『真犯人フラグ』『最愛』二大考察ドラマの謎を比較。真帆は犯人じゃないし、優は犯人じゃない



『真犯人フラグ』真帆は犯人じゃない

『真犯人フラグ』第4話まで、謎と怪しさを撒き散らして、ほとんど回収らしい回収はなく突き進んでいる。「実はこうだったのです!」という小ネタの回収も、ほとんどない。光莉(原菜乃華)と一星が付き合っていたことぐらいか。

そもそも一星にも、怪しい点が多い。不倫疑惑写真は、陽香が駅のホームで急に人違いを装って接近してきたときのものだ。この場面で、写真を撮っている人物が映っている。顔はフレーム外で分からないが服装はわかる。この袖まわりの広い茶色い服が、一星の着ている服に似ているのだ。

不倫疑惑写真を撮影したのは一星なのではないか。そうすると、ローファーが埋められていた情報を流した不倫疑惑写真を流した「ミシシッピアカミミガメを守る会副会長」と「をんぬむ」が同一人物だという情報や、一星と光莉が付き合っていたという情報、ストーカーを一星が撃退したというエピソードも、嘘である可能性が高い。
一星が光莉のストーカーなのではないか?

家族失踪についても、ほとんど進展はない。生きているのか死んでいるのかも不明だ。犯人からの身代金の要求も、連絡もない。ローファーや、おそらく便乗犯だと思われる違う少年の遺体が登場しただけで、愉快犯的な現象が多発しているだけ。

イラスト/たけだあや
1話ラストの少年の遺体の謎はまだ解かれていない。イラスト/たけだあや

いまだに真帆と家族たちが、家族を思いやらない凌介を懲らしめるための自作自演が発端だという説も濃厚だ。『真犯人フラグ』というタイトルは「真帆」を示しているという説もある。真帆の「真」は真犯人の「真」であり、真帆の「帆」は、真犯人フラグの「フラグ」(Flag=帆)だというのだ。

猫おばさんは何者なのか。いい人のふりをして凌介に近づいてくる菱田朋子(桜井ユキ)は何を企んでいるのか(「要冷凍」シールを扉に貼ったのも剥がしたのも朋子だろう)。菱田朋子の息子・清明(桑名愛斗)くんが自宅の押し入れを観て驚愕の表情になったのは何故か(遺体が入っていたのか、凌介をストーカーした写真などがたくさんあったのか)。よかれと思ってマスメディアに出た結果、疑惑を高めることになった日野渉(迫田考也)は本当に味方なのか(凌介の小説の才能に嫉妬しているのではないか、光莉のGPSが最初に示した場所はバー「至上の時」ではないか)。二宮瑞穂は、どうして、あんなに親身になって手助けしてくれるのか(逆に犯人なのではないか)。刑事の阿久津(渋川清彦)と落合(吉田健悟)の意味深な会話「女に惑わされて知らないうちに(しいたけの)菌を植えつけられる人間になるな」は何を暗示しているのか?(真帆が「しいたけ食べなさい」と子供たちに言っている回想シーンとの関連を疑えば、阿久津が付き合っていたと話す女性は真帆の可能性が!?)

と、いくらでも、だれでも、犯人にできてしまうのだ。
怪しい人物だらけで、しかも多い。公式サイトの相関図には主要登場人物だけでも20人がいる。そして、状況的にも、この誰もが犯人であり得るし、どの人物を犯人にしても物語は成り立つのだ。
真犯人フラグを立てては否定し立てては否定し、から騒ぎを繰り返す展開になっている。『真犯人フラグ』は(少なくとも第1部は)、考察のためのドラマではなく、考察する者たちのから騒ぎで事件が混乱していることが鍵になっている、というのが筆者の推測だ。

『最愛』優は犯人じゃない

もう一方の考察ドラマ『最愛』は展開が速い。

『最愛』も、登場人物は、実は多いのだが、15年前の事件と現在の事件があって、双方に関われる人物は少ないため、犯人推理をするときの枠組みが作りやすい。『真犯人フラグ』の猫おばさんのような「この人はどう関係してるの?」みたいな登場人物もほぼいない。
便乗事件もなく、怪しさを振りまくノイズもなく、事件の関連人物を中心に描かれる。

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しかも、第4話で、梨央(吉高由里子)の弟の優(高橋文哉)が、自分の携帯動画を示して自らの罪を打ち明けている。犯人探しという点では、いったん収束したように見せる(この原稿は第5話放送前に書いています)。

『最愛』は、投げた謎の多くをあっという間に回収する。回収しつつも、また新たな謎を生み出す展開になっている。
15年前の殺人も、現在パートの殺人も、携帯動画を信じるなら、弟の優が犯人だ。
だが、まだ第4話。このままでは終われない。

しかも、弟の優は、興奮すると記憶を失ってしまうという設定がある。15年前の殺人の動画も決定的な場面はなく、優が殺したとは断言できない。
現代パートの殺人においては、優の視点カメラのため、実は優だと思われる人物は腕しか映っていないのだ。優の腕には傷があり、その傷のある腕が、優であると判断する材料になっている。
だが、もし、これがフェイク映像だったら。優の腕の傷を知っているものが、傷のメイクをして殺し、そのときの映像を優の携帯に仕込んだとしたら。
優はたびたび記憶を失うので、そういった細工が可能なのだ。

そう考えると、15年前の事件は、父親がとどめを刺したと考えるのが自然な展開であり、現在パートの事件は、優の携帯映像を操作できそうな後藤信介(及川光博)が怪しい。
だが、もちろんどんでん返しがもう何度かあると考えれば、まだまだ正体不明であり、梨央との関係も深い加瀬賢一郎(井浦新)も怪しい。過去パート、現在パートの両方に出ている人物の藤井隼人(岡山天音)も、何かあるだろう。

希望としては、『監察医 朝顔』や『教場』(共にフジテレビ)等、好演が光る佐久間由衣が演じる桑田仁美が助手的な役割のままで終わらず、狂気の暴走をする場面も観たい。
そして、あまり考えたくないのだが、実は梨央(吉高由里子)がめっちゃ悪人っていう展開が一番ショックだから、そうなる可能性も捨て切れない(が、気持ちが耐えられない気もする)。
『最愛』は1クールなので後半に突入。考察しがいのある展開に、そして「最愛」の人のために取った行動が何を招いたのかドラマティックな展開になっていくのではないか。

『真犯人フラグ』『最愛』どちらもまだまだ驚かせてくれそうだ。楽しみ。

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