12月1日決定「新語・流行語大賞」ノミネート30語に物申す「なぜこの語が入らない?」
明日(12月1日)に決定する「ユーキャン新語・流行語大賞」。11月4日にノミネート30語が発表された。「まさに今年!」というものから「聞いたことがない!」と印象はそれぞれ。「新語・流行語大賞」の歴史を追ってきたライター・近藤正高が「なぜこの語が入らない?」と、改めて2021年に各界を賑わせた言葉を振り返る。
新語・流行語大賞は役目を終えた?
今年も11月になって「ユーキャン新語・流行語大賞」のノミネート30語が発表された。この賞に対しては、毎年、本当に流行った言葉を選んだのか疑わしいなどとあちこちで批判されることも恒例になっている。
なかには「もはや老若男女を問わず流行る言葉はほとんどなくなった。だから新語・流行語大賞も役目を終えている」というような意見も見かける。半分は当たっているかもしれないが、果たしてそう言い切ってしまっていいのか、とも思う。
たしかに音楽に関しては、こうした見方はほぼ間違いではない。昭和のころのように誰もが口ずさめる曲がなくなり、90年代のようにミリオンセラーとなる曲も生まれなくなって久しい。音楽に限らず、いまやマンガなどさまざまな表現でジャンルの細分化が進み、世代を超えてヒットする作品は減った。全体像を把握するのもきわめて難しい。
しかし、言葉の場合はちょっと事情が異なる。どんなにヒットした音楽やマンガでも接したことのないという人はざらにいるが、新語や流行語は、日常的にメディアに接していれば、いやでも目や耳に入ってくるものがまだ比較的多い。今年に入ってにわかに各メディアでキャンペーンが展開され、流行語大賞にもノミネートされた「SDGs」はその顕著な例だろう。
流行語が細分化されているとの見方も、たしかにそのとおりかもしれないが、そもそも一部の世代や集団・業界などで使われる言葉は昔からある。むしろいまのほうがネットの普及もあって、ごく内輪で流行っていた言葉が誰かに拾われて、世の中に一気に拡散する機会は増えたともいえる。
ただ、言葉が消費される速度は、ネットの普及以降、加速していることは間違いない。今年初めに流行った音声型のSNS「Clubhouse」は、芸能人があいついで参加してマスコミで話題にしたこともあり、一時盛り上がったが、いつのまにかその熱は冷めていた。そのせいか今回の流行語大賞にもノミネートされなかった。
言葉とともに人物を選んでいる
そんな時代だからこそ、丹念に言葉を拾い上げ、その時代における意味をきちんと評価する作業が必要なのではないだろうか。少なくともその意味では、新語・流行語大賞が果たすべき役割はまだまだあると思う。
たしかに後発で類似の賞(たとえば三省堂主催の「今年の新語」など)、あるいは対象を特定の世代などに絞った賞もいくつか生まれてはいるものの、“本家”に取って代わるようなものはいまのところ見当たらない。
新語・流行語大賞がほかの賞と決定的に違うのは、言葉とともに人物を選んでいることだ。ときに該当者がいないものもあるとはいえ、原則的に必ず授賞者がおり、発表とあわせて一堂に会すのが慣例となっているのも(昨年こそコロナ禍により授賞式はリモートで行われたものの)、この賞ぐらいなものだろう。授賞者の顔ぶれも、著名人だけでなく、どこから見つけてきたのかと思うような市井の人まで幅広い。
かつて選考委員を務めたコラムニストの神足裕司は「この賞がマン・オブ・ザ・イヤー的性格をもっていると常々思っている」と書いている(『現代用語の基礎知識2014』別冊付録)。新語・流行語大賞は、いわば言葉に顔を与えてきたのである。そう考えると、匿名の言葉が氾濫する現在こそ、この賞が存在感を発揮するべきときなのではないか。
……と、一通り弁護したところでようやく本題に入る。ここからは、今年ノミネートされてもおかしくなかったはずなのに選から漏れた新語・流行語を挙げていきたい。今年は全般的に流行語が不作だった印象があるものの、他方で、きちんと言葉が選ばれていないのではないかと思う分野もある。以下、不作の原因も含めて検証してみたい。
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