『超現代語訳×最新歴史研究で学びなおす 面白すぎる! 日本史の授業』:PR

聖徳太子は脇役?秀吉はヤバいやつだった?歴史が苦手な人にこそ読んでほしい入門書『面白すぎる! 日本史の授業』

2022.5.31
聖徳太子は脇役?秀吉はヤバいやつだった?歴史が苦手な人にこそ読んでほしい入門書『面白すぎる! 日本史の授業』

文=菅原史稀 編集=森田真規


2022年2月に刊行され、日々アップデートされている日本史がわかりやすく、おもしろく紹介されている本として話題になっている『超現代語訳×最新歴史研究で学びなおす 面白すぎる! 日本史の授業』(あさ出版)。

歴史好き芸人・房野史典氏×歴史研究家・河合敦氏による“異例のタッグ”が著した『面白すぎる! 日本史の授業』の魅力を、これまで日本史に苦手意識がありながらもこの本は「革命的な歴史解説書」だと感じたというライターが、特に驚かされたトピックを適時抜粋しながら紹介する。

次々に覆される日本史の定説

日本史の授業がとにかく苦痛だった。

黒板にびっしりと書かれた単語と数字をひたすらノートに書き写して、テスト前には呪文のようにひたすら唱え、そして忘れていく。その作業が果たして何になるのかわからず、すべての学生に等しく与えられた“苦行”だと思っていた。

本稿で紹介する『面白すぎる! 日本史の授業』は、日本史を学ぶことを“苦行”だと思っている人々にとって、まさに革命的な歴史解説書である。

“歴史好き”として知られるお笑いコンビ「ブロードキャスト‼」の房野史典氏、そして歴史研究の専門家・河合敦氏が、交換日記のような軽妙なやりとりで歴史を深掘りしていく本書。そこには、思わず「えっ、そうなの?」と驚いてしまうような日本史のトピックが次々と登場し、掘り下げられていく。

まずは、その内容をいくつか紹介しよう。

房野史典
お笑いコンビ「ブロードキャスト‼」の房野史典氏
河合敦
歴史研究家・河合敦氏

聖徳太子が小学校では英雄、高校では脇役のワケ

『面白すぎる! 日本史の授業』P16
『面白すぎる! 日本史の授業』P16より(イラスト=川崎タカオ)

名前を聞けば、誰しもがピンとくるであろう「聖徳太子」。小学校では“古代史きってのヒーロー”と教えられる歴史上の超有名人だが、今の高校の歴史教育では“脇役”として身を潜めてしまうのだそう。

その原因について、河合氏は「現在は、(中略)厩戸王(※編集部注:聖徳太子の生前の呼び名/うまやどのおう)は有力な皇子であるものの、政治を主導したわけではないというのがほぼ定説になっています」と解説。では、なぜ小学校と高校の教科書でそんなにも扱いが変わってしまうのか?

理由の一つは、文科省の学習指導要領(教科書内容の規準)です。同書には「次に掲げる人物を取り上げ、人物の働きを通して学習できるよう指導する」と記され、42名の歴史上の人物をあげているのですが、その中に聖徳太子が含まれているんです。授業で取り上げるからには、「聖徳太子は単なる脇役ですよ」とは教えられませんので、ヒーロー扱いせざるを得なくなるのでしょう。

『面白すぎる! 日本史の授業』P25、河合敦の解説より

今の子供たちが抱く聖徳太子のイメージが“ヒーロー”から“脇役”になってしまう背景には、文科省による大人の事情があったというのは驚きだ。

鎌倉幕府は「イイクニ(1192)」でも「イイハコ(1185)」でもない

『面白すぎる! 日本史の授業』P52
『面白すぎる! 日本史の授業』P52より(イラスト=川崎タカオ)

また、現在放送中のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも注目を浴びる鎌倉時代について、房野氏は驚くべきこんな事実を明かしている。

「鎌倉幕府の成立は、『イイクニ(1192)つくろう』から『イイハコ(1185)つくろう』に変わった」
歴史は変わるもの。それに付随して歴史の教科書も変わる具体的な例の代表格、「イイクニ」→「イイハコ」へのチェンジ。
(中略)
実は、鎌倉幕府の成立はイイハコ(1185)という説をメディアで広めたのは、何を隠そう河合先生です。ご著書『逆転した日本史』(扶桑社新書)の中でもこのようにおっしゃってます。

「日本で最初に鎌倉幕府の成立が『イイハコ(1185)』に変わりつつあるとバラエティ番組で話したのはこの私だ。(中略)でも、はっきりいってこの話、ウソなのである」

ウソでした。衝撃止まらず。
先生は続けてこう書かれています。

「武家政権としての鎌倉幕府が成立した年については、現在も定説なんてないのだ」

衝撃の波状攻撃。定説ありませんでした。

『面白すぎる! 日本史の授業』P53-54、房野史典の解説より

上記のあとには気になるその理由が詳しく紐解かれているため、本書を実際に手に取って確認してほしい。

実は「殺してしまえ」じゃなかった、織田信長

『面白すぎる! 日本史の授業』P122
『面白すぎる! 日本史の授業』P122より(イラスト=川崎タカオ)

歴史が変われば、そこに登場する人々の人物像も変わっていく。房野氏は、「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」で知られる人気武将の代表格・織田信長の意外な顔を紹介している。

これまでの信長のイメージを端的に申し上げるなら、
「古い体制にツバを吐き、革新的なアイデアと戦術で天下統一に野心を燃やした、戦国時代の風雲児」
といったところでしょうか。
(中略)
近年の信長評は一変しております。
革新的や破壊者といった原液が薄められ、これがカルピスならもはや白濁したただの水、と言うように、信長を信長たらしめた特色がことごとく“なかった”ものになってるんですね。
ここ最近の信長の評価をこれまた端的にお伝えすると、
「既存の勢力と協調しながら、国内に秩序と平和をもたらそうとした保守的な大名」
それが織田信長、といった感じ。この変わり様はもう脱皮レベルです。

『面白すぎる! 日本史の授業』P123-125、房野史典の解説より

豊臣秀吉は、相当ヤバいやつだった

『面白すぎる! 日本史の授業』P136
『面白すぎる! 日本史の授業』P136より(イラスト=川崎タカオ)

では、「鳴かぬなら 鳴かせてみせよう ホトトギス」の豊臣秀吉はどんな人物だったのか? 数々の逸話から、人を魅了する“人たらし”だったと言われるが……。

秀吉の自筆の手紙はけっこう残っていて、特に親族に対しては愛情深い、心遣いの細やかな人でした。
(中略)
ただ、それで秀吉という人物を判断するのは早とちりというもの。
確かに優しいところもありましたが、この秀吉、相当、ヤバいやつなのです。
たとえば淀殿が最初の子を妊娠した天正17(1589)年、秀吉の邸宅・聚楽第の門の白壁に落書きが見つかりました。
なんて書いてあったのかははっきりしませんが、どうやら
「淀殿の子の父親は秀吉じゃない。急に秀吉に子ができるなんて怪しい」
といった類いの内容だったようです。
怒った秀吉は、門番をしていた17人の武士の鼻と耳をそぎ落としたうえで磔(はりつけ)にしたのです。それだけではすみません。犯人逮捕を厳命し、尾藤道休という者が関与していたことがわかると、彼をかばった僧侶を含めて数人を捕まえて殺害しました。
ただ、これだけでは怒りが収まらず、さらに道休が住んでいた家を町ごと焼き払い、町の人々を連行し、60人以上を六条河原で殺したのです。
その中には老人も子どももいました。その後も逮捕者が続き、あわせて113人がこの事件で殺されたと言います。
たかが落書きなのに、常軌を逸しています。

『面白すぎる! 日本史の授業』P147、P149-150、河合敦の解説より

“鎖国”をテーマにしたコラボ動画も!

ここに紹介したほんの一部の内容からでも、日本史の意外な面白さをおわかりいただけたのではないかと思う。

タイトルに「超現代語訳×最新歴史研究で学びなおす」とあるように、芸人・房野氏による軽快な語り口、そして専門家・河井氏による最新の研究結果から見る歴史観が合わさった本書。その最大の魅力は、暗記科目として受け止められがちな日本史のイメージを変え、その面白味を読者に再発見させることにフォーカスが当てられている点だろう。

ちなみに、著者のふたりとエンタメダンスユニット「エグスプロージョン」がコラボした「『鎖国』踊る授業シリーズ」の動画も公開されている。本書が気になった方は、こちらもぜひチェックしてほしい。

『鎖国』踊る授業シリーズ エグスプロージョン feat.Atsushi & Bono

『超現代語訳×最新歴史研究で学びなおす 面白すぎる! 日本史の授業』

『超現代語訳×最新歴史研究で学びなおす 面白すぎる! 日本史の授業』

著者:河合敦、房野史典
発売:2022年2月24日
価格:1,650円(税込)

あさ出版の本


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