSNS上でたくさん見かけるので、自分にできる自分のやりたい方法でお祝いしたらいいと思う。
ちなみに今回、編集部の方にお声がけいただき、QJWebサイトのトップに金城くんへのお祝いメッセージを掲載させていただきました。テキストだけでなくURLリンクも貼れるそうなので、興味がある方はぜひ、推しへのメッセージを出してはいかがでしょうか。
これまでオタク活動について完璧主義だった私は、全力で追っかけて、すべてを追えていないと気がすまなかった。推しが出ているすべての雑誌、番組、ネット記事や動画を記憶するレベルでチェックしたい。私にはもともとオタクにありがちなコレクション癖があり、グッズも情報も収集せずにはいられなかった。
しかし、JO1が売れていくにつれ、ほんの数時間SNSを離れるだけで浦島太郎みたいな状態になっていることが多くなった。寂しく感じる反面、彼らの活動の幅が広がっている証拠だと言い聞かせていた。
だけど、この浦島太郎体験が「すべてを追う必要はない! 自分のペースで推し活するのが一番だな」と、極端な考え方を改めるキッカケにもなった。
いち早く情報をキャッチしなくてもいい。翌日でもいい。知らないことがあってもいい。どうせ推しの昨晩見た夢まで知れるわけじゃない。CDが買えないならストリーミングやダウンロードで聴けばいい。それもできないならYouTubeを観ればいい。
必死に情報を追っていても、ちゃんと咀嚼できないうちに、また次の情報が発信される。追えなくなったら、心が離れてしまう人もいるだろう。それはアイドル側からしても寂しいことだと思う。だからこそ、ずっと好きでいるために無理はしない。
もちろん人生を捧げるレベルで熱心なオタクたちを尊敬しているし、憧れもある。だけど、情報や知識がなければ、好きだと言っちゃいけない空気をぶち壊したい。これはアイドルだけではなく趣味全般に思うことで、詳しい人間がビギナーを排除し、閉鎖的になっていくこともある。
私は年齢のせいか、記憶力が深刻に低下してきており、『笑点』が出てこなくて「カラフルなおじさんが並んでるやつ」と言ったり、オーバーオールのことを「石塚(英彦)さんがいつも着てるやつ」と言ってしまう。そんな自分に絶望している。
昔、嵐のオタクをしていたころは曲名はもちろんのこと、歌詞一字一句、歴代CDの発売日、アルバムの曲順、歌唱パートと順番、ライブのセットリスト、DVDでは次に誰が映し出されるかなどのカメラワークまで自然に記憶していた。でも、今の記憶力ではできない。そこで私は、自身のYouTubeライブでJO1を中心に推しグループの活動について生配信で話している。
同じ趣味を持つ人たちからコメントがもらえ、好きなことを一緒に話せて楽しいというのが一番だが、私にとってYouTube配信はオタ活備忘録でもある。私がありとあらゆる情報を忘れるし、知らないから、いつも視聴者の方が教えてくれる。普通、YouTubeは情報を発信するものだが、私は配信しながら情報をもらう系YouTuberだ。そんなYouTuberがいたっていいだろう。もちろんチャンネル登録者は増えないが。
私のJO1愛は、視聴者に支えられながらこれからもつづく。
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