「元・社長、現・地下芸人」の神宮寺しし丸。46歳。類を見ない肩書を持つ彼が、学校や職場などでさまざまな悩みを抱え、生きづらさを感じている皆さんが少しでも生きやすくなるような「生き方説明書」なるものを綴る連載コラムです。
今月のしし丸さんは、自身を振り返るために“自分インタビュー”に挑みました。「静かな退職」とは、いったい何……?
年末総決算・自分インタビュー
今年も師走となりました。一年を振り返るにあたり、自分で自分にインタビューしてみることにします。すると、自分自身を振り返ることになりました。
──今年もそろそろ終わりですが、一年を振り返っていかがでしたか?
しし丸 まぁ、上々ですね。月一でやらせて貰ってるナレーションの仕事もレギュラー継続しましたし、格闘技のライターやYouTubeをやってる効果もあって、リングアナの仕事が入ったり。あとQJWebでのコラムも編集者さんには大好評で。充実した一年となりました。
──「編集者さんには大好評」ということは読者には……まぁいいです。お笑い芸人のお仕事は?
しし丸 あぁ、もちろんありましたよ。今年の5月に関西の超人気番組『明石家電視台』に出演させて頂きました。収録の手応えもまずまずで、オンエアでも結構使って頂いてました。今年は幸先が良かったですね。
──幸先が良かった? 5月の話ですよね? 1〜4月までの4カ月は何をしていたのですか?
しし丸 だから、ナレーションとか、格闘技のYouTubeとか。
──お笑い芸人のお仕事は?
しし丸 えーと……なかったです。
──『明石家電視台』は手応えがあったのとのことですが、その後、仕事は増えましたか?
しし丸 今のところはまだ……もうちょっと待ってみます。
──その必要はありません。放送後半年以上経っています。ここから仕事が増えることはありませんし、もはやあなたが出ていたことを覚えている人はいません。
しし丸 そんことないです! 『明石家電視台』は関西の超人気番組なんですよ!
──さっきからそれなんですか? その超人気番組に出て、全く人気が出ないあなたはなんなんですか? そもそも『明石家電視台』出演も事務所の先輩、土田晃之さんのバーターですよね?
しし丸 なにがいけないんですか? 僕らバーターリアンは、バーターを勝ち取る為に日々目に見えないバータートーナメントを勝ち抜いているんです。もしバーターNo.1を決める大会があれば僕は五連覇くらいしてるはずです! キングオブバーターです!!!
──言ってて恥ずかしくないですか? 今年やったお笑い芸人としての仕事は『明石家電視台』のみですか?
しし丸 そんな訳ないじゃないですか! テレビ朝日の情報バラエティ番組に出ましたよ!
──情報番組ですよね?
しし丸 情報バラエティ番組なのでギリギリお笑いの仕事です!
──その番組の司会はどなたでしたか?
しし丸 劇団ひとりさんです。
──バーターということでよろしいですか?
しし丸 だから僕はバーターを勝ち取る為に日々──、
──もうそれ大丈夫です。あなたは芸人を「静かな退職」されてるのでは?
しし丸 はあ?
──クワイエット・クィッティング(quiet quitting:静かな退職)といって、労働から遠ざかり、必要最低限の労働しかしない。でも、完全に働くのをやめるわけでもない。という労働スタイルです。簡単に言うと、労働から「半分おりる」状態です。
しし丸 僕は芸人をおりてません!!!
──しかし、現状を聞いている限り「静かな退職」をしていると判断せざるを得ません。
しし丸 勝手に判断しないで下さい! 僕は芸人を辞めません!
──なぜ辞めないのですか?
しし丸 なぜって……売れると思ってるから。
──はい? 声が小さくて聞こえないです。
しし丸 売れると思ってるから!!!
──気が触れてますよね? 今年でお幾つになられました?
しし丸 ……47歳です。
──はい? 声が小さくて聞こえないです。
しし丸 47歳です!!!
──もう怖いです。野球で例えるなら、47歳のおじさんが「巨人に入る」と言って庭でバットを振りまくっている状態ですよ。
しし丸 「巨人に入る」と言ってないほうが怖いだろ!
──どういうことですか?
しし丸 「巨人に入る」という目標もなく、ただ庭でバットを振りまくっているほうが怖いだろがい!
──どっちも怖いですよ。
しし丸 だから「売れる」という目標を持ってる俺は正しいんだぁぁぁぁぁ!!!!!!
──分かりました、分かりました。分かったから、壁に頭をぶつけるをやめて下さい。では、この現状からどのようにして売れようお考えですか?
しし丸 はっきり言って、賞レースで優勝して売れるとかの“王道売れ”はもう諦めてます。
──あっ、そこは理解しているのですね。
しし丸 バカにしないで下さい! 今からダウンタウンさんになれるとは思ってません。野球で例えるなら「巨人で四番を打つ!」から「どの球団でもいいからプロ野球選手になる!」まで目標を落としているんです。
──まだ目標設定が高い気がしますが。
しし丸 とにかく王道でなくとも売れようと。それが“おもしろリングアナ”なのか“おもしろコラムニスト”なのか分かりませんが。
──すごくつまらなそうです。気になるのは、その“おもしろ”があなたにあるのか?という点です。
しし丸 それがないからこそ王道ではない所を狙うんですよー! リングアナ、コラムニストでもダメなら“おもしろ警備員”や”おもしろコンビニ店員”を目指します。
──なれるといいですね……お疲れ様でした。
【自己嫌悪】
自分インタビューはふざけているように見えるかもですが、自分を見つめ直すのに結構オススメです。弱い自分や醜い自分をあぶり出してくれます。
しかし、当然自分に甘い質問をする、ぬるいインタビューになりがちです。その時の強い味方が「自己嫌悪」です。自己嫌悪した時の気持ちを思い出し、その自己嫌悪を麻酔なしでえぐり取ってくれるインタビュアーを作り上げましょう。インタビュー後は自己嫌悪が取れてすっきり爽快です。
※より傷口が悪化することも稀にあり。その時は激甘インタビュアーに交代して、ぬるいインタビューを楽しみましょー
連載「神宮寺しし丸の“生き方説明書”」は、毎月1回の更新予定です。