『キングオブコント2022』で爪あと残してほしい芸人5組

キングオブコント

文=かんそう 編集=鈴木 梢


9月6日、『キングオブコント2022』ファイナリストが発表された。今年、見事決勝へと駒を進めたのは、いぬ、かが屋、クロコップ、コットン、最高の人間、ニッポンの社長、ネルソンズ、ビスケットブラザーズ、や団、ロングコートダディの全10組。

勝ち上がった芸人たちを見ると「予測不可能」という点においては、過去最高と謳われた2021年大会を超えるほどの混沌としたメンバーに、今から興奮で身震いが止まらない。

決勝戦は10月8日(土)19時からTBS系列にて生放送。誰が優勝してもおかしくない今大会だが、カルチャーブログ『kansou』などで執筆を行うかんそうが、特に注目したい5組を紹介する。

いぬ:どんな状況からでもひっくり返せる一撃の破壊力がある

いぬ キングオブコント
いぬ(左・有馬徹、右・太田隆司)

毎朝散歩をして川の写真をツイッターにアップしつづけている有馬と、Uber Eatsが日本に進出した当初から配達をつづけているUber Eats最古参の太田からなる「いぬ」。『水曜日のダウンタウン』(TBSテレビ)で企画された30秒で最もおもしろい芸人を決める「30-1グランプリ」で披露した『おしっこビール』は私が去年最も衝撃を受けたネタだった。しかも、この『おしっこビール』以外にも一定の層に爆発的にウケて一定の層に死ぬほど怒られそうなネタを数多く抱えていて、どんな状況からでもひっくり返せる一撃の破壊力がある。人間的にもじゅうぶんなインパクトのあるふたりが今大会をきっかけにブレイクし、Googleで「いぬ」と検索し「犬」に勝つ未来が見たい。

最高の人間:互いのエッセンスが絶妙に混ざり合っている

最高の人間 キングオブコント
最高の人間(左・吉住、右・岡野陽一)

「吉住と岡野陽一のユニット」この文面だけで何をしでかすのかわからない。それぞれのネタが笑えるだけでなく、心にいつまでも残りつづける鉛のような重たさがあるのに、それが一度に襲いかかってくると考えるだけで脳汁不可避。YouTubeの『吉住よろしくやってるチャンネル』で岡野陽一が吉住にギャンブルの素晴らしさを徹底的に説いていたことからも、互いのエッセンスが絶妙に混ざり合っているのがわかる。先日公開されたコメント動画では、ブランクのせいでセリフが出てこない場面があったという岡野陽一に対し、ワンミス8万の罰金を課した吉住。金が絡んだときの岡野陽一は0か100。ぜひ笑いの確変大当たりを引いて優勝という名の一撃21万発を起こしてほしい。

クロコップ:「消費カロリー量」の観点でいえば間違いなく優勝

クロコップ キングオブコント
クロコップ(左・荒木好之、右・しょうた)

「ARAKAKU」(架空の格闘技団体)のファン代表を務める荒木好之と、運営しているアメーバブログのタイトルを眞鍋かをりのアメーバブログとまったく同じにしているしょうたからなるクロコップ。2018年の『おもしろ荘』で優勝し、視聴者の脳髄に謎のメロディを刻みつけた『空手の子』や、太鼓の達人を擬人化し話題となった『にんじゃりばんばん』が象徴するように「消費カロリー量」の観点でいえば間違いなく間違いなく優勝。「五感が気持ちよくなる」人間の本能に訴えかけてくるようなネタは、一度観るとその日の夢にさえ出てくるような理性ではけっして抗えない中毒性がある。ネタに全振りするために自分のYouTubeの更新を1年ストップさせていたほど今大会に賭けていた彼らの努力が報われてほしい。

ネルソンズ:最初から最後まで観る者を飽きさせないトリオ

ネルソンズ キングオブコント
ネルソンズ(左・和田まんじゅう、中央・青山フォール勝ち、右・岸健之助)

剣道3段の岸健之助と、レスリングの元日本代表選手・青山フォール勝ち、青山と同じ中学のレスリング部でヤンキーだった和田まんじゅう、物理で戦えば確実に芸人トップクラスの強さを誇るネルソンズ。最初から最後まで観る者を飽きさせないトリオという利点を生かした展開力と、そのすべてを完璧に体現する圧倒的な運動能力は、ネルソンズにしかない武器だ。そしてなにより、降り注ぐすべての悲劇を受け止める和田まんじゅうの唯一無二のキャラクター性はホアキン・フェニックス版のジョーカーの雰囲気すらある。

コットン:個性がまったく違うふたりの奇跡のバランス

コットン キングオブコント
コットン(左・西村真二、右・きょん)

すべての才能が集まる男・西村真二と、伝説のグループ「ザ・エレクトリカルパレーズ」メンバーのきょんからなるコットン。とにかく演技が抜群にうまく、どのネタも眩し過ぎて目が焼かれるほどの圧倒的主人公感を醸し出す西村と、その一挙手一投足がウソのようにコミカルなきょんという、個性がまったく違うふたりが奇跡のバランスの上で成り立っていて、奇をてらった設定のネタでなくとも唯一無二の世界観が生まれる。

爽やかとコミカル、リアリティとファンタジーが入り混じった感覚は現実というよりも『SKET DANCE』や『おそ松さん』などのギャグアニメを観ているような感覚に近い。そしてなんといっても、どのネタもオチが秀逸で、頭から爪先まで最後まで味わえるのがコットンの魅力。時には観るものを幸せにするようなコントもあり、コットンのネタは世界を平和にしてくれるのではとすら思ってしまう。オズワルドや空気階段といった今最も勢いのある17期生が再び輝く瞬間を観たい。

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