豆原一成が“19歳の男の子”の優しく真剣な眼差しをのぞかせた『メモリーオフ』【JO1初主演ドラマ『ショート・プログラム』レビュー】

2022.3.18
豆原一成/『メモリーオフ』より

(c)あだち充・小学館/吉本興業
文=新 亜希子 編集=森田真規


2022年3月4日にデビュー2周年を迎えた、11人組のグローバルボーイズグループ「JO1(ジェイオーワン)」。あだち充の同名短編集を原作に、彼らがそれぞれ1話ずつドラマ初主演を務めた『ショート・プログラム』が3月1日よりAmazon Prime Videoにて配信されている。

QJWebでは、このドラマの概要と見どころを記したレビューを1話ずつ掲載していく。第10回は、豆原一成が主演を務めた『メモリーオフ』を紹介する。

JO1主演『ショート・プログラム』30秒|Amazonプライムビデオ

熱い思いと強い向上心を持ったJO1の最年少メンバー

『メモリーオフ』主演の豆原一成は、岡山県出身の19歳。彼らを輩出したサバイバルオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN』にて最終順位1位に輝いた、JO1の最年少メンバーである。地元のダンススクールでダンス漬けの日々を送りながら、キッズクラスのインストラクターも任されていた実力者であり、パフォーマンスに対する熱い思いと強い向上心の持ち主だ。

しっかり者でありつつ、どこか初々しさを残した愛される好青年だが、最近は年長メンバーにちょっかいをかけたり、JAM(JO1のファンネーム)に遊び心を見せたりと、無邪気な素顔ものぞかせる。JO1とJAMにとってはいつまでもかわいく、大切な存在だ。

2021年には、オムニバス映画『半径1メートルの君~上を向いて歩こう〜』の1編「本日は、お日柄もよく」に出演。大の仮面ライダー好きであり「いつかヒーローものを演じたい」と、インタビューにて明かしている。

豆原一成/『メモリーオフ』より
豆原一成/『メモリーオフ』より

豆原が演じる浪人生の家に、銃を持った少女が現れ……

豆原が演じる戸志野はじめは、医学部進学を目指す浪人生。家族のハワイ旅行中もひとり、自宅で机に向かっていた。深夜、インターホンの音で目が覚めると、モニターの向こうには見知らぬ少女の姿が。無視することにしたものの、あまりのしつこさにドアを開けてしまったはじめ。少女は銃とスタンガンを所持している上に、記憶を失っていて……。

ヒロイン・謎の少女こと野々村まなみ役は、ドラマ『ファイトソング』(TBS)、『卒業式に、神谷詩子がいない』(日本テレビ)など話題作への出演が相次ぐ莉子。ティーンを中心に高い支持を得る、今注目の女優だ。刑事役としてベテラン俳優・渡辺いっけいも出演、さすがの存在感を放っている。監督は、2016年放送版のドラマ『時をかける少女』(日本テレビ)の脚本を担当し、切なくも眩しい青春を描いた渡部亮平だ。渡部と共同脚本を務めたのは、映画『ハルチカ』など青春ラブストーリーを含め、幅広い作品を手がける山浦雅大。

豆原一成と莉子/『メモリーオフ』より
豆原一成と莉子/『メモリーオフ』より

世界は“偶然に見せかけた必然”でできている

もしも豆原が「普通の高校生」でありつづける道を選んでいたら、きっとこんな青春もあっただろうと考える。バスに揺られ、参考書を開き、進むべき道に悩む。10代の刹那的な眩しさと少しの憂いを、豆原は作中で見事にまとっていた。

だからこそ、豆原が早々に“自分が何者か”を見つけてくれたこと、信じた道をまっしぐらに走ってきてくれたこと、そしてJO1として活躍している現在が、よりいっそう尊いものに思える。はじめのような、素朴な青春を送ってほしかった思いもあるけれど──豆原が選んだ青春は、煌めくペンライトが照らすステージにある。

本作で印象的だったのは、ふたりが向かい合って話す姿。プルースト効果(特定の香りから過去の記憶を思い出す現象)を試すシーンや看病のシーンだ。豆原のチャームポイントである、きらきらした丸い瞳は、このときばかりはアイドル的でもなければ、少年的でもない。「19歳の男の子」の、優しく真剣な眼差しだった。そして、語尾や語調のわずかな変化が、ふたりの心の距離を繊細に表す。

豆原は、モノローグもセリフもなく心情を伝えるシーンが多い。狼狽、興味、心配、安堵、決意や迷い──さまざまな感情を、大きな瞳がありありと映す。演じるのは相当、難しかったことだろう。けれど本作は、受け手の想像力が完成させるストーリー。豆原は作品に温度を与えた上で、うまく手放してくれた。「自分が何者か」、ダブルミーニングであるこの言葉も、語り過ぎないからこそ考えさせられる。ファンタジックな世界観に託された、大切なメッセージ。いつまでも残る心地よい余韻が、本作の醍醐味だ。

7月7日に起こったすべての偶然は、ふたりがまた出会い、始まるための必然。偶然に見せかけた必然で、世界のすべてはできている。豆原一成が、今いる場所に導かれたことも、きっと。

『ショート・プログラム』ときめくキャラ紹介 戸志野はじめ(演:豆原一成)|Amazonプライムビデオ

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  • JO1初主演ドラマ『ショート・プログラム』 (c)あだち充・小学館/吉本興業

    JO1初主演ドラマ『ショート・プログラム』

    配信開始日:2022年3月1日(火)よりAmazon Prime Videoにて独占配信中!
    作品ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/B09PQRYF97
    出演:大平祥生、川尻蓮、川西拓実、木全翔也、金城碧海、河野純喜、佐藤景瑚、白岩瑠姫、鶴房汐恩、豆原一成、與那城奨ほか
    原作:あだち充
    脚本:山浦雅大、守口悠介ほか
    監督:渡部亮平、菊地健雄、上村奈帆、土屋哲彦、益山貴司、森谷雄
    プロデューサー:北橋悠佑、森谷雄、斎木綾乃
    制作:アットムービー
    製作:吉本興業
    (c)あだち充・小学館/吉本興業

    1話読切の短編集。あだち充ならではの青春感や切なさがふんだんに注ぎ込まれた作品集を、JO1メンバー全員が主演を務め、世代を超えて、現代に生きる視聴者にも共感・共鳴できるドラマに仕上がった。
    さらに、メンバー11人全員が出演する最終話「Dreamer」も3月14日(月)よりサプライズ配信がスタートした。


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