『さらば青春の光がTaダ、Baカ、Saワギ』の狂気と愛
先月のとある2週間、『さらば青春の光がTaダ、Baカ、Saワギ』(TBSラジオ/以下、タダバカ)がいろんな意味で伝説だった。
まず、最初に起こったのが、7月16日放送回。この日は東ブクロが体調不良のために番組を休んで自宅療養中だったのだが、残された森田哲矢は「ひとりでやるわけにはいけない。ブクロさんあってのラジオ」と言い「ラジオネームうんちパフェの30分間ノンストップブクロ応援コール」、つまり「番組のすべてをリスナーに丸投げする」という大奇行に出た。
30分間の衝撃と恐怖
「ブクロの安静は絶対~、飲んでお薬、飲んでお薬、吐いちゃダメ、寝んねしな、スヤスヤスヤ、お薬~お薬~、飲んで飲んで飲んで、飲・ん・で、お薬~お薬~、飲んで飲んで飲んで、飲・ん・で、ブクロ~飲んで、お願~い、ブクロ飲んでよお願いカロナール、ブクロ~飲んで、お願~い、ブクロ飲んでよお願いロキソニン、治せ治せ治せ、治せ治せ治せ、治せ治せ治せ、ブクロ、治せ治せ治せ、治せ治せ治せ、治せ治せ治せ、ブクロ、ブクロ~治せ、ブクロ~治せ、ブクロがおらんと始まらない、ブクロ~治せ、ブクロ~治せ、ブクロがおらんと始まらない、誰が読むのかCity汁、イェ~イ」
ぜひ『ラジオクラウド』のアーカイブで、これが30分間つづく衝撃と恐怖を味わってほしい。
定番の飲みコール「愛の東京コール」、慶應義塾の応援歌「ダッシュKEIO」、松平健「マツケンサンバⅡ」、瑛人「香水」、果てはRHYMESTER宇多丸の『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ)のオープニング曲「After 6」やパンサー向井のラジオ番組『#ふらっと』(TBSラジオ)テーマ曲である関取花の「ラジオはTBS」まで、古今東西のありとあらゆるパーティーチューンの替え歌で東ブクロを鼓舞。途中ラジオネーム・むけ男も参戦し、番組はさらに混沌を極めた。
げに恐ろしきは、ただ名前や療養の応援を連呼するのではなく「こんなもん聴いてられるか」と思うギリギリのところで、タダバカリスナーやラジオリスナーが反応するような小ネタを挟むことで停止ボタンを押させないこと。本当に30分やってしまう鬼人のごときタフネスと、尽きることのないボキャブラリーに耳と脳がおかしくなりかけたのだが、そのハーモニーは般若心経にも似た感覚すらあり、これを聴いたことによってあらゆる煩悩から解放され「無我の境地」を聴いたような気さえした。
タダバカとリスナーの愛にあふれた関係性
そもそも、タダバカとリスナーとの関係性は「異常」のひと言に尽きる。もはや「距離感が近い」とかそういうレベルを遥かに超えて「番組とリスナーが同一」と言っても過言ではない。東ブクロの嫁をリスナーから募集し、実際に電話をつないで対決させる「ブクロの嫁決定戦」然り、「梅田カウパー」と称したリスナーを集結させ「カウパーの出る話」を梅田サイファーとバトルをさせた回然り、ときにパーソナリティ以上に番組に関わることもある。
その影響力はときに番組を超え、たとえばラジオネーム・坂口ケンタウロスはその声のよさから、さらば青春の光単独ライブ『五穀豊穣』のラジオCMを担当しているだけでなく、アルコ&ピース平子祐希が出演するラジオ番組『おとなりさん』(文化放送)のジングルにも抜擢されるなど、その活躍は番組の枠を超え、ラジオ業界全体へと広がっている。そういう意味では、タダバカはある意味最も「リスナーへの愛」にあふれた番組なのかもしれない。
さらに、次の週は「自宅療養中の東ブクロにひとりでラジオを録らせてそれを聴く」というまた前代未聞の試みを敢行。自宅にひとり、しかもまだ体調も万全ではないであろう状況にもかかわらず、普段とまったく変わらないテンションでコーナー「CITY 汁 CLUB」「むらっとフラッシュ」「港のヨシタカ」を読み上げ、「味覚がなくなってなんのためにメシ食ってるのかもわからん、結局ウンコになるだけ。だったらウンコ食ってたらいいやん」と軽快なトークを繰り広げる東ブクロの声を聴いていると、病気を公表し「タバコはやめた」と言いながら会見で堂々とタバコを吸い上げた勝新太郎を思い出した。
この放送を受け森田は「なんか癖になりますよね? これもう一週やりません?」と笑いながら振り返った。この危機的状況を心の底から愉しむ、もはや「魔王」としか言いようがない。
さらば青春の光というコンビとタダバカという番組の恐ろしさを改めて思い知らされた2週間だった。
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